フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在



2017年10月5日(木)から12日(木)に開催される、2年に一度の国際映画祭<山形国際ドキュメンタリー映画祭>に歩調を合わせて、アンスティチュ・フランセ東京では、フランスのドキュメンタリー映画の代表的作品から新作までを選りすぐった「フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在」が開催される。今年生誕百年を迎える「シネマ・ヴェリテ」の偉大な監督ジャン・ルーシュの特集、シンポジウムの開催を皮切りに、写真家集団マグナムの一員でもあるドキュメンタリー映画監督レイモン・ドゥパルドンやティエリー・ミシェル監督を迎えたティーチインと特集上映、モーリス・ピアラの処女中編作品やベルトラン・タヴェルニエの長尺ドキュメンタリー映画など、注目作品の上映が目白押しだ。権力者たちが自らの権益のために恣意的に振る舞い、浅はかな意図を持った映像や情報が巷を賑わす現代日本において、「シネマ・ヴェリテ」が標榜した<真実>をスクリーンに映し出す試みはどのように響くのか、上映に駆けつけてその振動をしかと受けとめたい。
(上原輝樹)
2017.8.30 update
2017年8月30日(水)
シネマ・ヴェリテの映画作家
ジャン・ルーシュ生誕百年記念 オープニング上映+シンポジウム
会場:草月ホール(青山)
料金:一般1,500円、学生/シニア1,200円、アテネ・フランセ文化センター会員1,000円

2017年9月1日(金)~10月22日(日)
フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在
ゲスト:レイモン・ドゥパルドン(写真家・映画監督)、クローディーヌ・ヌーガレ(プロデューサー・映画監督)、ティエリー・ミシェル(映画監督)、森千香子(社会学者)、小柳帝(編集者・ライター)
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
料金:一般1,200円、学生800円、会員500円
※9/1の『旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』の先行試写会を除く。
チケット販売時間:上映当日各回の30分前から上映開始10分後まで。チケット販売時間内には、当日すべての回のチケットをご購入いただけます。
開場時間:各回15分前

公式サイト:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1709011022/
上映スケジュール

シネマ・ヴェリテの映画作家
ジャン・ルーシュ生誕百年記念 オープニング上映+シンポジウム
会場:草月ホール
8月30日(水)
13:30
開会の辞:マリー=クリスティーヌ・ド・ナヴァセル(ジャン・ルーシュ生誕百年記念委員会委員)
レクチャー:須藤健太郎(映画研究家)
14:00
ある夏の記録 (90分)
18:00
シンポジウム
登壇者:マリー=クリスティーヌ・ド・ナヴァセル(ジャン・ルーシュ生誕百年記念委員会委員)、諏訪敦彦(映画監督)、金子遊(映画作家・批評家)、岡田秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)、司会:坂本安美(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
19:00
ある夏の記録 (90分)
*入替制

フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
9月1日(金)
19:30
旅する写真家
レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス

(100分)
上映前:
監督によるティーチインあり(司会:小柳帝)


9月2日(土)
12:15
レポーター
(90分)

14:30
1974年、選挙キャンペーン
(90分)


17:00
アフリカ、痛みはいかがですか?
(165分)

9月3日(日)
11:15
アフリカ、痛みはいかがですか?
(165分)
14:15
現行犯
(109分)



17:30
モダン・ライフ
(90分)


9月8日(金)
16:30
人間ピラミッド
(88分)

9月9日(土)
12:30
人間ピラミッド
(88分)

15:00
モダン・ライフ
(90分)



17:30
焼かれた眼
(58分)
愛は存在する
(20分)
9月10日(日)
13:45
モソ・モソ
(73分)

15:45
砕氷船
(35分)
15歳の未亡人たち
(25分)
17:30
私は黒人
(73分)


9月16日(土)
11:15
夢が作られる森
(146分)


14:30
私は黒人
(73分)


16:30
Tomorrow
パーマネントライフを探して

(120分)
上映後:
トークあり
9月17日(日)
12:30
焼かれた眼
(58分)
愛は存在する
(20分)
14:45
Tomorrow
パーマネントライフを探して

(120分)
17:30
砕氷船
(35分)
15歳の未亡人たち
(25分)

       
10月13日(金)
18:00
コンゴ川 暗黒の向こうに
(116分)
10月14日(土)
13:00
スワッガー
(84分)

