ゴーモン映画~映画誕生と共に歩んできた歴史~

映画の誕生から120年以上に渡り、フランスの名だたる映画監督たちの作品を手掛け、映画史を塗り替えてきたゴーモン(Gaumont)の歴史を辿るべく、映画黎明期から現在に至るまで、日本未公開作を含む、ゴーモン映画の傑作群がラインナップされた特集上映「ゴーモン映画~映画誕生と共に歩んできた歴史~」がアンスティチュ・フランセ東京と横浜シネマ・ジャック&ベティで開催される。東京会場では映画監督の青山真治、濱口竜介、映画研究者の岡田秀則、映画批評家のクリス・フジワラ、須藤健太郎を迎えたトークショー、横浜会場では柳下美恵によるサイレント作品のピアノ伴奏も予定されている。
また、横浜フランス月間2018/フランス映画祭2018関連企画として行われる「Gaumont 映画誕生と共に歩んできた歴史」展では、1000本以上におよぶゴーモン映画の代表作から、映画のポスターや名シーンの上映、及び、ゴーモン博物館の所蔵品から貴重な資料やアーカイブの展示が行われる。
2018.6.14 update
6月14日(木)~16日(土)、29日(金)~7月22日(日)
東京会場:アンスティチュ・フランセ東京
ゲスト・登壇日程:
須藤健太郎(映画批評家)6月14日(木)・7月22日(日)
青山真治(映画監督)7月7日(土)
クリス・フジワラ(映画批評家)7月7日(土)
濱口竜介(映画監督)7月13日(金)
岡田秀則(国立映画アーカイヴ主任研究員)7月14日(土)

料金:一般1,200円、学生・ジャック&ベティ会員800円、会員500円
チケット販売:上映当日各回の30分前から上映開始10分後まで。チケット販売時間内には、当日すべての回のチケットをご購入いただけます。全席自由。整理番号順での入場とさせて頂きます。上映開始10分後の入場は、他のお客様へのご迷惑となりますので、固くお断りいたします。
開場時間:15分前

6月16日(土)~20日(水)、28日(木)~7月13日(金)
横浜会場:横浜シネマ・ジャック&ベティ

料金:一般1,200円、学生・ジャック&ベティ会員・アンスティチュ・フランセ会員800円
チケット販売:上映日の1週間前より、劇場窓口にて各上映回のチケットを発売いたします。全席自由。整理番号順での入場とさせていただきます。
開場時間:10分前

公式サイト:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1806140722/
上映スケジュール

東京会場:アンスティチュ・フランセ東京
6月14日(木)
14:00
フランス映画への旅
(190分)

18:00
オープニング
新学期 操行ゼロ
(49分)
アタラント号
(88分)
上映後:
須藤健太郎によるトークあり
6月15日(金)
15:00
呼吸
(92分)

17:15
不滅の物語
フランス語版

(50分)
19:00
ウィークエンド
(104分)

6月16日(土)
12:00
幸福の設計
(89分)

14:00
快楽
(93分)

6月29日(金)
16:45
右側に気をつけろ
(82分)

19:00
怪盗ルパン
(104分)

6月30日(土)
14:30
カミーユ、愛はふたたび
(118分)
17:15
ラ・ブーム
(110分)

7月1日(日)
11:45
パリ大混戦
(86分)

14:00
愛の犯罪者
(111分)

17:00
罪の天使たち
(97分)





7月5日(木)
12:30
カミーユ、愛はふたたび
(118分)
15:15
ベティ・ブルー
インテグラル完全版

(178分)
19:00
はなればなれに
(95分)





7月6日(金)
14:00
パリ横断
(83分)

16:15
この手紙を読むときは
(107分)

19:00
悪魔の手
(81分)





7月7日(土)
13:00
ヨシワラ
(92分)

15:15
明日はない
(83分)

17:30
マイエルリンクからサラエヴォへ
(95分)
上映後:
青山真治、クリス・フジワラによるトークあり
7月8日(日)
11:00
トニ
(90分)

13:30
ヴァン・ゴッホ
(160分)

17:00

(104分)





7月13日(金)
13:30
ケレル
(108分)



16:00
アリス・ギィ短編集
(75分)
混血児ダイナ
(51分)
19:00
ある女の愛
(103分)
上映後:
濱口竜介とのディスカッションあり(司会:坂本安美)



7月14日(土)
11:45
ファントマ
第1話:ファントマ(59分)
第2話:ファントマ対ジューヴ警部(64分)
15:00
ファントマ
第3話:ファントマの逆襲(98分)

17:30
ファントマ
第4話:ファントマ対ファントマ(62分)
第5話:ファントマの偽判事(75分)
上映後:
岡田秀規によるトークあり
7月15日(日)
12:00
裁かるるジャンヌ
(97分)



14:30
たそがれの女心
(100分)


17:00
とらんぷ譚
(81分)






7月20日(金)
16:30
七月のランデブー
(100分)



19:00
殺人者にスポットライト
(93分)

7月22日(日)
12:00
白い足
(104分)



14:30
ルル
(101分)


17:00
私たちは一緒に年をとることはない
(107分)
上映後:
須藤健太郎によるトークあり




横浜会場:横浜シネマ・ジャック&ベティ
6月16日(土)
11:05
罪の天使たち
(97分)





13:15
夢を見ましょう
(80分)







6月17日(日)
11:05
デジレ
(98分)





13:15
レ・ヴァンピール
第1部:首なし死体(39分)
第2部:殺しの指輪(17分)
第3話:赤い暗号(48分)
柳下美恵によるピアノ伴奏付き
6月18日(月)
11:05
夢を見ましょう
(80分)





13:15
レ・ヴァンピール
第4部:幽霊(38分)
第5部:死者の逃亡(45分)
第6部:幻惑する眼(72分)
柳下美恵によるピアノ伴奏付き

6月19日(火)
11:05
レ・ヴァンピール
第7部:サタナス(55分)
第8部:稲妻の主(65分)
柳下美恵によるピアノ伴奏付き
13:30
デジレ
(98分)







