OUTSIDE IN TOKYO
PARK CHAN-WOOK INTERVIEW

パク・チャヌク『イノセント・ガーデン』インタヴュー

5. 今までの作品はほとんどストーリーボード通りに撮れていたが、
 『イノセント・ガーデン』は最も後で色々と変わった作品です

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Q:今回アメリカで初めて作られていかがでしたか?
パク・チャヌク:撮ってる間はこのままこんな風に忙しく撮っていて、後でこれを編集室に持っていった時に困らないかなと凄く心配していたんです。というのは、現場で一つ一つ全部確認する暇も無かったので、十分に確認出来ないまま次に進んでいって、なんとか撮り終えたっていう感じだったんですよ。でも最終的に編集室に持って行った時に何の問題も無かったので良かったなと思ってます。ただ撮ってる時には本当に不安でした。

Q:今回は違うのかもしれないですが、今までの映画で編集をすることで、自分の映画を発見するというようなことはありましたか?
パク・チャヌク:どんな面でですかね?演技とか?

Q:はい、撮っていて現場で例えば台詞を増やしたり、そういう現場で起きたことをその後編集で繋いでいく時に、これは入れないけれどもこの要素は残しておこうとか、編集で映画は変わると思うんですけれども。
パク・チャヌク:今の質問を考えてみると、今回の『イノセント・ガーデン』が後になって色々な要素が変わった作品だと言えるんですよ。というのは、今までの作品はほとんどストーリーボード通りに撮れていたんですね、最初にストーリーボード作ってしまって、もう現場に行ったらその通りに撮るっていうやり方だったんですが、今回はアメリカでなかなか計画通りに進めるっていうのが難しかったので、ストーリーボードもその都度ちょっと変えなきゃいけないっていうことが多かったんですね、ちょっとショットを減らしたり。それぐらい撮影期間が短かったので、そうせざるを得なかったんです。実は、新たに気付いたというよりも、本当に大きくがらりと変えたのがエンディングなんです。私がシナリオを直しながら考えていたのは、最後にミアさんがニューヨークに行くっていうところです。チャーリーのお兄さん、つまりミアのお父さんが君の為にニューヨークにアパートを用意したよっていう台詞がありますね、だからミアはそのニューヨークのアパートに行くっていう設定にした。マンハッタンで彼女は望遠鏡を覗いて町並みを見ている、観察しているインディアで終わる、そういう風に終えることによって、もしかしたら彼女が、無差別殺人を起こすんじゃないかっていう、そんな想像を皆さんに与えるっていうことも出来たと思うんです。ところが実際出来なかった理由っていうのが、そのニューヨークのアパートのシーンを撮る時間もなければ予算もなかった。それと観客の立場で考えた時に、いきなり大都市が出てきてしまうと、観客はまた最後にそんなの見せられても、急に違う映画になったようが気がして戸惑ってしまうのではないかなと思って、結局ニューヨークで撮ることは諦めました。私は、従来、撮り方は全部最初に組み立てるんですね、計画を立ててその通りに撮影する、編集もその通りに編集するという方法でやってきたものですから、どういったショットで終えるのかが分からないまま撮ったのは始めてでした。保安官を殺して終わる、それだけしか決まってないっていうのは本当に初めてだったんです。でもそこでちょっと新たな発見があったんですけど、最後に花に血が吹き飛ぶじゃないですか、編集でそのシーンを見ていた時に、あ、自分はこれに魅了されているということに気付いたんです。花に血が飛んだ、そこに凄く惹かれたんですよ。花と一緒に、偶然、蜂が映っていたんですけど、あれは偶然なんです。偶然撮れて、しかもその蜂が交尾中だった。もしかしたら蜂じゃないかもしれないですけど、蜂に似た、なんらかの虫でした。それにもまた私は惹かれてしまって、よし、これで終えようと思いました。ただここで終わったら観てる人は、いきなり終わった感があって、これで終わり?って思われると思ったんで、オープニングを変えるようにしたんです。観ている人は、最後とプロローグが繋がっていれば、皆さん、うーんって頷いて受け入れてくれると思いましたから、オープニングをまた新たに付け加えたんです。あそこのオープニングは脚本に無かったもので、ボイスオーバーの台詞も新たに付け加えたものなのです。


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