15:15
ポーリーヌ、巣立つ
(88分)
17:30
なんだこの仕事は?
(100分)



10月15日(日)
11:30
ポーリーヌ、巣立つ
(88分)
13:45
ゲヘナの記憶
(58分)

16:00
スワッガー
(84分)
上映後:
森千香子とのティーチイン(日本語のみ)あり
10月20日(金)
13:30
ありがとう、社長!
(90分)
15:45
夢が作られる森
(146分)

19:00
ゲヘナの記憶
(58分)




10月21日(土)
14:00
24時間診療
(97分)

16:30
フランス映画への旅
(190分)
10月22日(日)
12:30
24時間診療
(97分)

15:00
なんだこの仕事は?
(100分)
17:30
ありがとう、社長!
(90分)



*全席自由。整理番号順での入場とさせていただきます。また、上映開始10分後以降の入場は、他のお客さまへの迷惑となりますので、固くお断りいたします。
上映プログラム

レイモン・ドゥパルドン特集

特別先行試写会『旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』(Journal de France)
2012年/フランス/100分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:レイモン・ドゥパルドン、クローディーヌ・ヌーガレ
出演:レイモン・ドゥパルドン、クローディーヌ・ヌーガレ、アラン・ドロン、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、ジャン・ルーシュ、ネルソン・マンデラ 他

9月9日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
配給:アンプラグド 宣伝:アンプラグド・プレイタイム

ドゥパルドンが40年以上に渡って世界中を旅して取りためたフィルムを、自身の映像作品の製作・録音を担当してきた妻であるクローディーヌ・ヌーガレの視点で一本の映画にまとめた共同監督作品。その内容は、ドゥパルドンの主な仕事を網羅するだけではなく、生い立ちからロマンス、またライフワークとして撮り続けるフランスの日常風景まで多義に渡り、ドゥパルドンによる"ガイドバックに載らない"世界旅行日記ともいえる。

*上映前18:30よりメディアテークにて写真集『さすらい(Errance)』(赤々舎)についてレイモン・ドゥパルドンを迎えたトーク、サイン会を予定。サイン会にご参加希望の方は事前に同書をご購入ください。欧明社リヴ・ゴーシュ店(アンスティチュ・フランセ東京内)でご購入いただけます。
*試写会参加には、試写状、あるいは当日17時30分より配布の整理券が必要です。
『1974年、選挙キャンペーン』(1974, une partie de campagne)
2002年/フランス/90分/カラー/デジタル/無字幕・作品解説配布予定
監督:レイモン・ドゥパルドン
出演:ヴァレリー・ジスカール・デスタン、シャルル・アズナブール、フランソワ・ミッテラン、ジャック・シラク

1974年のフランス大統領選挙の候補者のひとりヴァレリー・ジスカール・デスタンを追ったドキュメンタリー。1974年にジスカール・デスタン自身の注文で撮影され、合意のもと、撮影されていたにも関わらず、いざ大統領に選出されると、同氏は本作が公開されることを拒み、2002年2月20日になってようやく了解し、初めて上映された。ドゥパルドンはその冷静沈着、かつ容赦のないまなざしのプリズムも通して、若き大統領候補(当時、48歳で歴代上3番目の若さだった)の勝利への執着心、決して感じがいいとは思えない性質、あえて選択されたその孤独を浮かび上がらせている。
『レポーター』(Reporters)
1981年/フランス/90分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:レイモン・ドゥパルドン
出演:アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、セルジュ・ゲンスブール、ジャック・シラク、フランソワ・ミッテラン

レイモン・ドゥパルドンが写真通信社ガンマの報道カメラマンたちの取材に、1980年10月の一ヶ月間同行し、彼らの報道の様子、パリで起こる政治、スポーツ、文化、経済、様々な出来事を撮影した作品。まさに同通信社を設立したひとりであるドゥパルドンが手持ちカメラで、まったくコメントをつけず、「シネマ・ヴェリテ」的手法で撮影している。選挙キャンペーンのためパリの商店を訪れる共和党のジャック・シラク、シネマテーク・フランセーズでのゴダール新作『勝手に逃げろ/人生』先行上映会、パーティーでのカトリーヌ・ドヌーヴとセルジュ・ゲンスブール......。セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞、アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート作品。
『現行犯』(Délits fl agrants)
1994年/フランス/109分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:レイモン・ドゥパルドン

