ジャンヌ・モロー追悼特集 不滅のスター



美しく、力強い眼差しと一度聞けば決して忘れることのできない声の持ち主、女優ジャンヌ・モロー。ヌーヴェルヴァーグからブニュエル、オーソン・ウェルズ、アントニオーニ、ファスビンダー、オリヴェイラまで、70年もの間、現代映画を牽引した監督たちのミューズであり続けたモローの道程は他に例を見ない類い稀なものでした。2017年7月31日に89歳に他界した20世紀の映画の記憶そのものといえるジャンヌ・モローの代表作を上映し、その不滅の魅力、重要性を確認し、追悼いたします。
2018.1.17 update
2018年1月19日(金)、21日(日)、26日(金)
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
料金:一般1,200円/学生800円/会員500円
開場:各回15分前
※上映当日各回の30分前から上映開始10分後まで。全席自由、整理番号順での入場とさせて頂きます。なお、上映開始10分後以降の入場は、他のお客さまへのご迷惑となりますので、固くお断りいたします。

トークゲスト:須藤健太郎(映画批評家)

公式サイト:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1801190126/
上映スケジュール

1月19日(金)
16:15
パリの灯は遠く
(122分)
19:00
死刑台のエレベーター
(92分)
1月21日(日)
12:00
天使の入江
(85分)
14:15
オーソン・ウエルズのフォルスタッフ
(116分)
17:00
現金に手を出すな
(94分)
上映後に須藤健太郎によるトークあり
1月26日(金)
16:30
天使の入江
(85分)
19:00
ナタリー・グランジェ(女の館)
(83分)
作品ラインナップ

©1954 STUDIOCANAL - TF1 International - Antares Films
『現金に手を出すな』(Touchez pas au grisbi)
フランス、イタリア/1954年/94分/モノクロ/デジタル
監督:ジャック・ベッケル
出演:ジャン・ギャバン、ルネ・ダリー、リノ・ヴァンチュラ、ジャンヌ・モロー

初老のギャング、マックスは、親友のリトンと組んで、5千万フランの大金強奪に成功した。愛人を通じて事件の真相を敵対するギャングは、リト ンを捕らえマックスから金を奪おうと画策する。男たちの友情、そして老いを描いたベッケルの傑作フィルム・ノワール。映画女優としてデビュー したてのモローは、ふたりの男の間を行き来し、自らの魅力にまだ無頓着なまま、犯罪に関わる男たちの運命を翻弄し、闇の中の壮絶な闘いへと導 いてしまうコケティッシュな踊り子を演じている。
©1958 Nouvelles Editions de Films
『死刑台のエレベーター』
(Ascensuer pour l'echaud)
フランス/1957年/92分/モノクロ/デジタル
監督:ルイ・マル
出演:ジャンヌ・モロー、モーリス・ロネ、ジョルジュ・プージュリ、リノ・ヴァンチュラ、ジャン=クロード・ブリアリ

社長の側近として手腕を発揮していたジュリアンは社長夫人のフロランスとの不倫の果てに、夫を自殺に見せかけて殺害。完全犯罪を成し遂げたかに思えたが、証拠隠滅のため再び犯行現場に戻ったところ、エレベーター内に閉じこめられてしまう。
ノエル・カレフの小説を元に、ルイ・マル監督が弱冠25歳で手掛けた犯罪サスペンスの傑作。マイルス・デイヴィスが即興セッションで仕上げた音楽も本作を忘れがたいものにしている。連絡の取れない愛人を探して、愛情と疑いを胸に夜のパリをさまようモローの姿は美しく、あてどなく街を彷徨する現代的女性として、多くの映画人、映画ファンの記憶に刻まれ、数年後にアントニオーニの『夜』(61)へと出演する。
『天使の入江』
(La Baie des Anges)
フランス/1963年/85分/モノクロ/デジタル&35mm
監督・脚本:ジャック・ドゥミ
出演:ジャンヌ・モロー、クロード・マン、ポール・ゲール

パリの銀行員ジャックは同僚の影響でギャンブルに染まり、厳格な父から勘当され、ニースへ。通称"天使の入江"のカジノに通い、ある日いわくありげなブロンドの美女ジャッキーと出会う。ギャンブルに魅せられた男女の、エレガントでデカダンな夏の逃避行を描く愛のドラマ。二人を繋ぎとめるのは、ルーレット任せの偶然?それとも、愛?南仏のひとけのない海岸、アイリスから広がるジャンヌ・モローの姿、それはミシェル・ルグランのテーマ曲を従えながら、永遠に続くキャメラの後退運動によってやがて路上のうちに消え去る。今回は特別に35ミリとデジタルリマスター版の両方で上映する。
©Mr. Bongo Worldwide 2015 All Rights Reserved.
『オーソン・ウエルズのフォルスタッフ』(Falstaff)
スペイン、スイス/1965年/116分/モノクロ/デジタル
監督・脚本:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ、キース・バクスター、ジョン・ギールグッド、ジャンヌ・モロー

『ヘンリー4世』『リチャード2世』などシェークスピア作品でお馴染みの脇役フォルスタッフ、大酒呑みで女たらしの大ボラ吹きの追い剥ぎで、けれども憎めない巨漢の老騎士をウェルズが堂々とした体躯で演じた傑作。合戦場面の暴力描写は、映画史上特筆に値する。モローは野生的な娼婦ドルを妖艶に演じている。早熟な天才映画監督ウェルズの作品をその初期から支持していたモローは彼のミューズ、そして生涯の友人のひとりとなる。本作は『審判』(62)に続きふたりがタッグを組んだ作品で、その後68 年に『不滅の物語』が撮られる。
『ナタリー・グランジェ(女の館)』(Nathalie Granger)
フランス/1972年/83分/モノクロ/16ミリ
監督・原作・脚本/マルグリット・デュラス
出演:ルチア・ボゼー、ジャンヌ・モロー、ジェラール・ドパルデュー

イタリア人女性とその女友達が過ごす昼下がり。娘ナタリーは暴力的な行動がもとで退校させられようとし、ラジオからは逃走中の未成年殺人者のニュースが。そこにセールスマンが不意に現れる。外と内が通底する空間としての家。日常の繰り返しの中で洗練された女性たちの動きの簡素さが何とも美しい(デュラスは後に、モローのテーブル上のパン屑を拾い集める仕草の敏速さ、美しさに感嘆した)。
『パリの灯は遠く』(Monsieur Klein)
1976年/フランス/カラー/122分/デジタル
監督:ジョゼフ・ロージー
出演:アラン・ドロン、ジャンヌ・モロー、シュザンヌ・フロン、ミカエル・ロンダル、ジュリエット・ベルト

1942年3月、ドイツ軍占領下のパリ。人々は暗く沈んでいたが、美術商ロベール・クラインは、裕福なユダヤ人たちが手放さざるを得ない美術品を安く買いたたいていた。ある朝、彼の元にユダヤ人コミュニティの情報紙"ユダヤ通信"が送られてくる。なぜ、ユダヤ人ではない自分宛に送られて来たのか?自分と同姓同名の人間がいて、その男がユダヤ人だとしたら...。すでに『エヴァの匂い』(62)、そして『鱒』(82)でロージー作品に出演しているモローは、短い出演ながら、その超然とした美しい表情の下にすべてが隠されているかのようであり、ドロン演じる主人公の後戻りができない道程が暗示される。




ジャンヌ・モロー追悼特集 不滅のスターについて、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





Comment(0)

印刷