OUTSIDE IN TOKYO
Ounie Lecomte INTERVIEW

父親との楽しい遠出。そう信じていた特別な一日が、少女、ジニにとっては別の意味で特別な日になってしまう。楽しい時間を過ごした後、気づくと、彼女は父親とある建物の門前に立っていた。そしてすぐ戻ると言った彼女を置いたまま、父親が戻ることはなかった…。

父親が迎えにくることを信じて殻に閉じこもり、他の子たちと交わることを頑なに拒否するジニだったが、一人の少女と友情が芽生えたのを境に、変わり始める。だがその矢先にその少女が養子縁組で孤児院を出ると、ジニはまた一人になる。そしてジニもまた新しい家族と共に孤児院から旅立ちの日を迎える…。

これは韓国生まれ、フランス育ちのウニー・ルコントの自伝的背景を含んだ処女長編である。孤児院からフランス人の里親に引き取られ、以降フランスで教育を受け、育ってきた彼女自身の体験をベースにしている。言葉少ない少女の目から浮かびあがる感情。喜び、悲しみ、喪失感、怒り、諦めなど、ジニ役のキム・セロンの自然な演技が光る、抑制のきいた素晴らしい映画だ。そんな自身の体験を韓国人の少女に投影しながら撮影した新人監督、ウニー・ルコントが真摯に話してくれた。

1. 喪失や別離についての自分の体験から書くべきだと、自分の無意識が訴えていることを感じた

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Outside In Tokyo(以降OIT):まず、日本で映画が公開されることについてどう思いますか?
ウニー・ルコント Ounie Lecomte(以降OL):(笑)とてもうれしいわよ。映画の宣伝来日が公開の2ヶ月前だから、観客の反応が見られないのは残念だけど、まあ、(参加した)東京国際映画祭で少し見れたから…。とにかく、とてもうれしい。プレスの反応もまずまずのようだし(笑)、うまくいくといいわ。

OIT:このストーリーにあなた自身の背景が入っていることを誰もが聞くと思うのですが。
OL:うん、そうね。

OIT:それを映画に持ち込もうと考えた時の最初の衝動を覚えていますか?
OL:そうね。それはわりと簡単なことで、ある日、目を覚まして、自分の物語を書いてみたいと思ったわけではないの。そういう風に始まったわけじゃなくて、実際はもう10年以上も前に、劇映画の脚本を書きたいと思って、なんとなく、いくつかのシーンを書き始めたのがきっかけなの。その頃、父親と休暇に出かける予定だった小さな女の子の物語を書いて、舞台はフランスだった。完全にフィクションで。それで10〜15ページまで書いた途端、それ以上書き進められなくなったの。その物語では、彼らはビーチに休暇で出かけ、父親が泳ぎに行ったまま忽然と姿を消してしまうの。戻ってこないの。そして少女は一人残されてしまう。突然ね。父親は消えてしまったの。でも実際、それから10年、そのシーンから先に進めなくなってしまった。10年が経過して、再び読み返し、その物語には既に取り残されたという体験からくる感情が入っていることに気がついたの。そして喪失や別離についての自分の体験から書くべきだと、自分の無意識が訴えていることを感じたの。そうやって始まったの。

OIT:すると最初に書いた物語はフランス人の、白人の少女だったということ?
OL:そうなの。

OIT:なぜそれが映画でなければならなかったんですか?つまり、小説でも成立する可能性はあるわけですよね?
OL:そうね。なぜ映画か…。たぶん、映画に元々興味があったし、映画が好きだからってだけだと思う。私は19歳の時から映画の仕事に携わってきたの。最初は映画が好きということから入った。というのは、様々な国や文化から出てくる映画を見ること。そんな多くの映画に心を動かされた。もちろん、文学も絵画もそうだったけど、映画には何か特別なものがあると感じた。つまり、映画には現在を映し出す何かがあると。映画を見る時、そこで起きていることを、映画と一緒に生きることになる。それは映画に特化したものだと思う。そしてそれが映画に共通言語性を与えているの。そうやって分析することもできるけど、ある意味、映画に魅了されたのは、もしかしたら、自分が言葉を失うという体験をしているからかもしれない。私が自分の母国語を失っているから。もう韓国語は話せないの。9歳か10歳まで韓国語を話していたはずなんだけど、フランスに移り住んだ時、それは完全に失われてしまった。かと言って、私のフランス語もね…。もちろんフランス語自体も、フランス文学も好きだけど、それでも言葉に埋められない何かを感じるの。そしてもちろん、映画でも失うものはあるけれど、また少し違うわね…。

OIT:言語以外の色々な方法で物事を表現できますしね。
OL:そうなのよ。

『冬の小鳥』
仏題:Une Vie Toute Neuve

10月9日(土)より、岩波ホールにてロードショー

監督・脚本:ウニー・ルコント
プロデューサー:イ・チャンドン、ロラン・ラヴォレ、イ・ジュンドン
エグゼクティブプロデューサー:パク・ヒョンテ
共同エグゼクティブプロデューサー:ソ・ヨンジュ
アソシエイトエグゼクティブプロデューサー:キム・ヨンドン、イ・ビョンウ
アソシエイトプロデューサー: シン・ヘヨン、キム・ソンファン
ラインプロデューサー:イ・ドンハ
撮影:キム・ヒョンソク
照明:キム・ミンジェ
美術:ペク・ギョンイン
録音:チェ・ジェホ
衣装:クォン・ユジン
編集:キム・ヒョンジュ
音楽:ジム・セール
音響:イ・ソンジン、エリック・ルザシェ
出演:キム・セロン、パク・ドヨン、コ・アソン、パク・ミョンシン、オ・マンソク、ソル・ギョング、ムン・ソングン

2009年/韓国、フランス/92分/カラー/ドルビーSRD
配給:クレストインターナショナル

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『冬の小鳥』
オフィシャルサイト
http://www.fuyunokotori.com/
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