6月20日(水)
11:05
罪の天使たち
(97分)





13:15
レ・ヴァンピール
第9部:毒の人(60分)
第10話:血に染まった結婚(68分)
柳下美恵によるピアノ伴奏付き



6月28日(木)
13:45
抵抗
(100分)
16:00
不滅の物語 英語版
(58分)

6月29日(金)
13:45

(104分)
16:00
ベティ・ブルー
インテグラル完全版

(178分)
6月30日(土)
13:45
不滅の物語 英語版
(58分)
15:30
ウィークエンド
(104分)

7月1日(日)
13:45
たそがれの女心
(100分)
16:00
快楽
(93分)

7月2日(月)
13:45
抵抗
(100分)
16:00
幸福の設計
(89分)

7月3日(火)
13:45
ヴァン・ゴッホ
(160分)
17:15
フレンチ・カンカン
(105分)
7月4日(水)
13:45
とらんぷ譚
(81分)
15:45
フレンチ・カンカン(105分)
7月5日(木)
13:45
裁かるるジャンヌ
(97分)
15:45
右側に気をつけろ
(82分)
7月6日(金)
13:45
快楽
(93分)
16:00
たそがれの女心
(100分)
7月7日(土)
13:30
ラ・ブーム
(110分)
15:45
怪盗ルパン
(104分)
7月8日(日)
13:30
カミーユ、愛はふたたび
(118分)
16:00
パリ大混戦
(86分)
7月9日(月)
13:30
カドリーユ
(95分)

15:45
愛の犯罪者
(111分)
7月10日(火)
13:30
はなればなれに
(95分)

15:45
明日はない
(83分)
7月11日(水)
13:30
顔のない眼
(88分)

15:30
悪魔の手
(81分)
7月12日(木)
13:30
パリ横断
(83分)

15:30
ヨシワラ
(92分)
7月13日(金)
13:30
殺人者にスポットライト
(93分)
15:45
七月のランデブー
(100分)
       
上映プログラム
※記載がある作品以外は日本語字幕による上映

1. ゴーモン創成期 1895年〜1929年
"ゴーモン"、このとある帝国の名は、のちに映画そのものの代名詞となった。それは一人の男、L.ゴーモン社を設立したレオン・ゴーモン(1864-1946)の名前である。リュミエール兄弟により映画が誕生した後、レオン・ゴーモンは1896年に会社の事業拡大のため、社長秘書のアリス・ギィに短編映画の撮影を任せる。そして1907年、ルイ・フイヤードが "ベルヴィルの小さな会社"、ゴーモンの扉を叩く...。

世界初の女性監督誕生アリス・ギィ傑作集
1873年生まれのアリス・ギィは22歳で映画製作に身を投じ、映画黎明期に世界初の女性監督となる。アリスはゴーモン社の社長レオン・ゴーモンの秘書として働いていたが、リュミエール兄弟により映画が誕生した後、1896年に会社の事業拡大のため、短編映画の製作を任されるようになる。その後も多くの作品を監督し、短編映画『キャベツ畑の妖精』などが成功を収め、同社の映画製作責任者に就任。監督、プロデュース、脚本などを務めた。アリスは生涯20年以上映画製作に携わり、関わった作品はおよそ1,000本以上にのぼるともいわれている。

アリス・ギィ    
『急流の釣り人』(Le Pêcheur dans le torrent)
1897年/52分
『キャベツ畑の妖精』(La Fée aux choux)
1900年/1分
『第一級の産婆』(Sage- femme de première classe)
1902年/3分30秒
『キリストの生涯』(La Naissance, la vie et la mort du Christ)
1906年/37分7秒
『フェミニズムの結果』(Les Résultats du féminisme)
1907年/7分
他21本、計75分
ルイ・フイヤードの時代 1907年〜1925年
「フイヤードの映画で私が感嘆するのはその驚くべき、詩情に満ちた直感だ。非常に日常的な要素から神秘、夢を創造し、まるで呼吸するかのようにシュールレアリスム的世界を生み出している。」(アラン・レネ)

ルイ・フイヤード(1873年〜1925年)は、レオン・ゴーモンとアリス・ギィにそのシナリオを高く評価され、ゴーモンに入社、生涯に渡り800本以上の作品を監督した。フイヤードは歴史、神話ものなど、様々なジャンルの先駆者であり、代表作として挙げられる『ジュデックス』や『ティ・ミン』、そして今回お届けする、新たに4Kで修復された犯罪活劇映画二作『ファントマ』と『レ・ヴァンピール』では、失われつつある当時のパリ、純粋なる視覚的幸福の瞬間をフィルムに記録し、その撮影方法は、後に、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに大きな影響を与えた。

© Gaumont
『ファントマ』(Fantômas)
1913年
第1話 ファントマ/ベルタム事件(59分)
第2話 ファントマ対ジューヴ警部(64分)
第3話 ファントマの逆襲(95分)
第4話 ファントマ対ファントマ(60分)
第5話 ファントマの偽判事(74分)

神出鬼没の怪盗ファントマを主人公とした連続活劇。ピエール・スーヴェストルとマルセル・アランの新聞連載小説をフイヤードが映画化。当時のフランスのシュルレアリストたちを熱狂させた。
© Gaumont
『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』(Les Vampires)
1915年/全10話
第1話 首なし死体(39分)
第2話 殺しの指輪(17分)
第3話 赤い暗号文(48分)
第4話 幽霊(38分)
第5話 死者の逃亡(45分)
第6話 幻惑する眼(72分)
第7話 サタナス(55分)
第8話 稲妻の主(65分)
第9話 毒の人(60分)
第10話 血に染まった結婚(68分)

