交差する視点ー日仏インディペンデント映画特集

あのオリヴィエ・アサイヤスのサポートのもとに誕生したのだという「ボルドー国際インディペンデント映画祭」が見出した作品群、広島国際映画祭関連企画として行われる、68年5月の影響下で結成されたグループ「ザンジバル」を巡る作品群、そして、内外の映画祭で活躍している映画作家たちの作品群の上映とディスカッションを通じて、インディペンデント映画の最先端を更新する試み「交差する視点 日仏インディペンデント映画特集」がアンスティチュ・フランセにて行われる。フランスからは、つい先日、東京国際映画祭で最新作『アマンダ』が上映され、現在形のヌーヴェル・ヴァーグを示してくれたミカエル・アース、「ザンジバル」に参加し、インディペンデントな映画作りを様々な立場から支えてきたジャッキー・レイナル、映画批評家フィリップ・アズーリら、日本からは、新作の記憶も新しい濱口竜介と三宅唱ら、まさに本テーマを語るにうってつけの面々の登壇が予定されている。横浜会場で行われるベルトラン・マンディコ×鈴木卓爾、ユベール・ヴィエル×清原惟&諏訪敦彦の対談も見逃せない。
(上原輝樹)
2018.10.30 update
10月29日(月)~12月9日(日)
東京会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
ゲスト(アルファベット順): フィリップ・アズーリ(映画批評家)、ミカエル・アース(映画監督)、濱口竜介(映画監督)、伊藤丈紘(映画監督)、三宅唱(映画監督)、ジャッキー・レイナル(映画監督)、レオ・ソエサント(ボルドー国際インディペンデント映画祭アーティスティックディレクター)、須藤健太郎(映画批評家)、鈴木洋平(映画監督)

料金:一般1,200円、学生800円、アンスティチュ・フランセ会員500円
チケット販売:上映当日各回の30分前から上映開始10分後まで。チケット販売時間内には、当日すべての回のチケットをご購入いただけます。
*全席自由。整理番号順での入場とさせていただきます。また、上映開始10分後以降の入場は、他のお客さまへの迷惑となりますので、固くお断りいたします。
*プログラムはやむを得ない事情により変更される場合がございますが、予めご了承ください。

11月17日(土)、12月8日(土)
横浜会場:東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
ゲスト(アルファベット順): 清原惟(映画監督)、エリナ・レーヴェンソン(俳優)、ベルトラン・マンディコ(映画監督)、諏訪敦彦(映画監督)、鈴木卓爾(映画監督)

料金:一般1,200円、アンスティチュ・フランセ会員・学生600円、東京藝術大学の学生無料
(同日2作品セットでのご購入は、一般1,800円)
チケット販売:前売券の販売はございません。当日券は、会場の東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)にて1本目の開演30分前より販売、現金支払いのみ。
*開場は、1本目開演30分前、2本目開演20分前より。1本目と2本目のチケットを同時にご購入いただけます。
*全席自由・番号順でのご入場・各回入替制。
*プログラムはやむを得ない事情により変更される場合がございますが、予めご了承ください。

公式サイト:https://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1810291209/
上映スケジュール

東京会場:アンスティチュ・フランセ東京
10月29日(月)
15:30
コレクションする女
(91分)
18:00
この夏の感じ
(106分)
上映後、トークあり(ゲスト:ミカエル・アース)


11月4日(日)
13:45
この夏の感じ
(106分)
16:00
コレクションする女
(91分)




11月9日(金)
15:30
人間ピラミッド
(90分)
18:00
波のした、土のうえ
(68分)
THE COCLPIT
(64分)
上映後、トークあり(ゲスト:三宅唱)
11月28日(水)
16:45
ヴァンサンには鱗がない
(78分)
19:00

(68分)
上映後、トークあり(ゲスト:レオ・ソエサント、鈴木洋平)

11月29日(木)
15:45
アセファル/無頭人
(65分)
ヴィット
(37分)
18:30
トゥワイス
(72分)
上映後、トークあり(ゲスト:ジャッキー・レイナル、フィリップ・アズーリ)
11月30日(金)
16:45
パリところどころ
(95分)