警察によって現行犯逮捕された人たちが留置所に到着してから、弁護士と面会するまでの一連の流れについてのドキュメンタリーで、パリの裁判所で撮影されている。スリを行った者もいれば、麻薬中毒者、DVの夫、不法移民もいる。不意に検察官と向かい合わせになった15件の軽犯罪容疑の被告人たちが狭い部屋で尋問される様子が長まわし固定ショットでとらえられる。ドゥパルドンのキャメラは映されている人たちがほとんど意識しなくなるほど控え目でありながら、怯える者もいれば、卑怯そうな、ずる賢い者もいる被疑者たちや検察官たちのやり取りの中から彼らの人間性を浮かび上がらせる。
『アフリカ、痛みはいかがですか?』(Afriques : comment ça va avec la douleur ?)
1996年/フランス/165分/カラー/35mm/日本語字幕
監督:レイモン・ドゥパルドン

アフリカを縦断しながらアフリカの現在の姿を撮った作品で、南アフリカの希望峰を見わたす360度のパン撮影から始まり、アンゴラ、ルワンダ、ブルンジ、ソマリア、スーダン、エジプトなどを経て、フランス中部のヴィルフランシュ=シュル=ソーヌにある監督の実家の360度のパン撮影で終る。

「フランスの言語を知っているアフリカ人にとっては、"痛み"という言葉はまるで、我々のアフリカ滞在中、うまくいっていることを確認するための挨拶として使われる―「痛みはいかがですか?」と、まるでただ「こんにちは」というように―。」レイモン・ドゥパルドン
『モダン・ライフ』(La Vie moderne)
2008年/フランス/90分/カラー/35mm/日本語字幕
監督:レイモン・ドゥパルドン

ドゥパルドンが、自らの出自でもある田舎の農村をライフワークとして10年以上も撮影した本作は、長い時間をかけ信頼関係を築いた上で引き出した農夫たちの素の表情、時の流れが止まっているかのように何十年もの時の流れが染み付いた家や家具、そして厳しくも美しい荒涼たる自然の風景を、デジタル主流のドキュメンタリーの時代に、撮影はすべて35mmシネマスコープサイズで行われ、本当の"人間と自然の関係の豊かさ"を見事なまでにフィルムにおさめることに成功している。仏最高の映画賞とされるルイ・デリュック賞を受賞。
ジャン・ルーシュ生誕百周年

『15歳の未亡人たち』(Les Veuves de quinze ans)
1966年/フランス/25分/デジタル/モノクロ/英語字幕
監督:ジャン・ルーシュ

パリ16区に住むふたりの若い娘たちの生活。家族やボーイフレンドの間で、幸福、愛を探す。1964年夏、パリの若者についてのエッセーとして紹介された本作は、60年代の中産階級の若者たちの無頓着さや軽薄さを示している。

「思春期の若者たちの世俗的な部分を見せ、非神聖化した最初の作品ではないだろうか。カトリーヌ・ブレイアが『本当に若い娘』(1976)を撮る10年前にジャン・ルーシュは、娘たちについての美しく、聡明な作品を生み出している。」ナタリー・メリー
『私は黒人』(Moi, un Noir)
1958年/フランス/73分/デジタル/カラー/英語字幕
監督:ジャン・ルーシュ
出演:ウマル・ガンダ、トル少年、アラサス・メガ、アマンドゥ

ニジェール出身の3人の青年と一人の女が象牙海岸のアビジャン(現コートジボアール共和国の首都)郊外のトレシュヴィルに身を落ち着ける。故郷を後にした彼らにとってその暮らしは厳しいものであり、三人は機械化された文化を目のあたりにする。憧れのアメリカの俳優の名前エドワード・G・ロビンソンの名前を自称する主人公によってその体験が語られる。1959年ルイ・デリュック賞受賞。

「最も大胆でありながらも慎みに満ちた作品だ。ここには真実がある」ゴダール
『人間ピラミッド』(La Pyramide humaine)
1961年/90分/デジタル/カラー/英語字幕
監督:ジャン・ルーシュ

1959年、アビジャンの高校に新入生ナディーヌがやってきた。ジャン・ルーシュによって集められた生徒たちは黒人と白人の間の新たな関係を通して生まれる友情関係、愛情関係についての「フィクション」に自分自身の役を演じながら参加する。
『砕氷船』(Bateau Givre/ Brise-glace)
1987年/フランス/35分/デジタル/カラー/英語字幕
監督:ジャン・ルーシュ