第一次世界大戦中に製作され、フランスで大成功を収めた連続活劇。パリで次々と起こる怪事件、その背後にギャング団〈ヴァンピール(吸血鬼たち)〉の存在があることを知った新聞記者フィリップは、ヴァンピールの正体を突き止めるべく孤軍奮闘。さらに催眠術師モレノも加わって、1910年代のベル=エポックのパリを舞台に大犯罪絵巻が繰り広げられる。当時、ヴァンピールの女首領イルマ・ヴェップが人気を呼び、役を演じた女優、ミュジドラをシュルレアリストたちが絶賛した。
2.トーキー初期に生まれた傑作、カルト的コメディ1930年〜1974年
1929年10月4日、世界初のトーキー『ジャズ・シンガー』が、オペール劇場で上映され、1930年5月3日、ゴーモンが製作した初のトーキー、レオンス・ベレ監督『Quand nous etions deux(二人だった時)』が公開される。

オープニング特別上映 反逆児、ジャン・ヴィゴ
たった1本の長編と3本の短編を残し、二十九歳で夭折した天才映画作家ジャン・ヴィゴ(1905年~1934年)は、世界に向けるその独創的な視点によって、数多くの映画監督、とりわけフランソワ・トリュフォーをはじめとするヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに多大なる影響を与えてきた。無遠慮であると同時に叙情的であり、風変わりでもあり、反逆と優しさが同居したヴィゴのスタイルは「呪われた作家」として、アルチュール・ランボーと比較される。今回は特別に4K修復版を日本でプレミア上映する。(『アタラント号』は、2017年のカンヌ国際映画祭「カンヌ・クラシック」にてお披露目された)
*ジャン・ヴィゴ作品4K修復版は、アイ・ヴィー・シー配給によりシアター・イメージフォーラムほか劇場公開予定

© 1933 Gaumont
『新学期 操行ゼロ』(Zéro de conduite)
1933年/フランス/49分/デジタル/モノクロ

新学期、いたずら盛りの少年たちたちが寄宿舎に帰ってくる。規則づくめで牢獄のような生活に、少年たちの反逆が始まる!猛烈なアナーキズムと自由で詩情に満ちたヴィゴ28歳で撮った監督第3作。フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』に大いに影響を与える。
© 1934 Gaumont
『アタラント号』(L'Atalante)
1934年/フランス/88分/デジタル/モノクロ
出演:ディタ・パルロ、ジャン・ダステ、ミシェル・シモン、ルイ・ルフェーブル

ル・アーブルとその上流の田舎町を往復している艀アタラント号の若き船長は美しい妻を迎える。しかし新妻は都会の誘惑にかられ、パリに近づいた折にこっそり抜け出してしまう......。熱に浮かされたように官能的で詩的なジャン・ヴィゴの傑作。離れていながら、恋焦がれ、悶え合うふたりの平行モンタージュはまさに映画のみが描き得る愛のシーン。
ジャン・グレミヨン、現代女性とともに
「グレミヨンは、詩的レアリスムの継承者であり、また現代的な映画作家でもある。「ある女の愛」でミシュリーヌ・プレール演じる登場人物は、ロッセリーニにおけるイングリッド・バーグマンと同時代の登場人物といえる。彼女たちは、愛への献身と、社会的、職業的独立との間で引き裂かれた女性だ。」(ドミニク・パイーニ)

© Gaumont
『混血児ダイナ』(Daïnah la métisse)
1931年/48分/モノクロ/デジタル
出演:シャルル・ヴァネル、ハビブ・ベングリア、ローランス・クラヴィウス、ガストン・デュボス

夫に同行して豪華客船で旅をしている混血児ダイナは、悩ましいまでにエキゾチックな魅力を漂わせている。ある日、ダイナは姿を消してしまう...。「父帰らず」('30)に続くジャン・グレミヨンのトーキー第2作で、グレミヨン作品の中でも最もミステリアスな作品の一本。
© Gaumont
『白い足』(Pattes blanches)
1949年/フランス/92分/モノクロ/デジタル
出演:シュジー・ドレール、ポール・ベルナール、フェルナン・ルドゥー、ミシェル・ブーケ

ブルターニュの小さな港町。白いゲートルが闇夜に浮かび上がり、子供たちが「白い足、白い足!」とからかいながら群がっていく不気味なシークェンスを経て、5人の男女の愛憎劇の幕があがる。美しく豊満な肉体を持ち「最高の女」ともてはやされる元お針子のオデットは、酒場の主人ジャックで魚卸業を営むジョックの情婦だが、同時に破産した城主ケリアデックをいたずらに誘惑し、かつ他方で彼の腹違いの弟モーリスと恋に落ちてしまう。
© Gaumont
『ある女の愛』(L'Amour d'une femme)
1953年/フランス=イギリス/104分/モノクロ/デジタル
出演:ミシュリーヌ・プレール、マッシモ・ジロッティ、ギャビー・モルレー

ブルターニュ地方の離島ウェサン島に若い女性医師マリーが、年老いた医師の後任としてやってくる。医師としての能力、その献身的な働きぶりによって島の住民たちに受け入れられるようになる。マリーは、この地に工事の現場監督として一時的に滞在しているアンドレと恋に落ちる。アンドレは、マリーに仕事をやめ、自分と結婚するよう求める...。
ジャン・ルノワールによるフランスの物語
マルセル・パニョルが、マルセイユ郊外の自分の撮影所、パニョル映画の常連役者をジャン・ルノワール(1894-1979)に紹介する。これをきっかけに生まれたのが、ネオリアリズムの先駆的作品とされ、南仏の移民たちの生活を描く『トニ』だった。その後アメリカ時代を経て、15年ぶりにフランスでの撮影にあたり、ルノワールは大好きなモンマルトルを舞台に、ムーラン・ルージュの誕生物語を選んだ。

© Gaumont
『トニ』(Toni)
1934年/フランス/90分/モノクロ/35mm/英語字幕
出演:シャルル・ブラヴェット、セリア・モンタルヴァン、マックス・ダルバン、ジェニー・エリア

地中海沿岸の街に定期的にやってくる季節労働者のイタリア人、トニは下宿の娘マリーに好かれながらも、ぶどう園主の娘ジョゼファに想いを寄せている。しかしその恋がトニを悲劇へと導いていく。スペイン移民たちの奏でるギターの哀愁のメロディとともに、ほぼ全篇ロケ撮影で、南仏の生命の輝きを見事にとらえ、イタリアのネオ・レアリズモの先駆的作品と言われている。
© 1954 Gaumont - Jolly Films
『フレンチ・カンカン』(French cancan)
1954年/フランス/105分/カラー/35mm
出演:ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール、マリア・フェリックス、フィリップ・クレイ

