第4回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~
最新のフランス映画を特集上映する「第4回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」が、仏雑誌「レザンロキュプティーブル」編集長ジャン=マルク・ラランヌ氏をキュレーターに迎え、1年半振りに開催されようとしている。
2020年から2022年にかけてフランスで配給された注目すべき最新フランス映画をジャン=マルク・ラランヌ氏が選んだ「2020/2022ベスト」では、ブリュノ・デュモン『フランス』、シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ『恋するアナイス』、ヴァンサン・ル・ポール『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』といった世界の映画祭で話題になった作品群から、90歳を超えた巨匠ポール・ヴェッキアリの『愛の疑問』まで、”激動の世界を照らす燈台”(ジャン=マルク・ラランヌ)としての<映画>がラインナップされている。”燈台”としての<映画>はまた、現代の最新作に限定され得るはずもなく、新しいフェミニズムの到来を迎えている現在に相応しい企画「デルフィーヌ・セイリグ特集」の上映も予定されている。
ジャン=リュック・ゴーダルという巨大な燈台を喪った、今まさに私たちが生きている暗い時代においても、<映画>によって、新しい未来を創造しようと挑戦している者たちがいることに勇気付けられる、そんな特集上映を体験出来るような気がしている。
2020年から2022年にかけてフランスで配給された注目すべき最新フランス映画をジャン=マルク・ラランヌ氏が選んだ「2020/2022ベスト」では、ブリュノ・デュモン『フランス』、シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ『恋するアナイス』、ヴァンサン・ル・ポール『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』といった世界の映画祭で話題になった作品群から、90歳を超えた巨匠ポール・ヴェッキアリの『愛の疑問』まで、”激動の世界を照らす燈台”(ジャン=マルク・ラランヌ)としての<映画>がラインナップされている。”燈台”としての<映画>はまた、現代の最新作に限定され得るはずもなく、新しいフェミニズムの到来を迎えている現在に相応しい企画「デルフィーヌ・セイリグ特集」の上映も予定されている。
ジャン=リュック・ゴーダルという巨大な燈台を喪った、今まさに私たちが生きている暗い時代においても、<映画>によって、新しい未来を創造しようと挑戦している者たちがいることに勇気付けられる、そんな特集上映を体験出来るような気がしている。
(上原輝樹) |
2022.9.14 update |
10月1日(土)~10月21日(金)
会場:ユーロスペース
料金:一般 1,500円、学生・会員・シニア 1,200円
*〈こども上映会〉『ロバと王女』上映のみ 高校生以下500円
チケット:各上映日の3日前深夜0時よりユーロスペース公式HPおよび同日開館時よりユーロスペース劇場窓口にて販売いたします
料金:一般 1,500円、学生・会員・シニア 1,200円
*〈こども上映会〉『ロバと王女』上映のみ 高校生以下500円
チケット:各上映日の3日前深夜0時よりユーロスペース公式HPおよび同日開館時よりユーロスペース劇場窓口にて販売いたします
|
↑ |
上映スケジュール
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
↑ |
上映プログラム
Best of 2020-2022
| 『マイ・ベスト・パート』(Garçon chiffon de Nicolas Maury) 2020年/100分/カラー/フランス 監督:ニコラ・モーリー 出演:ニコラ・モーリー、アルノー・ヴァロワ、ナタリー・バイ 30代のジェレミーは、新人俳優として奮闘するもなかなか芽が出ず、私生活では嫉妬深い性格から恋人との関係がこじれてしまう。パリから故郷のリムーザンの母のもとに戻り、立ち直ろうとするのだが…。ゲイであることを公にし、幅広い役まわりでフランス映画に新風を吹かせている人気俳優N・モーリーの監督デビュー作。母親役を演じるナタリー・バイが作品に豊かな奥行きを与えている。第73回カンヌ国際映画祭カンヌレーベル作品。 「誇張しつつも抑制され、大げさであるより綿のようにソフトな本作で、ニコラ・モーリーはその作家性を見事に刻み、そして俳優として最高の演技を見せている」※ |