19:00
現像液
(67分)
上映後、フィリップ・アズーリによる講演あり

12月1日(土)
13:30
パリところどころ
(95分)


16:00
ニューヨーク・ストーリー
(28分)
地中海
(43分)

12月2日(日)
12:30
ランゲン
(75分)


14:45
ヴァンサンには鱗がない
(78分)



19:00
現像液
(67分)
12月7日(金)
14:45
彼女は陽光の下で長い時間を過ごした
(130分)



18:00
アウトゼア
(148分)
上映後、トークショーあり(出演:伊藤丈紘、濱口竜介)
12月8日(土)
12:30
ニューヨーク・ストーリー
(28分)
地中海
(43分)


14:45
ランゲン
(75分)



17:05
セックス・アンド・ザ・フェスティバル
(75分)
12月9日(日)
14:00
シネ・リセ 若者向け映画講座 講師:須藤健太郎
ヴァンサンには鱗がない
(78分)


 

横浜会場:東京藝術大学 (横浜・馬車道校舎) 
11月17日(土)
14:00
ジョギング渡り鳥
(157分)
17:00
ワイルド・ボーイズ
(110分)
上映後、アフタートークあり(ゲスト:ベルトラン・マンディコ、鈴木卓爾、エリナ・レーヴェンソン)
12月8日(土)
15:30
アルテミス、移り気なこころ
(59分)
16:50
わたしたちの家
(80分)
上映後、アフタートークあり(ゲスト:清原惟、諏訪敦彦)

上映プログラム
<東京会場>

ボルドー国際インディペンデント映画祭をめぐって
2012年オリヴィエ・アサイヤスのサポートのもと誕生したボルドー国際インディペンデント映画祭は、海外の若手インディペンデント監督の才能を発掘し、映画のほか、音楽イベントも開催し、若い観客を魅了しながら年々参加者を増やしています。日本の若手監督も積極的に紹介されており、2013年に富田克也監督特集、そして今年は濱口竜介監督特集が予定されています。同映画祭のアーティスティック・ディレクター、レオ・ソエサントを迎え、同映画祭の受賞作品を特集します。また映画監督であり、クラブCINEMA VOICEなどでプログラマーとしてインディペンデント映画を紹介している鈴木洋平とのディスカッションも予定しています。

© DR
オープニング上映/第31回東京国際映画祭関連企画
『この夏の感じ』
(Ce sentiment d'été de Mikhaël Hers)
フランス=ドイツ/2015年/106分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:ミカエル・アース
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リヴィエール

夏のある日、30歳にして突然逝ってしまったサシャ。残された恋人のロレンスと、サシャの妹のゾエ。互いをあまり知らなかった二人の間に、サシャを失った苦悩、彼女の不在の重みをともにすることで、少しずつ近づいていく。ベルリン、パリ、ニューヨーク。3つの街に3度の夏が訪れ、愛した人の記憶に導かれながら、彼らもやがて人生の光を少しずつ取り戻していく。
第4回ボルドー国際映画祭グランプリ受賞。新作の『アマンダ(原題)』は第31回東京国際映画祭コンペティション部門に出品。
『ランゲン』(Rengaine de Rachid Djaïdani)
フランス/2012年/75分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:ラシデ・ジャイダニ
出演:スリマン・ダジ、サブリナ・ハミダ、ステファン・ソ一・モンゴ

パリに住む黒人でキリスト教徒のドルシィは、美しいマグレブ人女性サブリナとの結婚を願っている。しかし、ふたりの結婚の前には黒人社会とアラブ社会、2つのコミュニティーに根付いた考え方の違い、タブーによって様々な障害が立ちはだかる...。熱に浮かされたような俳優たちの存在感が忘れられない作品。「ランゲン」とは「聞き古された流行歌」の意。
第1回ボルドー国際映画祭グランプリ受賞、カンヌ国際映画祭監督週間出品作品。
© DR
『セックス・アンド・ザ・フェスティバル』(Les Coquillettes de Sophie Letourneur)
フランス/2012年/75分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:ソフィー・ルトゥルヌール
出演:カミーユ・ジュノー、キャロル・ル・パージュ、ソフィー・ルトゥルヌール、ルイ・ガレル