アメリカ時代を経て、15年ぶりにフランスで撮るにあたり、ルノワールは、大好きなモンマルトルを舞台に、ムーラン・ルージュの誕生物語を選ぶ。
「ラストのフレンチ・カンカンのナンバーは、必ずや満場の息を呑ませる真に力のこもったシーンであり、長い華麗な一節だ。」(フランソワ・トリュフォー)
サシャ・ギトリ、すばらしき語り部
「あらゆる偉大な映画作家と同様にサッシャ・ギトリ1885-1957)は映画をあらたに作り変えた。映画がトーキーになった時、ギトリはすぐにそれが自分の創造力の延長となることを察知し、純粋なる映画を作り出したのだ。」(オリヴィエ・アサイヤス)

© Gaumont
『夢を見ましょう』(Faisons un rêve)
1936年/フランス/80分/モノクロ/デジタル
出演:サッシャ・ギトリ、ジャクリーン・ドゥリュバック、ライム

女に愛の告白をする男。ある夜、女を待つ男のもとにようやく女が現れ、二人は一夜を過ごす。翌朝、女の夫が弁護士の事務所を訪れる...。
「『夢を見ましょう』において重要なのは、あくまでも声だ。声が物語を生み、声が物語を続行させ、声が登場人物を分割さえする。」(梅本洋一、「サッシャ・ギトリ 都市・演劇・映画」)
© Gaumont
『とらんぷ譚』(Le Roman d'un tricheur)
1936年/フランス/81分/モノクロ/デジタル
出演: マルグリット・モレノ、ジャクリーヌ・ドリュバック、ピエール・アシ、ロジェ・デュシェーヌ、ポリーヌ・カルトン

ギトリが自作の小説『詐欺師の物語』を自ら脚色・監督・主演したトーキー第二作目で全篇彼のモノローグによって筋を運んでいる。盗みがバレて、食事を抜かされ、その食事のシャンピニョンが毒入りで、一夜にして孤児となった少年。以後、様々な職を経て、モナコのカジノでプロの詐欺師となった男が、カフェで回想録を執筆する......。
「ギトリはエルンスト・ルビッチのフランス人の兄だ。」(フランソワ・トリュフォー)
© Gaumont
『デジレ』(Désiré)
1937年/フランス/98分/モノクロ/デジタル
監督:サッシャ・ギトリ
出演:サッシャ・ギトリ、ジャクリーン・ドリュバック、アルレッティ

美しい女優オデット・クレリは大臣のフェリックスと内縁関係にある。ある日、オデットは非の打ち所がない召使、デジレを雇う。ある晩、デジレの隣の部屋で寝ていた女中マドレーヌはデジレが夢の中でオデットの名前を呼ぶのを聞いてしまう。そして大臣は隣で寝ているオデットがデジレの名前を夢の中で呼ぶのを聞いてしまう。互いに求め合うふたりには、しかし身分の違いが歴然と存在している......。
© Gaumont
『カドリーユ』(Quadrille)
1937年/フランス/95分/モノクロ/デジタル
監督:サッシャ・ギトリ
出演:サッシャ・ギトリ、ギャビー・モルレー、ジャクリーン・ドリュバック

フランス人女優ポレットは日刊紙「パリ・ソワール」編集長フィリップの恋人。パリ訪問中の今をときめくアメリカ人人気若手俳優カール・エリクソンはポレットの魅力に心奪われる。しかしポレットは、自分を女優と知らないカールに、自分の名前を偽り、友人のジャーナリスト、クロディーヌの名前を告げてしまう。そんな時、カールはフィリップとクロディーヌのインタビューを受けることになる。フィリップはインタビューのお礼に、ポレットが出演している舞台のチケットをカールに贈り、知らずしてふたりの再会をお膳立てしてしまう......。
マックス・オフュルスと女たち
演出で多大な影響を与え、生涯を通じ"女"を撮り続けた巨匠、マックス・オフュルス(1902―1957)の5本の作品を一挙特集する。

© Gaumont
『ヨシワラ』(Yoshiwara)
1937年/フランス/92分/モノクロ/デジタル
出演: ピエール・リシャール=ウィルム、 田中路子、早川雪舟

20世紀初頭、大名の娘が吉原に身売りし、ロシアの勤勉な将校と運命の出会いを果たすが......。芸者とロシアの海軍将校との不可能な愛を描いたサスペンス・メロドラマ。オーストリアで歌手、女優として活躍した田中路子と名優、早川雪洲が共演。
© Gaumont
『明日はない』(Sans lendemain)
1939年/フランス/82分/モノクロ/デジタル
出演:エドウィージュ・フイエール、ジョルジュ・リゴー、ダニエル・ルクルトワ

モンマルトルのキャバレーの踊り子・エヴリンは気品と美貌で一番の人気者。一人息子の母でもある。ある日、昔の恋人に再会した彼女は、キャバレーで働く姿を見せたくないがためにある行動に出る...。運命の愛を貫こうとする女性の姿を描いたオフュルス的メロドラマ。
© Gaumont
『マイエルリンクからサラエヴォへ』(De Mayerling à Sarajevo)
1940年/フランス/95分/モノクロ/デジタル
出演: エドウィージュ・フィエール、ジョン・ロッジ、エーメ・クラリオン

オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公は、革新的な考えの持ち主だったため皇室から疎まれていた。チェコ人の伯爵令嬢ゾフィー・ホテイクと出会った大公は、恋に落ちるが...。あっと驚く驚愕のラスト・ショットまで、巨匠オフュルスの流麗なキャメラワークが冴え渡る史実を基に作り上げた作品。
© Gaumont
『快楽』(Le Plaisir)
1952年/フランス/93分/モノクロ/デジタル
出演:クロード・ドーファン、ギャビー・モルレー、マドレーヌ・ルノー、ダニエル・ダリュー、シモーヌ・シモン、ダニエル・ジェラン