1988年ベルリン国際映画祭国際映画連盟賞受賞

氷原に閉じ込められてしまった船を連れ戻す任務で出発したスゥエーデンの砕氷船「フレイ(神)」に乗り込んだジャン・ルーシュは、船とその乗組員たちの日常の作業をキャメラにおさめる。これまでの撮影では体験したことのなかった白い氷が映す様々な色彩(船の鋼鉄が反射した色、空の雲の合間から差す色)で変化していく「光」や、「音」(機材の振動する音、波の音、氷の薄片が擦れ合う音など)と戯れて撮影が行われる。
『モソ・モソ』(Mosso Mosso)
1998年/フランス/73分/デジタル/カラー/英語字幕
監督:ジャン=アンドレ・フィエスキ

映画批評家、俳優、監督として知られるジャン=アンドレ・フィエスキがニジェールとマリでのジャン・ルーシュの姿を追った貴重なドキュメンタリー。そこでは現実により近づくためには"まるでそうであるかのように振舞う"ことが必要なのだった。
シネマ・ヴェリテの映画作家
ジャン・ルーシュ生誕百年記念 オープニング上映+シンポジウム

『ある夏の記録』(Chronique d'un été)
1961年/フランス/90分/デジタル/モノクロ/日本語字幕
共同監督:エドガー・モラン

61年度カンヌ映画祭で国際批評家賞を受賞

1960 年夏、社会学者のエドガー・モランと共に、 ルーシュは、数ヶ月の間、パリの若者たちの日常生活について調査し、幸福について彼らが抱く思い、考えを知ろうと試みる。最初に発 せられた「どのように生活しているの?あなたは幸せ?」という問いかけから、政治、絶望、倦怠、孤独など、重要な問題が浮かび上がってくる。インタビューされた若者たちが後半、その上映会に集まり、目にしたものについて議論する。「シネマ・ヴェリテ」(真実映画)の代表的作品。
発掘された名作ドキュメンタリー

『愛は存在する』(L'Amour existe)
1960年/フランス/20分/デジタル/モノクロ/英語字幕
監督:モーリス・ピアラ

モーリス・ピアラの処女中編作品。50年、クルブヴォア、シュレンヌ、サンー=ドゥニ、ヴァンセンヌ、パンタン...、貧しい農村が広がるパリ郊外をさすらう。エディット・ピアフの歌やアルゼンチンのバンドネオン、ギターのドライな音が背後に流れ、地下鉄や、バス、電車で移動する労働者たち、建物、光を捉えるモノクロの力強い映像には時折、詩的な瞬間が訪れる。本作は人間が隷属させられ、美しいものが破壊されていく産業社会、集中する都市開発への哀調を帯びた批評にもなっており、ピアラ自身によって読まれる怒り、失望、悲しみがこもったテキストがすばらしい。1961年ルイ・リュミエール賞受賞。半世紀以上も経て、デジタル修復され、2017年フランスで再公開され、大きな話題となる。
『焼かれた眼』(Les Yeux brûlés)
1985年/フランス/58分/デジタル/モノクロ、カラー/無字幕・日本語同時通訳付
監督:ローラン・ロット
出演:ミレイユ・ペリエ、レイモン・ドゥパルドン、ピエール・シェンデルフェール、ラウル・クタール

1985年、25歳のローラン・ロットは、当時義務とされていた兵役に就き、軍の映画・写真機関より戦争報道写真についての映画を作るように注文を受ける。フランス軍が参戦した世界中の紛争、植民地での内乱の映像のアーカイヴへのアクセスを許可されたロットは、そこから軍の希望している戦意高揚のための映画からはほど遠い作品を作り出す。ひとりの女性がパリのシャルルドゴール空港に軍隊用スーツケースを取りに来る。それは1954年5月8日にディエン・ベン・フーで消息を絶った報道カメラマンジャン・ペローの遺品だった。やがて若い女性とペローと同僚だった記者たちが語り合い始める。レイモン・ドゥパルドンもヴォイスオーバーでいくつかの映像についてコメントしている。

「『焼かれた眼』はたんなる注文の転用ではない。心揺さぶる本作は、注文した者へ受け取り通知とともに送り返された注文作となっている。」セルジュ・ダネー
新作セレクション

『Tomorrow パーマネントライフを探して』(Demain)
2015年/フランス/120分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督・出演:メラニー・ロラン、シリル・ディオン