映画業界って言ったって、いつもいつもスターの登場するレッド・カーペットとかプティ・フールの並ぶパーティーのようにグラムールってわけじゃない。どうってことないチーズマカロニみたいなものなのだ!恋に悩む不器用な愛すべき三人娘がスイスの映画祭に向かう。ミーハーなソフィーは、この映画祭でただ一人の有名俳優に夢中で、ロマンティックなカミーユは不可能な恋物語を夢見ている。一方、実用的なキャロルはただ"男と寝たい"だけ...。
第1回ボルドー国際映画祭ノミネート作品。
© DR
『ヴァンサンには鱗がない』(Vincent n'a pas d'écailles de Thomas Salvador)
フランス/2014年/78分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:トマ・サルヴァドール
出演:トマ・サルヴァドール、ヴィマラ・ポンス、ユセフ・ハジディ

ヴァンサンはスーパーパワーの持ち主だ。その能力とは彼が水に触れると肉体の力と思考力が超人的に増大するものだった。この自分の能力を存分に発揮するため、また喧騒を離れて穏やかに暮らすため、湖と川が豊かで静かな土地へと住み着いたヴァンサン。その地で偶然出会ったリュシーと恋に落ち...。監督自身が「スーパーマン」を演じるファンタスティック・ラブストリー。
第3回ボルドー国際映画祭グランプリ作品。
※12/9(日)の上映はシネ・リセ-若者向け映画講座-です。上映と解説を含め、3時間から3時間半程度を予定しています(中学生以上、22歳程度までの方対象。)。
新世代の監督たち
三宅唱
© DR
『THE COCKPIT』(THE COCKPIT de Sho Miyake)
日本/2014年/64分/カラー/デジタル/英語字幕
監督:三宅唱
出演:OMSB(SIMI LAB)、Bim(THE OTOGIBANASHI'S)ほか

注目のヒップホップ・アーティストOMSBとBim、そして仲間たちも加えた、真剣だけどコメディ映画みたいににぎやかな音楽づくり。『THE COCKPIT』はそれを記録することで、同じようにわたしたちの日常と創作とを繋いでみせる。刺激的な創造行為の貴重な記録であると同時に、若者たちのユーモラスで愛おしい日常の記録でもある、これはそんなドキュメンタリー。パリの「ポンピドゥー・センターで開催される国際ドキュメンタリー映画祭シネマ・デュ・レエル新人監督部門に出品され好評を得る。
© Komori Haruka + Seo Natsumi
三宅唱セレクション
『波のした、土のうえ』(Under the wave, on the Ground de Haruka Komori)
日本/2014年/68分/カラー/デジタル/英語字幕
制作:小森はるか+瀬尾夏美(テキスト:瀬尾夏美 撮影、編集:小森はるか)
出演:阿部裕美、鈴木正春、紺野勝代、瀬尾夏美

津波に遭遇した沿岸の町・陸前高田で出会った人々の言葉と風景。その3年8ヶ月の記録から物語を起こすように構成された3編の映像。この町に暮らしていた人々と、2人組のアートユニット"小森はるか+瀬尾夏美"が協同で制作。まず、被写体となる住民の方に繰り返しインタビューしたものを瀬尾が物語に起こす。それを再度、本人に戻して訂正や調整、書き換えを行いながら朗読。書き直しと朗読を繰り返した声と、この町の風景を重ねるように小森が映像を編んで作り上げられた。
© DR
三宅唱セレクション
『人間ピラミッド』(Pyramide humaine de Jean Rouch)
フランス/1961年/90分/カラー/DVD/日本語字幕
監督:ジャン・ルーシュ

1959年、アビジャンの高校に新入生ナディーヌがやってきた。ジャン・ルーシュによって集められた生徒たちは黒人と白人の間の新たな関係を通して生まれる友情関係、愛情関係についての「フィクション」に自分自身の役を演じながら参加する。
鈴木洋平
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『丸』(Maru de Yohei Suzuki)
日本/2014年/89分/カラー/デジタル/英語字幕
監督・脚本・編集:鈴木洋平
出演:飯田 芳、木原勝利、池田 将、金子紗里、軽部日登美、村上ROCK