モーパッサンの短編を3話仕立てのオムニバス形式で映画化。第一話「仮面の男」は若々しく変装して夜遊びを続ける夫に手を焼く妻を、第二話「メゾン・テリエ」は田舎で休暇を過ごす娼婦達を、第三話「モデル」は関係したモデルに苦しめられ、挙げ句の果てに不具になってしまう画家を描く。トリュフォーやドゥミなどヌーヴェル・ヴァーグの監督たちがこぞってオマージュを捧げる傑作。
© Gaumont
『たそがれの女心』(Madame de ...)
1953年/フランス/100分/モノクロ/デジタル
出演:ダリエル・ダリュー、シャルル・ボワイエ、ヴィットリオ・デ・シーカ

1953年舞台は1900年、ベル・エポックの華やかなパリ社交界。ダイヤの耳飾りをめぐり、運命の歯車にもてあそばれる上流階級の男女の人間模様をオフュルスによるメロドラマの傑作。特筆すべき美貌と存在感でフランス映画史を彩りつづけダニエル・ダリューの香り立つような魅力が堪能できる。
過激なるロベール・ブレッソン(1901-1999)
「いわゆる『自然さ』、必ずしも『自然と見える』ことにブレッソンは関心がない。動く映像と音を用いて、もっともっと神秘的な何かを探求する。私たちを、悪魔のような、あるいは神のような私たちの本質を、もちろん肉眼では見えないが、カメラからは見える何かを。」(フロランス・ドゥレ)

© Gaumont
『罪深き天使』(Les Anges du péché)
1943年/フランス/96分/モノクロ/35mm
出演:ルネ・フオール、ジャニー・オルト、シルヴィー、マリー=エレーヌ・ダステ

ドミニク女子修道院を舞台に、犯罪者の更生を志す修道女とそれを拒む少女との対峙を描いたブレッソンの長編デビュー作。
「徹底的に女たちの映画、女たちの間の友愛や葛藤や憎しみの映画であり、閉ざされた純粋空間の内部で彼女たちの交わすやりとりは、時として驚くほどの官能性を帯びる。」(野崎歓)
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『抵抗 (レジスタンス) ―死刑囚の手記より』(Un condamné à mort s'est échappé)
1956年/フランス/97分/モノクロ/デジタル
出演:フランソワ・ルテリエ、シャルル・ル・クランシュ、モーリス・ベールブロック

ドイツ占領下のリヨンで、レジスタンスのフランス人将校が逮捕された。彼はドイツ軍の手によって、脱走不可能と謳われた監獄に入れられる。だが生き延びることを決意した彼は、身の回りの品を使って、脱獄計画を進めていた......。実話を基にしたサスペンス・アクション。
優雅なるジャック・ベッケル(1906-1960)
「フランス映画を作る良い方法は幾つかある。ジャン・ルノワールのようにイタリア式のやり方もあれば、オフュルスのようなウィーン式もある。あるいはメルヴィルのようにニューヨーク式もあるだろう。しかしフランス映画を撮るのに真にフランス式であり続けたのはジャック・ベッケルただ1人だけだった。」(「ジャック兄貴」ジャン=リュック・ゴダール)

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『幸福の設計』(Antoine et Antoinette)
1946年/フランス/89分/モノクロ/デジタル
出演:ロジェ・ビゴー、クレール/マフェイ、ノエル・ロクヴェール

パリの下町に若い男⼥と、そこで暮らす市井の⼈々をやさしく描きだす"パリ下町三部作"の第1作。ベッケル監督の熟練した手腕がいかんなく発揮され、1948年、カンヌ国際映画祭「恋愛⼼理映画」賞を受賞するなど⾼い評価を受けた珠玉の一作。
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『七月のランデヴー』(Rendez-vous de juillet)
1949年/フランス/112分/モノクロ/デジタル
出演:ダニエル・ジェラン、ブリジット・オーベール、モーリス・ロネ

1949年、パリを舞台にした青春群像劇。探検家になるという夢を両親に反対されたルシアンは、父親と口論の末、家を出て探検隊に参加する準備を進める。一方、恋人のクリスティーヌも女優になるという夢を実現するべく動き始めるが...。ベッケルによる青春群像の傑作。
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『怪盗ルパン』(Les Aventures d'Arsène Lupin)
1957年/フランス/104分/カラー/デジタル
出演:ロベール・ラムルー、ジョルジュ・シャマラ、O・E・ハッセ

1910年、パリ。いくつもの顔を持つ怪盗アルセーヌ・ルパンは、夜会にイタリア人外交官に変装して入り込み、絵画を巧みに盗む、宝石店では裕福な老人になりすまして、見事宝石も手に入れる。ルパンの姿をみそめた美しい貴婦人ミナ・フォン・クラフトは、自分が仕えるドイツ皇帝カイゼル2世のもとに呼び寄せ、ある依頼を行う。
フランス幻想作家、ジョルジュ・フランジュ
ジョルジュ・フランジュ(1912-1987)は残酷さとポエジー、リアリズムと幻想が合い混じったスタイルでフランス映画の中でも特異な位置を占め、シネマテーク・フランセーズの共同創設者として知られる。カルト的傑作『顔のない眼』のほか、日本未公開の『殺人者にスポットライト』を上映。

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『顔のない眼』(Les Yeux sans visage)
1960年/フランス/88分/モロクロ/デジタル
出演:エディット・スコブ、ピエール・ブラッスール、アリダ・ヴァリ

ジェネシェ博士は、交通事故で失ってしまった娘のクリスティアーヌの美しい顔を取り戻そうと日々研究を重ねている。しかし、それは、他の若い女性を犠牲にし、その皮膚を剥ぎ取って移植する事に他ならなかった。
「ミもフタもない非人間的な描写の数々に、我々は露骨な嫌悪を感じつつ、 なぜかたえなる美と官能に包まれて最高の映画的幸福を味わう。フレンチ恐怖映画の金字塔という範疇をはるかに超えて、こんな映画はたぶん映画史上これしかない。」(黒沢清)
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『殺人者にスポットライト』(Pleins feux sur l'assassin)
1961年/フランス/95分/モノクロ/デジタル
出演:ピエール・ブラッスール、パスカル・オードレ、マリアンヌ・コッホ、ジャン=ルイ・トランティニャン、ダニー・サヴァル