2016年セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品

学術雑誌「ネイチャー」に発表された、今のライフスタイルを続ければ、人類は滅亡するという論文に衝撃を受けた女優メラニー・ロランがジャーナリストの友人シリル・ディオンと共に、未来を幸せに暮らすためのライフスタイルを求めて旅をする。「農業」「エネルギー」「経済」「民主主義」「教育」の5つの分野を渡り、パーマカルチャー、トランジション・タウン、ゼロ・ウェストなど、世界中の新しい取り組みを行っているパイオニアたちと出会い、滅亡しない方法を探っていく。
『ゲヘナの記憶』(Souvenir de la Géhenne)
フランス/2015年/58分/デジタル/英語字幕
監督:トマ・ジェンコー

フランス北部グランド=シント。地元の40代の男による若いマグレブ系青年の憎悪殺人から10年。監督のトマ・ジェンコーは極右政党国民戦線が選挙で重要な勝利をおさめた彼の地元に戻ってきた。特別に開示された事件の正式な報告書のナレーションを背景に、都市の光景の素晴らしい映像と現地で集めた証言やうわさ話が組み合わされている。その編み目は次第に細かくなり、一見するとそこに浮かび上がってくるのは事件の骨子に過ぎないが、実のところそれはまるで"ゲヘナ"での地獄のドラマの再現をなしているのかのようだった。
『なんだこの仕事は?』(C'est quoi ce travail ?)
2015年/フランス/100分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:リュック・ジュール、セバスチャン・ジュス

彼らは仕事中だ。毎日80万個の車の部品を生産する工場の工員とアトリエで音楽創作に励む作曲家ニコラス・フリーゼ。それぞれが彼らの仕事を彼らのやり方で語る。そして、それぞれが彼らのやり方で疑問を投げかける...ところで、仕事ってなんだろう?

「本作の持つ非常に政治的な側面は、作品がサスペンスやさまざまなレベルでの解釈や問いかけ、そして絵画的な美しさを担う事をまったく妨げていない。これこそまさに「仕事」と呼べるだろう」―セルジュ・カゲンスキ(レザンロキュプティーブル)
『ポーリーヌ、巣立つ』(Pauline s 'arrache)
2015年/フランス/88分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:エミリー・ブリサヴォワンヌ

15歳のポーリーヌは、家族の中で唯一まだ両親の元で暮らしている。かつての夜の女王である母親とドラッグクィーンの父親との間で彼女の日常は波乱含みだ。2年にわたり異父姉のエミリーによって撮影された家族のアーカイブとありのままが映った映像で描きだされるポーリーヌ...。そこで我々は生命力に満ちた、時にはいらいらさせられるけれどもおかしな魅力のある女の子を発見する。カメラが彼女を追った2年の間に「人はいつ、どのように大人になるのか?」という根本的な問題が浮かび上がってくる。"巣立つ"ため、子どもはいつ家族の庇護を離れるべきなのだろうか?
『ありがとう、社長!』(Merci patron !)
フランス/2015年/90分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:フランソワ・ルッファン

2017年セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品

ジョスリンヌとセルジュのクルール夫妻にとっての最後の賭けは終わった。LVMHグループに属すブランドKenzoの服を製造していた工場がフランス北部ノール県ヴァランシエンヌの近郊、ポワ=デュ=ノールからポーランドに移転したのだ。こうして夫妻は職を失い、借金はかさみ、家をも失う危機に瀕している。そこで、ファキール・ジャーナルの設立者であるフランソワ・ルッファンが彼らの扉をノックした。ルッファンには彼らを救えるという確信があったのだ。ベルギーの税務調査官、共産主義の修道女、労働組合の代表、高級デパートサマリテーヌの元販売員らと共に、クルール夫妻の一件をグループのCEOベルナール・アルノーの情に訴え、LVMHの株主総会へ持ち込むつもりだ。しかし、反骨心に満ちた現代のダヴィッドたちは、世界最大のブランド・グループ、そしてフランス一の億万長者であるゴリアテを相手にうまく立ち回ることができるのだろうか?
『24時間診療』(La Permanence)
2016年/フランス/97分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:アリス・ディオップ