大阪のある一軒家で父子心中未遂事件が発生。心中を図った父親は銃で自殺。容疑者死亡により裁判なしの有罪となる。生き残った家族は何も語らず、現場にいた次男は事件のことを思い出そうとすると突発的に時間が止まったかのように静止してしまうのだった......。現場で何を目撃したのか? 本当に心中未遂事件だったのか? 記者・出口が調べるに従って、事件の真相は不条理な世界に突入していく。
New Directors / New Films 2015、ロッテルダム国際映画祭に正式出品作品。
伊藤丈紘
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特別プレミア上映
『アウトゼア』
(Out there de Takehiro Ito)
日本=台湾/2016年/125分/カラー&モノクロ/デジタル/日本語字幕
監督:伊藤丈紘
出演者:馬君馳、小林晴夫、北浦愛、服部竜三郎、瀬戸夏実

映画監督である晴夫は、台湾で撮影予定の新作が資金難のため制作中断となり、撮影済のテストフィルムだけが手元に残った。 晴夫は映画制作を再開させようとシナリオを書き直し、新しい俳優探しを始める。そんな中、晴夫はオーディションに応募してきた台湾人青年、馬と出会う。台湾と日本を舞台に、前半部の映画づくりの様子や監督と青年との対話が、やがて台湾現代史を背景にした家族の記憶、そして「いまここ」で生きる青年の実人生の姿へとつながり、渾然一体に映し出されていく。過去と現在、ドキュメンタリーとフィクションが越境していく可能性を見つめた作品で、マルセイユ国際映画祭を皮切りに、ロッテルダムやトリノなど世界各地の映画祭で上映され注目を集める。今回が日本でのプレミア上映となる。
© DR
伊藤丈紘セレクション
『彼女は陽光の下で長い時を過ごした』(Elle a passé tant d'heures sous les sunlights de Philippe Garrel)
フランス/1985年/130分/モノクロ/デジタル/無字幕・作品解説配布
監督:フィリップ・ガレル
出演:ミレイユ・ペリエ、ジャック・ボナフェ、アンヌ・ヴィアゼムスキー

愛する女性が去ってしまったことで混乱し、悲しむ若き映画監督にシャルル・ペローの「白雪姫」をコメディ・フランセーズで演出する企画を持ちかけられる。デジタル・リマスター版にて初上映。
「『彼女は陽光の下で長い時を過ごした』には直線で語られるようなストーリーはない。つねに3夢、現実、想像の3つのレベルがあり、それらが時に結びつく。」フィリップ・ガレル
広島国際映画祭関連企画
ザンジバル、パリ/NY インディペント映画の変遷 ジャッキー・レイナルを迎えて
ジャッキー・レイナル(1940~)はヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たち(とくにエリック・ロメール)の作品の編集を手がけるのと平行して、68年5月の影響下で結成された映画作家と前衛芸術家たちの集団「ザンジバル」にセルジュ・バール、フィリップ・ガレル、ダニエル・ポムルール、ベルナデット・ラフォンらと参加。その後、ニューヨークのブレッカーストリートシネマ、カーネギー・ホールなどでプログラマーとしてマルグリット・デュラス、ジャン=リュック・ゴダール、シャンタル・アッケルマン、ジャック・リヴェットらの作品を紹介してきました。パリ、ニューヨークとインディペンデントな映画の製作、紹介において重要な役割を担ってきたジャッキー・レイナルを迎えた特集を開催します。
68年5月のダンディー、ザンジバルグループを巡って
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『トゥワイス』(Deux fois de Jackie Raynal)
フランス/1968年/90分/モノクロ/35mm/日本語同時通訳付
監督:ジャッキー・レイナル
シネマテーク・ドゥ・トゥールーズ所蔵作品

1969年にバルセロナに9日間旅をした際に撮られたレイナルの処女監督作品で68年5月革命直後の抗いがたい幻滅が表現されている。1972年イエール新人映画祭にてグランプリ受賞。
「眼差しの帝国主義が抑制していたものを再発見させてくれる女性形の映画。」セルジュ・ダネー、「カイエ・デュ・シネマ」
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『アセファル/無頭人』(Acéphale de Patrick Deval)
フランス/1968年/65分/モノクロ/デジタル/日本語同時通訳付
監督:パトリック・デュヴァル
出演:ローラン・コンドミダス、ジャック・バラティエ、パトリック・デュヴァル
シネマテーク・ドゥ・トゥールーズ所蔵作品

