OUTSIDE IN TOKYO
BI GAN Interview

ビー・ガン『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』インタヴュー

3. ゴダールのような巨匠で大先輩にあたる世代の方が、こんなにまだフレッシュな思考、
 柔軟な感覚の持ち主で、こういった創作力を持ち得ているということに、僕は凄く感銘を受けました

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OIT:様々なインタヴューや記事などで監督が影響を受けた名匠の名が挙げられています。ウォン・カーウァイ(王家衛)、アンドレイ・タルコフスキー、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)、デヴィッド・リンチといった人たちですが、なるほどと思いながら同時に、監督の映画を拝見していると“詩”との関係が、ジャン=リュック・ゴダールのことを想起させられました。ジャン=リュック・ゴダールは監督にとってどのような存在でしょうか?
ビー・ガン:そうですね、今名前を挙げて頂いた先輩方というのは本当に数々の名作を残している素晴らしい監督たちですから、私も彼らから多くのことを吸収し、自分の作品を世に生み出していきたいと思っています。ただひとつ言えるのは、それぞれの先輩が生きた世代や時代背景が違うということです。彼らがその時代に適した製作方法、それは機材を含めの話ですけれども、そういったことを僕が技術的なことで何かを継承しているというよりは、彼らの作品に対する態度であったり、精神性において、僕は彼らから何らかの恩恵を受け継いでいるということです。そしてゴダールについてですが、最近のゴダールの作品で印象に残っているのは、これはとある芸術祭の宣伝のために作ったドキュメンタリーのフィルム(2018年にチェコ共和国で開催された「Ji.hlava International Documentary Film Festival」のために作られたショートフィルム)だと思うのですが、具体的な内容はさておき、僕は映像の中にある、とあるシーンに感動をしました。スマホのアルバムの写真を見る時って、こういう風に指でスライドしていきますよね?そのスライドをする時に、その下に時間軸が映っていたんですね。とても流動的な映像であると同時に写真の美しさが際立つ映像なのですが、最初に思ったのは、ゴダールのような巨匠で大先輩にあたる世代の方が、こんなにまだフレッシュな思考、柔軟な感覚の持ち主で、こういった創作力を持ち得ているということに、僕は凄く感銘を受けました。また彼がその作品でそうした感覚を持ち得たのは、僕が見た限りでは、何か最新のものを見せつけるために作ったというよりは、本当にその作品の精神性に合うからこそ、スマホを使ったということが見てとれました。そして、今のゴダールほどの年齢に達した時に、僕自身が、まだ彼のような創作力を持ち続けた監督で居続けられるだろうかと思うと、この場で肩を並べて名前を挙げて頂くのは、本当に恐縮な感じがしてしまう程です。

OIT:今は新作の準備中なのですか?
ビー・ガン:今は丁度、脚本を書いているところです。まだ僕も周囲の皆も、暫く消化期間が必要です。

OIT:まだその先のスケジュールはまだ分からないという状態ですか?
ビー・ガン:早ければ、2021年には撮影に入りたいとは思っています。

OIT:次の作品も凄く楽しみにしています。



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