OUTSIDE IN TOKYO
Samuel Benchetrit INTERVIEW

サミュエル・ベンシェトリ『アスファルト』オフィシャル・インタヴュー

2. ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、マイケル・ピット、イザベル・ユペール、
 そして、息子のジュール・ベンシェトリ

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Q:『アスファルト』を製作するにあたり、最初に頭に思い浮かんだ俳優は誰でしたか?
サミュエル・ベンシェトリ:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキとマイケル・ピットの2人は、ごく初期の段階からずっと考えていたよ。ヴァレリアとは長い間、一緒に仕事がしたいと思ってきたしね。彼女は僕を深く感動させてくれる女性だ。彼女が出演した作品を観る時、いつも彼女が早く出てこないかと待っている自分がいる。彼女が登場すれば間違いなく何かが起こると分かっているからね。だから、僕は、ヴァレリアが『アスファルト』で登場するたびに間違いなくこの作品に息吹を吹き込んでくれると確信していた。たとえ彼女の演じる看護師のシーンが数シーンしかないとしても。彼女の美しさ、熱さ、苦悩を見るたびに、同じ空間にいられることにいつも幸運を感じていたんだ。

Q:マイケル・ピットを団地の屋上に落ちてくる宇宙飛行士役に選んだ理由は?
サミュエル・ベンシェトリ:マイケルはとても素晴らしい俳優だ。現場で彼は常に新しいアイディアを模索し、提案してきてくれる。彼は仕事中毒の俳優で、彼が演じると役に信じられないほどの力強い存在感が加わる。この宇宙飛行士役に、彼以上の役者は考えられなかった。そして切り札になったのが『J'ai toujours rêvé d'être un gangster』がサンダンス映画祭で賞を獲ったという実績。これが僕にとって新たな扉を開くきっかけとなった。3人の俳優に脚本を送ったところ、最初にイエスと返事をくれたのがマイケルだったんだ。

Q:なるほど。イザベル・ユペールがあなたにイエスと言ったように?
サミュエル・ベンシェトリ:その通り。イザベルと仕事をすることは僕の長年の夢だった。彼女がイエスと言ってくれたことが、この冒険のターニングポイントだった。初めて言葉を交わしてから今日まで、彼女と共に過ごした日々は本当に素晴らしいものだった。イザベルは、自分のしたいことをはっきりと分かっていて、それを実現させるために全力で仕事にあたる、プロ中のプロだよ。監督の立場から言わせてもらえば、彼女と一緒だと洗練された仕事ができる。自分自身と距離を持つことができ、どのテイクもそれ以上ないものにしてしまうし、どの台詞も尊いものに出来る人なんだ。現場では、彼女と僕の息子ジュールとの間に本当に特別な絆が生まれていた。2人ともお互いにとても好感を持っていたと思うよ。

Q:息子さんのジュールをイザベルの若い隣人役にすることはすぐに思いついたのですか?
サミュエル・ベンシェトリ:いや、そんなことはないんだ。製作の初期段階からプロデューサーが皆、ジュールを起用しようと言っていたんだけど、僕にしてみればありえない話だった。だから、少なくない数のティーンの役者に会ってみたんだけど、プロデューサーがどうしてもジュールで、と言うので、とうとう折れてスクリーンテストをしてみた。その時に、彼らが正しかったと認めざるを得なかったんだ。客観的に見て、ジュールは最初から、自分の役柄を、他のどの役者より理解していて、誰よりもあの役に相応しいと言わざるを得なかった。それで少しも躊躇することなく息子を起用した。だからと言って、まったく心配しなかった、というわけではなかったけどね。実際、彼は最初のシーンで、イザベルの前で下着姿でエレベーターを蹴らなければならなかったからね(笑)。実生活でのジュールは、とても控えめな子なんだけど、スクリーンで演じるのは、暴力的で無遠慮な青年だ。でもこの役には彼の実生活を反映しているところもあったんだ。特に不在の母親との関係はね。撮影中、僕は時々、ジュールにそんな状況を演じさせるなんてどうかしてるんじゃないか、と自問自答もしたけど、それは間違いだった。現場を支配していた気品のようなものが、僕らの間に漂う口に出せない不安も、すべて受け入れてくれていたからだ。ジュールは、イザベルから多くのことを学んだと思うよ。彼女は、すべてのシーンに対して、現場の喧騒に臆する事なく、自分自身の世界を作り上げる。ジュールも同じ方法をとった。生まれた時からよく知っているスタッフが周囲にいても彼の気が散るということは決してなかったね。実際、ジュールとイザベルのシーンは撮り直しがほとんどなかった。最初のテイクから、僕の望む画がそこにあったから。


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