パリとおぼしき場所を放浪する若者。大学で授業をしては、さまよい、そして同じようにやせた人々と落ち合い、街の中を走る乗り物の中に入り込み、再びさまよい、未開の森を見つけ、そこに共同体を築く。しかしそこで窮屈に感じ始め、ふたたび独りになり、夜を絶望的にさまよい、十字路で一人の女性を襲うが、すぐに彼女に詫びる。ザンジバルの共同体としてのあり方を暗喩した本作は1968年夏に撮影され、翌年創設されるカンヌ映画祭監督週間部門でお披露目された。
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『ヴィット』(Vite de Daniel Pommeureulle)
フランス/1970年/37分/カラー/35mm/日本語同時通訳付
監督:ダニエル・ポムルール
出演:ムスタファ、ダニエル・ポムルール
シネマテーク・ドゥ・トゥールーズ所蔵作品

彫刻家、画家、詩人、俳優、そして映画作家であったダニエル・ポムルールは独創的で多彩で、その後の時代を予兆するような作品を生み出したアーティストだった。俳優として出演した『コレクションする女』の中で、「空虚VIDE」について哲学的議論を行った3年後、ある意味「空虚VIDE」を「ヴィット(速く)VITE」に変換して構想されたのが本作になる。68年5月革命に深く失望し、西洋社会を辛らつに攻撃し、緩慢なる宣戦布告を行う『ヴィット』は、ポムルール自身演じる男が少年を引き連れ、モロッコの砂漠を放浪するシーンと超望遠鏡が捉えたショットで構成されている。
© DR
『現像液』(Le Révélateur de Philippe Garrel)
フランス/1968年/67分/モノクロ/35mm/無字幕・作品解説配布
監督:フィリップ・ガレル
出演:ベルナデット・ラフォン、ローラン・テルジェフ、スタニスラス・ロビオル
シネマテーク・フランセーズ所蔵作品

「黒い森」の中、未知なる危険から一組の男女と彼らの子供が逃れようとする。
「『現像液』は故意に幻想的な映画として作られ、精神分析において原光景と呼ばれるものを巡って撮られた。映画はどのように生まれるのか、子供はどのように作られるのか、そして両親が愛し合っているところを子供が始めて見る瞬間について撮られた。」フィリップ・ガレル
ジャッキー・レイナル関連作品

© DR
『地中海』(Méditerranée de Jean-Daniel Pollet)
フランス/1963年/43分/カラー/デジタルベータカム/日本語字幕
監督:ジャン=ダニエル・ポレ
音楽:アントワーヌ・デュアメル

フィリップ・ソレルスのテキストにのせて、象徴的なオブジェ(彫像、寺院、ピラミッド、闘牛)を日常のありふれたオブジェと比較することで、事物の「具体性」という性格を象徴的なオブジェに取り戻させている。映像は、それ自体輝きと優しさを湛えているが、地中海の暴力性もまた備えている。ジャッキー・レイナル編集による。
© DR
『パリところどころ』(Paris vu par...)
フランス/1965年/97分/カラー/35mm/日本語字幕
監督:ジャン=ダニエル・ポレ(第一話=「サン=ドニ街」)、ジャン・ルーシュ(第二話=「北駅」)、ジャン・ドゥーシェ(第三話=「サン・ジェルマン=デ=プレ」)、エリック・ロメール(第四話=「エトワール広場」)、ジャン=リュック・ゴダール(第五話=「モンパルナスとルヴァロワ」)、クロード・シャブロル(第六話=「ラ・ミュエット」)
出演:ミシュリーヌ・ダクス、ナディーヌ・バロー、バーベット・シュローダー、ジョアンナ・シムカス、ステファーヌ・オードラン

ヌーヴェル・ヴァーグを代表する6人の監督による、パリの6つの場所を舞台にした短編オムニバス映画。それぞれの地区での人間模様がシニカルな目線で描かれる。ジャッキー・レイナルは、ジャクリーン・レイナルとクレジットされ、映像、音響の両方の編集を担当した。
© DR
『コレクションする女』(La Collectionneuse d'Eric Rohmer)
フランス/1967年/90分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:エリック・ロメール
出演:パトリック・ボーショー、アイデ・ポリトフ、ダニエル・ポムルール