新たにやってきた移民たちのための24時間対応のヘルス・ケア窓口。そこでは行列が長くても決して個々人の存在を忘れることはない。また社会学的なアプローチが一ヵ月後に戻ってきた患者の心からの感謝を消し去る事もない。たとえその患者が痩せてしまっていたり、逆に健康を取り戻したりしていても。パリ郊外ボビニーのアヴィセンヌ病院のヘルス・ケアの診察室。そこでは、横に控えている精神科医と共に、総合診療医が誤った希望を持つことなく、しばしば英語を用いながら、身体と魂を癒そうと試みている。乏しい医療手段しかない現場で、虐げられ、餓えや心の傷に苦しめられている人々をどのようにして救うことができるのだろうか?
『夢が作られる森』(Le Bois dont les rêves sont faits)
2016年/フランス/146分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:クレール・シモン

建物を見たりエンジン音を聞いたりすることに耐えられない...そんな都会にうんざりするような日がある。そういう時、人々は自然を思い出し、森に思いを馳せるものだ。歩道から小道を抜けて、さあ、到着!都会の喧騒から遠く離れた草原。よみがえってくるのは田舎、森、そして子ども時代。信じ、理解する。それは本物の幻想であり、手の届く範囲にある野生の世界。貧富や年齢、国籍、同性愛者か異性愛者か、流行りすたりも関係ない、全てに開かれた場所。再び発見されたパラダイス。不可能な事だと誰が言えるだろうか?2016年のフランスのドキュメンタリー作品の中でも大変高い評価を得て、「カイエ・デュ・シネマ」誌をはじめ、多くのメディアで2016年ベスト作品の一本に選ばれている。
『スワッガー』(Swagger)
フランス/2016年/84分/カラー/デジタル/英語字幕・日本語同時通訳
監督:オリヴィエ・バビネ

フランスで最も恵まれない公営住宅地、パリ郊外のオルネーとスヴランのど真ん中で育った11人の驚くべき個性を持った子どもたちとティーンエイジャーたち。彼ら独自の奇想天外な視点、面白く、ショッキングでさえある考え方で眺めた世界を見せてくれる。出会いのモザイクを展開しながら、ミュージカル・コメディーやSFなどさまざまなジャンルを横断し、映画はパリ郊外のオルネーとスヴランに住む子どもたちの言葉やあこがれを現実に近づける手助けをする。なぜなら厳しい生活を送りながらも、子どもたちは夢と希望を捨てずにいて、彼らからそれを奪う事は誰にもできないのだから。
『フランス映画への旅』(Voyage à travers le cinéma français)
2016年/フランス/190分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:ベルトラン・タヴェルニエ

映画史に造詣が深いことでも有名な映画監督ベルトラン・タヴェルニエが、人生において記憶に残るフランス映画や監督について語りながら、フランス映画史を旅する。旅はジャック・ベッケルから始まり、ジャン・ルノワール、ジャン=ピエール・メルヴィル、そしてマルセル・カルネへと続いていく。タヴェルニエはジャン・ギャバンへの情熱を表明し、もっとも偉大な俳優と評する。ジョゼフ・コスマや『アタランタ号』の モーリス・ジョベールら偉大な作曲家を紹介しながら、フランス映画音楽へのオマージュも示される。 年カンヌ国際映画祭クラシック部門出品作品。同年ニューヨーク映画祭でも紹介され、話題を呼んだ。
『コンゴ川 暗黒の向こうに』(Congo River au-delà des ténèbres)
2005年/ベルギー/116分/カラー/デジタル/英語字幕・日本語同時通訳
監督:ティエリー・ミシェル

19世紀末、イギリスの探検家でジャーナリストのヘンリー・モートン・スタンリーらがアフリカを横断してその河口に到着したコンゴ川は、(ルアラバ川の源流から)4371kmの長さを誇る。そのコンゴ川を渡りながら、コンゴの波乱に満ちた歴史を物語る場所を横断していく。またアーカイヴ資料からは、コンゴの植民地化を導いたスタンリーやベルギー王レオポルド2世,コンゴ独立期の指導者パトリス・ルムンバやモブツ・セセ・セコらアフリカ史上の人物について記憶が語られ、アフリカの運命が辿られていく。この中部アフリカへの旅は、河岸を取り囲みながら何にも屈せずに生存し続ける密生する植物とともに、人生への賛歌となっている。川を下りながら、映画は人々の悦び、苦しみをひとつひとつ記録する。丸木船を操る人、漁師、商人、旅人、闘士、反逆者、子供、兵士、ベルギーの国民兵、強姦された女性......彼らすべての人々の人生のリズムを刻むドラマ、祭が映し出される。




フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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