フランジュの長編3作目で、『めまい』や『顔のない眼』の原作者でもあるピエール・ボワローの『彼奴を殺せ』を映画化したサスペンス作品。モーリス・ジャールの音楽のリズムに乗って、裕福な伯爵のミステリアスな死と遺産相続人たちの波瀾が語られる。
ゴーモン流フレンチコメディ
スラップスティック・コメディを数々生み出したジョルジュ・ロートネル(『ハジキを持ったおじさんたち』)やフレンチコメディ映画界の巨匠ジェラール・ウーリー(『大頭脳』、『大乱戦』)ら映画監督たち、そしてフランスでは誰もが最高の喜劇俳優と評するルイ・ド・フュネスによって、ゴーモン製作で多くの名作フレンチコメディが誕生した。

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『パリ大混戦』(Le Grand Restaurant)
1968年/フランス/86分/カラー/デジタル
監督:ジャック・ベルナール
出演:ルイ・ド・フュネス、ベルナール・ブリエ 、ファルコ・ルリ

フランスの伝説的コメディアン、ルイ・ド・フュネス脚本・主演のフランスでカルト的人気のあるコメディ。セプティムはパリの有名な大レストラン「シェ・セプティム」の支配人。ある日、店に訪れた南米の某国の大統領ノヴァレスが忽然と消えてしまう。警察署に呼び出されたセプティムは、容疑者をおびき寄せる役割としての捜査協力をすることになる。
その他の傑作たち

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『裁かるるジャンヌ』(La Passion de Jeanne d'Arc de Carl Theodor Dreyer)
1928年/フランス/97分/モノクロ/デジタル
監督:カール・テオドラ・ドライヤー
出演:ルネ・ファルコネッティ、ウジェーヌ・シルバン

イギリスの侵略からフランスを救ったジャンヌ・ダルクが、宗教裁判によって処刑されるまでの長い一日を、緊迫感溢れる映像で描いたドライヤーのサイレント映画の到達点にして、世界映画祭の金字塔のひとつでもある傑作。
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『悪魔の手』(La Main du diable de Maurice Tourneur)
1943年/フランス/78分/モノクロ/デジタル
監督:モーリス・トゥルヌール
出演:ピエール・フレネー、ジェセリーン・ガエル

山中にひっそりと佇むホテルに、ひとりの男が小さな箱を抱えてやって来た。すると、その箱が停電中にどこかに消えてしまい男は慌てふためく。男は自分の悲劇的な境遇を語り始める。名匠トゥルヌールがゲーテのファウスト伝説からヒントを得て監督した'40年代の代表的なファンタジック・ホラーの傑作。
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『この手紙を読むとき』(Quand tu liras cette lettre de Jean-Pierre Melville)
1953年/フランス/104分/デジタル/モノクロ
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:ジュリエット・グレコ、フィリップ・ルメール、ダニエル・コーシー

南仏カンヌ。元修道女のテレーズとその妹、そしてジゴロのボクサーの運命が絡み合うメロドラマ。メルヴィルが唯一、自分で脚本を手がけず、雇われ監督して演出に徹した作品だが、グレコ演じるテレーズの微妙な心の揺れ動きが張り詰めた緊張感の中に描写され、数々の素晴らしいシーンに満ちている。
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『パリ横断』(La Traversée de Paris de Claude Autant-Lara)
1956年/フランス/82分/モノクロ/デジタル
監督:クロード・オータン=ララ
出演:ジャン・ギャバン、ブールヴィル、ルイ・ド・フュネス

1942年、ドイツ占領下。失業中のタクシー運転手マルタンは、豚肉を運ぶ闇市の仕事を引き受ける。一人で運ぶには量が多過ぎ、マルタンは、酒場で見知らぬグランジルを誘うのだが、彼はとんだ食わせ者だった。名優たちによって演じられる対照的な二人のコミカルな掛け合いが楽しいオーラン=ララの隠れた名作。
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『不滅の物語』(Une histoire immortelle d'Orson Welles)
1968年/フランス/モノクロ/デジタル
監督:オーソン・ウェルズ
出演: ジャンヌ・モロー、オーソン・ウェルズ、ロジェ・コッジオ, ノーマン・エシュリー

「バベットの晩餐会」などのI・ディーネセンの短編を映像化。ウェルズは自らを全能と信じて架空の物語を現実にしようとする年老いた豪商クレイ氏を演じ、盟友ジャンヌ・モローが共演。音楽にエリックサティの楽曲が用いられている。今回は編集の異なるバージョン、東京会場ではフランス版(50分)、横浜会場ではオリジナル英語版(58分)を上映。
3. ゴダールの宇宙
「大きい歴史というのは映画の歴史のことだ。そして映画というのは、20世紀において解決された19世紀の問題が。この歴史がほかの歴史より大きいものであるのは、この歴史は投射される(=映写される)からだ。(...)ラングロワが『吸血鬼ノスフェラトゥ』を映写するとき、ノスフェラトゥが住む小さな町の中に、すでに1944年の時点でベルリンの廃墟を見て取ることができる。投射がそこでなされるわけだ。」(ジャン=リュック・ゴダール)

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『はなればなれに』(Bande à part)
1964年/フランス/96分/モノクロ/デジタル
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
出演:アンナ・カリーナ、クロード・ブラッスール、サミ・フレイ

ゴダールがアメリカの犯罪小説をもとに製作した、型破りの3人組による恋と犯罪の狂想曲。ミシェル・ルグランの音楽にのって、3人がカフェでマディソン・ダンスを踊るシーンや、実際のルーブル美術館でゲリラ撮影された3人の全力疾走シーンは、映画ファンの間で現在も語り継がれる名シーン。
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『ウィークエンド』(Week-end)
1967年/ フランス=イタリア/95分/カラー/デジタル
出演: ミレイユ・ダルク、ジャン・ヤンヌ、 ジョルジュ・スタケ、ジャン=ピエール・レオー、アンヌ・ヴィアゼムスキー