アドリアンは、所用でロンドンに向かう恋人と離れ、大きく物静かな別荘で修道士のような休暇を過ごすことにしたが、そこにはすでに友人のアーティスト、ダニエルとアイデという若い娘がいて...。ジャッキー・レイナルは、本作の編集を担当。ザンジバルのメンバーであるダニエル・ポムルールやアラン・ジュフロワが出演しており、ザンジバル誕生前夜に撮影され、その後の68年五月革命やザンジバルの在り方を予言した作品。
© DR
『ニューヨーク・ストーリー』(New York Story de Jackie Raynal)
アメリカ/1981年/28分/カラー/デジタル/オリジナル英語版・作品解説配布
監督:ジャッキー・レイナル

自伝的作品で、ジャッキー・レイナル自身が演じるルルがブロードウェイをさまよいながら映画編集の仕事を探している。
「バスター・キートンとウッディ・アレンを思わせながらも、さらにとらえがたく、可笑しい。」エイミー・ターバン、『ソーホ・ニュース』
<横浜会場>

ベルトラン・マンディコ × 鈴木卓爾
フランス映画界では類を見ないファンタージックホラーな世界観と官能的な造形美で注目を集めているベルトラン・マンディコ監督の衝撃作『ワイルド・ボーイズ』の日本初公開に併せて、日本映画界に前代未聞の発想で革新をもたらし、今もなお映画づくりの新しい可能性を提示しつづける鈴木卓爾監督の名作『ジョギング渡り鳥』をご紹介します。
★『ワイルド・ボーイズ』上映後、ベルトラン・マンディコ監督、鈴木卓爾監督、エリナ・レーヴェンソンによるアフタートークを予定しています。


© 2015 Migrant Birds Association / THE FILM SCHOOL OF TOKYO
第8回TAMA映画賞特別賞受賞
『ジョギング渡り鳥』
(Jogging Wataridori de Takuji Suzuki)
日本/2015年/157分/カラー/デジタル/日本語
監督:鈴木卓爾
出演:中川ゆかり、古屋利雄、永山由里恵、古川博巳、坂口真由美、茶円茜、矢野昌幸、小田篤、古内啓子、柏原隆介、小田原直也、吉田庸、佐藤駿、山内健司、兵藤公美、古澤健

遠い星からやってきたモコモコ星人は、神を探す長い旅を経て地球にたどり着いた。母船が壊れ帰れなくなった彼らは、とある町の人々をカメラとマイクで観察しはじめた。人間のように「わたし」と「あなた」という概念がない彼らは、いつしか町の人々が直面している「わたしはあなたではない」という近代人間的事実に直面する―。果たしてモコモコ星人は「神」と出会うことができるのか。 地球人と宇宙人が入り乱れて織りなすドタバタ青春群像は、不思議なポリフォニーとなって、やがて魂を震わすコーラスを奏で始める。
「これこそ真の意味でリアルな映画なのだ。その稀有のリアルさを体験すべく、衛星に乗ってでも映画館へかけつけよ!!!」蓮實重彦(映画評論家)

© Ecce Films
2017年ボルドー国際インディペンデント映画祭長編部門グランプリ受賞
『ワイルド・ボーイズ』
(Les Garçons Sauvages de Bertrand Mandico)
フランス/2017年/110分/カラー&モノクロ/デジタル/フランス語/日本語字幕
監督:ベルトラン・マンディコ
出演:ヴィマラ・ポンス、ポリーヌ・ロリラール、ディアンヌ・ルクセル、アナエル・スノーク、マチルド・ワルニエ、サム・ルーウィック、エリナ・レーヴェンソン
R12+

