「製作期間7年、作画枚数10万枚、CG全盛の時代に、背景までも手描きにこだわった究極のアニメーション映画誕生!」とのフレコミだけでは、アニメーションに詳しくない私にはあまりピンと来なかったのだが、冒頭のシーンだけで2年かかっちゃいました、とあっけらかんと語る小池健監督を目の前にすると、CG全盛の今だから、あえてこのようなスタイルで自らの“美学”を貫きました、というような“クールさ”ではなく、こういう風にしか出来ないのでこうなったという感じの“潔さ”が伝わって来る。そして、その“潔さ”が、そのまま本作のメインキャラクターJPに投影され、『REDLINE』全編を支配する、ある種の爽快さを生み出していることは本作を観れば明らかだ。
しかし、そんな爽快感を漂わせるジェットコースタームービー『REDLINE』の中で、一際異彩を放つサブ・サブキャラクター群の存在こそが私には“映画”そのものに見えた。冒頭から“アニメーション”の門外漢であるとお里が知れる、タランティーノの『キル・ビル』から質問に入るという凡庸さを軽く受け流してくれた小池健、石井克人両氏に感謝申し上げる。
1. あまり映画を観ない人たちも観てくれるような映画を作りたかった |
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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):タランティーノの『キル・ビル』に参加した後に、アメリカの都会ではなく、地方に住んでいるような人達がスカッと楽しんでくれる、そんな映画を作りたいと思ってこのプロジェクトがスタートしたと伺っています。 石井:色々な思いはあったんですけど、全然映画とか観ない人が観てくれるような映画を作りたいなと。それまでは結構マニアックなものばっかり作っていて、あまり映画を観ないという人達の目に触れることがなかった。でもそういう普通の人達が、たまに観たらすごく面白かったって思ってくれる物を作ってみたいという気持ちがあった。あとは、僕が子供の頃に影響を受けたのがアニメだったので、僕の子供の頃に見せたいっていうか、それは今の子供達にも見せたいっていうことなんですけどね。そういう意味で大きいテーマを持ったエンターテイメントが出来ないかなと思っていたら、友達のプロデューサー、木村(大助)君から小池さんありきで何かやりましょうっていう話があった。僕も木村君も小池監督とは仕事をしていて小池監督の実力は十分知っていたし、一番勢いのある人だなって思っていたんで、是非やりたいということで、小池監督に企画書を出したんです。企画書とキャラクター表とか、あとレースの仕組みとか。REDLINEとは何かとか。その前に『TRAVA FIST PLANET』っていうSFアニメの作品を作ってるんでその世界観なんですけどね、大元は。『TRAVA FIST PLANET』の設定のその10年くらい前の話っていうのが『REDLINE』の話なので。
OIT:このプロジェクトに7年間という時間を費やしたということですが、例えばその間に3Dが一般的になったり、色々な技術的な変化が起こったと思うんですけど、そういう事態を傍目で見ながらどういう感覚でやっていたのでしょう?
小池:単純に労力的にかかったということで、僕が読み切れてなかった部分なんです。きっと3年くらいかなって自分では思ってたんですよ。実力的にも集中的にもそのくらいが限界かなって思ってたんですけど、やり始めると僕は映画監督でもあると同時にアニメーターなんですね、もともと。だから僕が声をかけて参加してくれるメンバーってみんな僕より上手く描くんだって感じの力自慢が集まってくるんで、どんどん、どんどん内容が濃くなってくるんですよね。そうするとやっぱり1カットにかかる時間がどんどん増えていく。冒頭のシーンだけで2年かかっちゃった。それを見ると僕が作りたい画面ていうのはこういうことなんだってみんな分ってくれて、このクオリティで作るんだってことで賛同してくれて作ったら7年かかっちゃった。だから全く何かで悩んだとかではなく、ひたすら描き続けてかかった時間なんです。 OIT:その間、石井さんとの絡みは?
小池:石井さんが作ったキャラクターを僕がアニメーションにおこして、シナリオ書いて頂いて、そのシナリオをもとに僕は絵コンテを描くんです。絵コンテをもとにビデオコンテを石井さんの方で作成して頂いて、
石井:仮の映画を作るんですよ。
小池:それを検証してカットする部分はカットして、付け足す部分は付け足して大体最終型を作っておくと。そこからは僕の作業となり、ひたすら描くので出来るまで待って下さいと、4年間も待ってもらった。その4年間は本当にこちらだけの作業になるんですよね。終わったらまた石井さんに投げて音響作業の方を仕切ってもらう形でバトンタッチする。本当によく待ってくださいましたという感じで(笑)。
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『REDLINE』 10月9日(土)より全国ロードショー 監督:小池健 原作・脚本・音響監督:石井克人 製作:二宮清隆 企画:丸山正雄 エグゼクティブプロデューサー:福島正浩 プロデューサー:吉田健太郎、小池由紀子 アソシエイトプロデューサー:木村大助 脚本:榎戸洋司、櫻井圭記 音響監督:清水洋史 音響効果:坂本典之 音楽:ジェイムス下地 アニメーション制作:マッドハウス 声の出演:木村拓哉、蒼井優、浅野忠信、我修院達也、岡田義徳、津田寛治、森下能幸、AKEMI、青野武、廣田行生、石塚運昇、三宅健太、石井康嗣、チョー、堀内賢雄 2010年/日本/102分/カラー 配給:東北新社 © 2010 石井克人・GASTONIA・マッドハウス / REDLINE委員会 『REDLINE』 オフィシャルサイト http://red-line.jp/index.html |
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