OUTSIDE IN TOKYO
Ildiko Enyedi INTERVIEW

イルディコー・エニェディ『心と体と』インタヴュー

2. マーリアとエンドレは、
 コミュニケーションが上手く行かないという問題を抱えていたので、
 現実の状況と演出の意図が合致しました

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OIT:マーリアを演じたアレクサンドラ・ボルベーイとクラーラを演じたレーカ・テンキ、二人の女優が大変素晴らしかったです。まずは、アレクサンドラ・ボルベーイについてお聞きしたいのですが、彼女をどのようにして発見したのでしょうか?
イルディコー・エニェディ:アレクサンドラのことは学生の頃から知っていて、劇場に出ていて注目されている俳優でした。私は、彼女には才能があると思っていて、彼女のキャリアをずっとフォローしていたのです。それで今回、彼女に手紙を書いて、出演をオファーしました。最初は精神科医の役を考えていたのですが、結局、マーリアの役をやってもらうことになりました。それで初めてこの作品の予告編が公開された時、ハンガリーで彼女のことを知っている人が見ても、誰もそれがアレクサンドラだとは気付かなかったのです。彼女のボーイフレンドさえも(笑)。アレクサンドラは本当にマーリアに変貌を遂げていたのです。

OIT:もうひとりの、精神科医役をやったレーカ・テンキも非常に良かったのですが、彼女の役柄というのは、結果的には二人を出会わせる愛のキューピッドのような役割を果たしていましたね。
イルディコー・エニェディ:その通りですね。彼女がいなければ、お互いが同じ夢を見ているということも知らずに、二人は別れ別れに暮らしたまま、死んでいたかもしません。

OIT:もうひとりの主人公エンドレを演じているのは、プロの俳優ではなく、編集者だと聞いています。彼に関してはどのようにキャスティングを決めたのでしょう?
イルディコー・エニェディ:エンドレ役を演じられるハンガリー人のプロの俳優がいないことは分っていたので、誰か演じることが出来る人を探す必要がありました。それで何の手掛かりもなく困り果てていた時に、彼のことが心に浮かんだのです。本物のカリスマ性を備えていて、ユーモアのセンスがあり、人生の全てが現れているような顔の持ち主、ゲーザ・モルチャーニは私の唯一の選択肢でした。ですから、彼がこの役を引き受けてくれなかったら一体どんなことになっていたか、私には想像もつきません。彼はとてもシャイな人ですから。

OIT:現場ではいかがでしたか?難しことがあったり、あるいは、思ったよりスムースに撮影が進んだのでしょうか?
イルディコー・エニェディ:彼はとても自分を律していて、台詞もちゃんと覚えて、充分に準備をして現場に臨んでくれました。私たちは一日12時間撮影をしていましたので、とてもタフで緊張感のある現場でしたが、プロの俳優を演出する場合とアマチュアの俳優を演出する場合とでは、自ずとやり方が変わってきます。一般的に、プロとアマチュアが一緒にやる場合は、プロの方がいつでも苦労をするものです。なぜなら、プロはマチュアの俳優を助けることが出来ますが、その逆はないからです。ですから通常、私は彼ら/彼女らを分けて別々に演出するのですが、今回は作品の性質上、一緒に演出をすることにしたのです。マーリアとエンドレは、コミュニケーションが上手く行かないという問題を抱えていたので、現実の状況と演出の意図が合致したわけです。



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