パリ16区に住むブルジョワ夫婦、ロランとコリンヌは、ある土曜日の朝、都会の生活から抜け出し、マイカーで田舎に向けて出発する。しかしおそろしい渋滞に巻き込まれ、狂気と悪夢の週末旅行がふたりを待っていた......。混沌、混乱が渦巻き、最高にポップでクレイジーな本作は、60年代のゴダールの劇場用商業映画最後の作品であり、ゴダールのヌーヴェル・ヴァーグ期の活力のすべてが結集した傑作と言えるだろう。
「この映画は、公開のときにはあまりヒットしませんでした。でも『中国女』の場合にいくらか似て、その6カ月後に......7、8カ月後に、ある種のこと(「五月革命」)がおこりました。[......]私はいつも、ものごとがおこる以前に、そのものごとに関心をよせていました。旅に出発する前にその旅について語るようなものです。」(「ゴダール/映画史II」、奥村昭夫訳、筑摩書房)
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『右側に気をつけろ』(Soigne ta droite)
1987年/フランス=スイス/82分/カラー/デジタル
出演: ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・ペリエ、ジャック・ヴィユレ、ジェーン・バーキン

ゴダール自身が演じる「白痴」と呼ばれる公爵殿下は、物語を作り、それを映画にし、ただちに首都に届けるように命じられた「白痴」は、自殺志願者の機長が操り、奇矯な登場人物でいっぱいの小型飛行機で出発する。そして自分を異星人でないかと疑う「男」が遭遇する風変わりなシチュエーションの数々。そしてロックバンド〈レ・リタ・ミツコ〉の新作アルバム《The No Comprendo》の録音風景。これら3つの系列が、巧みに撚り合わせられる。
4. モーリス・ピアラ、大いなる心(1925-2003)
おそらく現代の映画作家たちにもっとも影響を与え続け、もっとも敬愛されているフランスの映画作家の一人でありながら、日本ではまだその全貌が知られていない巨匠モーリス・ピアラ。彼の映画は、人間性への深い愛、安直さへの剥き出しの怒りに満ち溢れている。
「あなたの眼差しは、カメラに、女の子や男の子たちを、そして空間と時間と色彩を、血気盛んな子供のように追いかけに行ける大きな心のようだ。」(ジャン=リュック・ゴダール、『ヴァン・ゴッホ』公開時にピアラに宛てた手紙から)

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『私たちは一緒に年を取ることはない』(Nous ne vieillirons pas ensemble)
1972年/フランス=イタリア/107分/カラー/デジタル
監督:モーリス・ピアラ
出演:ジャン・ヤンヌ、マルレーヌ・ジョベール

映画監督のジャンは、6年前からカトリーヌと付き合っているが、いまだに妻のフランソワーズと生活を共にしている。男が女を所有しようとすればするほど、女は男から離れていく。衝突、和解、別れ...。ピアラの自伝的作品であり、『ママと娼婦』と並び、カップルについての映画史に残る傑作。
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『ルル』(Loulou)
1980年/フランス/117分/カラー/デジタル
監督:モーリス・ピアラ
出演:イザベル・ユペール、ジェラール・ドパルデュー、ギィ・マルシャン

結婚して3年目のネリーは、広告業を営む夫のアンドレとのに裕福なマンションでの快適な生活を送りながらも、結婚生活に退屈している。ダンス・パーティーで、ネリーはルルという「ごろつき」と知り合い、ふたりは身体的に強く結ばれてゆく。ユペール、ドパルデューの魅力が余すところなく発揮され、カンヌ国際映画祭にて熱狂的に迎えられた。
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『ヴァン・ゴッホ』(Van Gogh)
1991年/フランス/160分/カラー/デジタル
出演:ジャック・デュトロン、 アレクサンドラ・ロンドン 、ベルナール・ル・コク

映画監督になる前、画家でもあったピアラが最も敬愛していたゴッホを描く。
療養のため訪れたオーヴェルの村。医師ガシェの診察を受けたゴッホは、そこで娘のマルグリットと出会う。美術コレクターでもあるガシェと親しくなった彼は、マルグリットをモデルにした絵を描くために家に通うようになり、やがてふたりは親密さを増していく......。ルノワールを思わせるおおらかで成熟した演出で、ひとりの男の人生の片鱗を見事に描く壮大かつ親密な要素を兼ね備える傑作
5. 世界に開かれるゴーモン 1975年から現在まで
1975年、34歳の若きダニエル・トスカン・デュ・ブランティエがゴーモンのジェネラル・ディレクターに就任し、1985年までロベール・ブレッソン(『たぶん悪魔が』)、ジョゼフ・ロージー(『ドン・ジョヴァンニ』、『鱒』)、モーリス・ピアラのほとんどの作品を自らプロデュースしたほか、イングマール・ベルイマン(『ファニーとアレクサンデル』)、フェデリコ・フェリーニ(『女の都』)、ファスビンダー(『ケレル』)など世界の巨匠たちの作品がトスカン時代のゴーモンによって製作あるいは配給された。ゴーモンは現在でも、大衆的な作品から作家主義的な作品まで、あらゆるジャンル、作風の映画にアプローチし続けている。

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『ラ・ブーム』(La Boum)
1980年/フランス/110分/カラー/デジタル
監督:クロード・ピノトー
出演:ソフィー・マルソー/クロード・ブラッスール/ブリジット・フォセー/アレクサンドル・スターラング