20世紀初頭。良家出身の5人の少年が、ある日解放的な気分に魔が差して、卑劣な罪を犯してしまう。罪を償うため謎の船長に預けられた少年たちは、過酷な航海の旅へと連行される。そこで密かに反乱を企てる5人だが、ある無人島に座礁すると、そこには快楽を与えてくれる幻想的な植物が生い茂り、いつの間にか欲望に溺れていく。すると、少年たちの身体は次第に変異していき、ゆるやかにジェンダーの境界線が溶けていく...。デジタルトリックに一切頼らない、驚くべき造形の美しさも見所のひとつ。
「ベルトラン・マンディコの映画はどのジャンルにも属さない。彼は、20歳から独自のジャンルを忍耐強く構築してきたのだ。マンディコの映画における幻想的なるものは自然の中に存在している。彼がカメラを置くのは、草木が繁茂し、官能的で突然変異する場所だ」ステファン・デュ・メスニルド―(映画批評家、カイエ・デュ・シネマ誌同人)
ユベール・ヴィエル × 清原惟
近年の写実的な潮流を好むフランス映画に対抗し、寓話的で瑞々しいポエジーを蘇らせたユベール・ヴィエル監督の奇跡のような長編処女作『アルテミス、移り気なこころ』の待望の再上映とともに、日本の映画史を更新する鮮烈な手法と天才的な感性で観る者を魅了する清原惟監督の劇場デビュー作『わたしたちの家』をお届けします。
★『わたしたちの家』上映後、清原惟監督、諏訪敦彦監督によるアフタートークを予定しています。(司会:坂本安美/アンスティチュ・フランセ日本映画プログラム主任)


© Les Artisans du Film
2013年ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭グランプリ受賞
『アルテミス、移り気なこころ』
(Artémis, cœur d'artichaut d'Hubert Viel)
フランス/2013年/59分/モノクロ/デジタル/フランス語/日本語字幕
監督:ユベール・ヴィエル
出演:フレデリック・バレー、ノエミ・ロセ、ユベール・ヴィエル

月の女神アルテミスが、現代社会に舞い降りた。美術学校の学生となったアルテミスは、ちょっと内気で変わった女の子。ある日、学校の食堂で快活で奔放なカーリイと出会い、人生が一変する。2人で海辺でキャンプをしたり、気になる男の子に話しかけたり、現実と寓話が同居しながら、かけがえのない時間を過ごす友情を描いたガールズロードムービー。メタフィクション的な語りとスーパー8のモノクロ映像が、ヌーヴェル・ヴァーグの瑞々しさを感じさせながら、初期映画のようなコミカルさも併せ持つ、映画づくりの煌きに満ちた珠玉の一本。
「かつてはみな子どもで、嘘も本当も、神も人間も、楽しさも悲しさも、映画の魔法のなかで一緒だった。灰色の21世紀に輝く宝石のような映画。アルテミスとカーリイの2人にありったけの愛を込めて!」野本幸孝(編集者)
© 東京藝術大学大学院映像研究科
2017年PFFアワードグランプリ受賞
『わたしたちの家』
(Our House de Yui Kiyohara)
日本/2017年/80分/カラー/デジタル/日本語
監督:清原惟
主演:河西和香、安野由記子、大沢まりを、藤原芽生、菊沢将憲、古屋利雄、吉田明花音、北村海歩、平川玲奈、大石貴也、小田篤、律子、伏見陵、タカラマハヤ

セリはもうすぐ14歳。父親が失踪して以来、母親の桐子と2人暮らし。最近、お母さんに新しい恋人ができて複雑な気持ちになっている。さなは目覚めるとフェリーに乗っており、自分に関する記憶がなくなっていた。彼女は船内で出会った女性、透子の家に住まわせてもらうことになる。セリとさな、2人の別々の物語が、ひとつの「家」の中で交錯する...。ベルリン国際映画祭、香港国際映画祭、バルディビア国際映画祭など、海外からの招聘も相次いでいる。
「1+1が2になるのではなく、互いに依存することも葛藤することもなく、ただ1と1としてあることで世界を開いてゆく。 その"開かれ"に風が吹き込むとき、ふたつの淡い物語の旋律はやがてひとつの響きとなって、世界をみずみずしく息づかせるのだ。」諏訪敦彦(映画監督)
「一軒の日本家屋を舞台にして、目もくらむような物語の迷宮が展開される。まるでヨーロッパの前衛小説を読んでいるようだ。」黒沢清(映画監督)




交差する視点ー日仏インディペンデント映画特集について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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