OUTSIDE IN TOKYO
KORNEL MUNDRUCZO with KATA WEBER INTERVIEW

コーネル・ムンドルッツォ with カタ・ヴェーベル
『ジュピターズ・ムーン』インタヴュー

3. ハンガリーの映画作家達は、ユニークな形の映画作りに常に渇望感を抱いています

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OUTSIDE IN TOKYO:全部ハンガリーで撮影されたのですか?
コーネル・ムンドルッツォ:全部ブタペストで撮っています。
OUTSIDE IN TOKYO:ハンガリーの現場で全部こうした撮影が出来てしまうわけですね。
コーネル・ムンドルッツォ:全部ハンガリー国内でスタッフィングもしています。私がむしろ彼らから学ぶことがとても多く、ここ15年ほどハンガリー国内の映画作りの技術というのは飛躍的に向上しています。ハリウッドを始めとして、北欧映画、テレビシリーズなど、色々な作品の撮影が行われている所以です。加えて、ハンガリーの映画作家達は、ユニークな形の映画作りに常に渇望感を抱いています。全ての面で技術のあるスタッフ、才能のある人々がいるからこそ、こうしたクリエイティブな映画を作ることが出来て、彼らのクリエイティビティなしでは『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』や『ジュピターズ・ムーン』のような映画は作れません。ビジョンは私たちにあったとしても、それを形にしてくれるコラボレーターがいなければ作品は出来ないわけですから、レベルの高い才能が国内にいてくれたことに本当に感謝しています。今回使った技術は全てこの映画のために開発していったもので、既存の技術ではありません。テーマに合わせて、ストーリーに合わせて私たちが発見、発明していったものなのです。
OUTSIDE IN TOKYO:ハンガリーの著名な映画作家タル・ベーラからの影響は受けていますか?
コーネル・ムンドルッツォ:間違いなく影響を受けています。自分はハンガリー人の映画作家であるというアイデンティティを常に持ち続けています。ハンガリーでは、1920年代から非常に長い間、映画に対する愛と歴史が受け継がれていて、それはとても素晴らしいことです。40年代のハリウッドも半分くらいはハンガリー出身の映画人で、ウィリアム・フォックスやサミュエル・ゴールドウィン、マイケル・カーティスもハンガリー出身です。その後の共産主義の時代においても、タル・ベーラ、ヤンチョー・ミクローシュといった名だたるアイコンと呼べるような映画監督を輩出していて、その長い映画の歴史は私たちにとって大いに役立っているし、多くを学んでいます。長回しの撮影スタイルや詩情があること、不条理な面があるということは、そうした伝統からきていると思うと同時に、それがハンガリーらしさ、もしくはハンガリーならではのものではないかもしれないけれども、ハンガリーの魂の一部であることは間違いがない。面白いのはヌーヴェルヴァーグとかルーマニアのニューウェーブと言われるものは、一つのフォルムがあって、何となくタイプが似ていますよね?それがハンガリーでは意外とないのです。だから共通としたフォルムはないけれども、恐らく、伝統というもので一つに括られるようなものがあるのだと思います。
OUTSIDE IN TOKYO:映画を学んだのはハンガリーですか?あるいはフランスなどの外国でしょうか?
コーネル・ムンドルッツォ:ハンガリー国内のブタペストの映画学校です。そこで、すごく大きな影響を受けたし、映画作家を育てようという方針があったので、僕達にもオリジナルのストーリーを自分で作り出すよう背中を押してくれたのが凄く良かった。逆にテレビの演出とかには向いてない(笑)、そういうルールは教えてくれませんから。
OUTSIDE IN TOKYO:エンディングの隠れんぼのシーンですが、余韻が残って良かったですね。
コーネル・ムンドルッツォ:私たち、二人ともそのシーンを気に入っているのですが、最後の台詞は、隠れんぼをする時によく言われる言葉で、「準備が出来ていても、出来ていなくても行くよ」というものです。この言葉がまさに今のヨーロッパ、ハンガリーの現状を表現していると思うんです。私たちの準備が出来ていようがいまいが、そういうことがやってくるんだと。
カタ・ヴェーベル:実際にこれは難民キャンプで見た光景だったのです。それぞれ出身国が違う子供たちがブロークンな英語で、一緒に隠れんぼをして遊んでいる、その場面から想起したものです。その土地の母国語は喋れなくても、自分達の宗教、出身国が違っても、みんな楽しく繋がって、人と人と子供たちが遊んでいた、その光景に私達はとても意味深いものを感じたのです。
コーネル・ムンドルッツォ:シュテルン医師のアパートの壁にかかっていた絵でもヒントが示されています。ハンガリーで有名なAtilla Szucsという画家の作品です。


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