「ブーム」とはパーティーのこと。ブームに誘われることを夢見る13歳のヴィックが、自分の14歳の誕生日ブームを開くまでの物語。リセの新学期(夏のバカンス明け)に始まり、歯科医とイラストレーターである両親の別居騒動、ハープ奏者の曾祖母プペットのエスプリのきいた助言を背景に、ブームで出会ったマチューとの恋模様、春休み明けに自身が開く誕生日ブームまでを描く。本作でデビューしたソフィー・マルソーは日本でも大人気となり、本作も記録的なヒットとなった。
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『鱒』(La Truite de Joseph Losey)
1982年/フランス=日本/104分/カラー/デジタル
監督:ジョゼフ・ロージー
出演:イザベル・ユペール、ジャン=ピエール・カッセル、ダニエル・オルブリフスキ、ジャンヌ・モロー、山形勲

イザベル・ユペール演じる鱒の養殖に携わるヒロイン、フレデリックは同性愛者の夫と結婚しているが、無邪気に男性たちを挑発しては、彼らに身を委ねることがない。フレデリックは、偶然出会った実業家の日本への出張に同行することになるのだが...。「いまの時代には同性愛も異性愛もないわ、ただ性的であるか、どうでないかだけ」このジャンヌ・モローの台詞に象徴される、性と権力を巡る駆け引きと欲望のゲームに、悲劇でも喜劇でもない突き放した視線で見据えるロージー73歳の演出が光る。赤狩りでハリウッドを追われ、イギリス、フランスへと移り住みながら映画を作り続けた異端の巨匠、ジョゼフ・ロージーの晩年の傑作で、撮影は名匠アンリ・アルカン、セットはフランス映画史上最高の美術監督と言われるアレクサンドル・トローネルが担当。原作はロジェ・ヴァイヤン。ちなみに山形勲演じるダイゴのオフィスは、丹下健三設計の青山の草月会館が使用されている。
Querelle, un film de Rainer Werner Fassbinder. (c)1982 Gaumont (France) / Dres. Goring (Allemagne)
『ケレル』(Querelle)
1985分/西ドイツ=フランス/108分/カラー/デジタル
監督: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演: ブラッド・デイヴィス, フランコ・ネロ, ジャンヌ・モロー, ローラン・マレ

ジャン・ジュネの『ブレストの乱暴者』を映画化したR・W・ファスビンダー監督の遺作となったドラマ。大西洋に面した街・ブレストを舞台に、若くたくましい水兵・ケレルを巡って巻き起こる男たちの性と暴力に満ちた愛憎を描く。
© Gaumont
『ベティ・ブルー インテグラル 完全版』(37 2 le matin de Jean-Jacques Beinex)
1986年/フランス/178分/カラー/デジタル
監督:ジャン=ジャック・べネックス
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、ベアトリス・ダル

修理工のゾルグとウエイトレスのベティ。2人は出会い、恋に落ちた。ゾルグが小説家となり、彼の子供を身ごもることを夢見るベティ。しかし、夢がひとつずつ砕けていったとき、ベティの純粋な心は破綻していく...。
世界中にセンセーションを巻き起こした衝撃のラブ・ストーリー『ベティ・ブルー』。本作は約1時間の未公開シーンを復元したノーカット完全版。
© 2012 F comme Film, Ciné@, Gaumont, France 2 Cinéma
『カミーユ、愛はふたたび』(Camille redouble de Noémie Lvovsky)
2012年/フランス/118分/カラー/デジタル
監督:ノエミ・ルボフスキー
出演:サミール・ゲスミ、ジュディット・シュムラ、ヴァンサン・ラコスト

端役ばかりながらも女優として働くカミーユは、25年間連れ添った夫から突然、離婚を切り出され、そのショックから立ち直ろうと、大晦日のパーティーで飲みすぎた彼女は気を失ってしまう。目を覚ますと、彼女は10代の学生時代にタイムスリップ!戸惑いながらもカミーユはふたたび青春を謳歌し始める。
© Gaumont
『愛の犯罪者』(L'Amour est un crime parfait d'Arnaud et Jean-Marie Larrieu)
2013年/フランス=スイス/110分/カラー/デジタル
監督:アルノー&ジャン・マリー・ラリユー
出演: マチュー・アマルリック、カリン・ヴィアール, マイウェン、サラ・フォレスティエ, ドゥニ・ポダリデス

大学教授に忍び寄る事件の影。失踪した女子大生の行方は...?雄大な自然の中で展開する、ミステリアスで哀しい愛の物語。つねにラリユー兄弟の分身、「共謀者」として彼らの映画を支えてきたマチュー・アマルリックが自らの狂気、女性たちの愛欲の中を彷徨う。
「人間の身体を自然の景色の中で描くこと、そして身体を景色のように描くことを意識している」(ラリユー兄弟)
© Gaumont
『呼吸―友情と破壊』(Respire de Mélanie Laurent)
2014年/フランス/92分/カラー/デジタル
監督:メラニー・ロラン
出演:ジョゼフィーヌ・ジャピ、ルー・ド・ラージュ、イザベル・カレ

シャルリは17歳。友情、ときめき、確固たる自信、そして情熱にあふれた年齢。ある日、サラという少女が街にやってくる。美人で、派手で、何か過去がありそうな、個性的な彼女は、たちまちみんなの人気者に。シャルリとサラは急接近するが、その友情は次第に予期せぬ方向へ向かって行く。女優、メラニー・ロランの長編2作目。2014年カンヌ国際映画祭国際批評家週間特別上映作品
© Gaumont
『フランス映画への旅』(Voyage à travers le cinéma français)
2016年/フランス/190分/カラー/デジタル
監督:ベルトラン・タヴェルニエ

映画史に造詣が深いことでも有名な映画監督ベルトラン・タヴェルニエが、人生において記憶に残るフランス映画や監督について語りながら、フランス映画史を旅する。旅はジャック・ベッケルから始まり、ジャン・ルノワール、ジャン=ピエール・メルヴィル、そしてマルセル・カルネへと続いていく。タヴェルニエはジャン・ギャバンへの情熱を表明し、もっとも偉大な俳優と評する。ジョゼフ・コスマや『アタランタ号』のモーリス・ジョベールら偉大な作曲家を紹介しながら、フランス映画音楽へのオマージュも示される。 年カンヌ国際映画祭クラシック部門出品作品。同年ニューヨーク映画祭でも紹介され、話題を呼んだ。




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