OUTSIDE IN TOKYO
OHATA HAJIME INTERVIEW

長嶌寛幸の轟音サウンドトラックと共に、54分間を一気に駆け抜ける複合ジャンル映画の秀作『へんげ』は、むしろ手固い作りで観るものの”自主映画”への偏見を心地よく揺さぶってくれる。「自主映画なんて作る時点で迷惑だ」という極めて真っ当な感覚を持ちながら、その慎ましさが、自主映画だからこそ観る人を楽しませなければいけないというベクトルで、表現として結実していくさまは、さながら『へんげ』の夫婦が遂げていく変貌を目の当たりにするようなスリルを感じる。観客を楽しませるジャンル映画の監督として、これからの活躍が期待される大畑創監督のインタヴューをお届けする。

1. 『狂気の海』に参加した経験から、
 思いついたラストシーンは、出来るだろうくらいの感じで作り始めた

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OUTSIDE IN TOKYO (以降OIT):映画を拝見させて頂いて、始まりからですね、黒バックにタイトルが出て音が鳴り始めたところから、場の雰囲気が変わったというか。
大畑創(以降大畑):あそこからですか?

OIT:あー!始まるなーという登場感があって、一気にのめり込んでいける感じがありました。
大畑:あの音一発で。

OIT:まずは音一発でしたね。長嶌さんのことも後でお伺いしたいんですけれども。前作は映画美学校の修了制作『大拳銃』が2008年、『へんげ』が出来たのが2011年ということですね。どういうプロセスで出来たのかを教えて頂けますか?
大畑:『大拳銃』を作った後、『怪談新耳袋』っていうのをやらせてもらったんですけど、テレビで放送される5分のホラードラマでした(※「庭の木」DVD発売中)。でもその後、すぐまた監督としての仕事が入ってくるってわけでもないので、やっぱりまた自分で一から自主映画としてやるしかないなあってことで、やってみようと。

OIT:まず最初に、お話しをシノプシスレベルでシステマティックに考えた、と聞いたのですが。
大畑:そうですね、シノプシスにもいかないような、ノートにどんな人物がいてみたいな箇条書きで書いたようなものだったんですけど。

OIT:しばらくしてエンディングを閃いて、一気にいけるんじゃないかっていう感触をお持ちになったっていうことを、仰ってますが。その前に、これが映画になる、形になるっていう、例えば、お金の面ですとか、そういうことはどういう風に解決したのでしょう?
大畑:本当にその辺は自主映画の強みかもしれないですけど、どうにかなるだろうくらいのノリで最初は作り始めてたんです。もちろんラストシーンは思いついてたんですけど、大変なことにはなるだろうけど、だからこそ面白くなるんじゃないかと思ってました。『狂気の海』(07)っていう高橋洋監督の映画があって、映画美学校で作られたものですが、僕もそれに美術のスタッフとして参加したんです。それも特撮が結構ある映画で、思いついたラストシーンは出来るっちゃー出来るだろうなくらいの感じで作り始めたんです。

OIT:『へんげ』は、プロデューサーのクレジットがないのですが。
大畑:いないんです。

OIT:てことは、かかった費用とかっていうのは?
大畑:バイトで。

OIT:ご自分で?
大畑:はい、お金貯めただけです。

OIT:それは、いずれ撮りたいと思っていたから何年間か貯めていたとか?
大畑:いえ、作ろうと思ってから貯め始めただけですね。

OIT:もう完全に自主というか、ご自分のお金で、懐から。
大畑:まあ、まだ借金がありますけど(笑)。

OIT:じゃあ、この作品が、上映されて、お客さんがちゃんと入ってくれると次のも撮れるかもしれない。
大畑:かもしれないですね。

『へんげ』

2012年3月10日よりシアターN渋谷ほか全国順次公開!

監督・脚本・編集:大畑創
音楽:長嶌寛幸  
特技監督:田口清隆  
撮影:四宮秀俊  
照明:玉川直人、星野洋行  
録音:高田伸也、新垣一平、根本飛鳥  
特殊メイク:宇田川祐  
美術:伊藤淳、間野隼人、福井早野香  
衣装:加藤麻矢  
助監督:川口陽一  
制作:名倉愛、藤岡晋介、加藤綾佳
出演:森田亜紀、相澤一成、信國輝彦

©2012 OMNI PRODUCTION

2011/日本/54分/カラー
配給:キングレコード

『へんげ』
オフィシャルサイト
http://www.hen-ge.com
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