『セヴェンヌ山脈のアントワネット』 (Antoinette dans les Cévennes de Caroline Vignal) 2020年/98分/カラー/フランス 監督:キャロリーヌ・ヴィニャル 出演:ロール・カラミー、バンジャマン・ラヴェルネ アントワネットは恋人のウラジミールとのロマンチックなヴァカンスを楽しみにしていたのだが、彼は妻子とセヴェンヌ山脈へ。迷わずその地へ向かったアントワネットだが、珍道中に同行することになるのは不機嫌なロバのパトリックだった。ギヨーム・ブラックの『女っ気なし』などコミカルかつ繊細な感情の機微を表現する人気女優ロール・カラミーが主演し、見事セザール賞最優秀女優賞を受賞。 「非常に成功しているコメディであり、女性によるあらたなる西部劇といえるだろう」※ |
『愛の疑問』 (Un soupçon d’amour de Paul Vecchiali) 2020年/92分/カラー/フランス 監督:ポール・ヴェッキアリ 出演:マリアンヌ・バスレール、ファビエーヌ・バーブ、ジャン=フィリップ・プィマルタン 名女優ジュヌヴィエーヴ・ガーランは、夫のアンドレをパートナーに、ラシーヌの「アンドロマック」のリハーサルを行うのだが、この役を演じることに深い違和感を覚え、夫の愛人で、友人のイザベルに譲ることに。ジュヌヴィエーヴは病気の息子を連れ、生まれ故郷の村へと向かう。ヌーヴェルヴァーグと同世代ながら独自の製作体制で、90歳を過ぎた現在も精力的に取り続けている巨匠ポール・ヴェッキアリによる近年最も美しい作品。 「室内劇場と剥奪の科学の間で、これまでのヴェッキアリの職人的な映画に忠実に、人生の苦悩からなんとか逃避しようとする女優の素晴らしいポートレートを生み出した」※ |
『マンディビュル 2人の男と巨大なハエ』 (Mandibules de Quentin Dupieux) 2020年/77分/カラー/フランス 監督:カンタン・デュピュー 出演:ダヴィ・マルセ、グレゴワール・ルディック、 アデル・エグザルコプロス おまぬけコンビ、ジャン=ガブとマニュは、車のトランクの中に巨大なハエを見つける。ふたりは金儲けのためにハエを調教しようとするが、そこにセシルという女性が通りかかり……。ブニュエルや70年代のフランス犯罪映画など、様々なジャンルを取り入れ、笑いの中にシュールで不気味な世界の相貌をのぞかせる鬼才デュピューによるファンタジック・コメディ。人気俳優たちのあらたな魅力を引き出すのもデピュー映画の見どころ。ヴェネツィア国際映画祭正式出品作品。 「夏の風のように軽やかで恩恵をもたらしてくれる『マンディビュル』は、率直さを賛美する幸福に満ちたヴァカンスの物語である」※ |
© Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf Aline Le Film Inc./Belga |
『ヴォイス・オブ・ラブ』 (Aline de Valérie Lemercier) 2021年/126分/カラー/フランス、カナダ 監督:ヴァレリー・ルメルシエ 出演:ヴァレリー・ルメルシエ、シルヴァン・マルセル、ダニエル・フィショウ フランスで絶大な人気を誇るお笑い芸人、女優、そして監督とマルチで活躍するヴァレリー・ルメルシエが監督・脚本・主演を務め、世界的歌姫セリーヌ・ディオンの半生をモチーフに描いた音楽映画。第74回カンヌ国際映画祭正式招待作品。 「ルメルシエは、このジャンルの忍従すべき(そして多少恥ずかしくもある)人工性に対して、贅沢で、ややバロック的ともいえる人工性を導入してみせる。 “アリーヌ” とは、ヴァレリーが夢見るセリーヌであり、セリーヌによって見えてくるヴァレリーであり、また別の何か、創造された存在、純粋な映画のファンタジーであるだろう」※ |
LADA 52 R ©Les Films Pelléas Année Zéro. jpg |
『恋するアナイス』 (Les Amours d’Anaïs de Charline Bourgeois-Tacquet) 2021年/98分/カラー/フランス 監督:シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ 出演:アナイス・ドゥムースティエ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ドゥニ・ポダリデス 「16世紀の情熱」についての博論を書き終えないまま、将来も恋愛も見通しが立たないでいる30歳のアナイス。ある日アナイスはダニエルという年配の男性に出会い、つき合い始めるが、しだいにダニエルの伴侶であるエミリーに魅了されていく。第74回カンヌ国際映画祭批評家週間で注目を集めたC・ブルジョワ=タケの長編デビュー作。自然の中で解放され、しだいに惹かれ合う二人の女性たちが繊細かつ官能的に描かれている。 「愛が科学であるならば、才能溢れるシャルリーヌ・ブルジョワ=タケは、知的なる愛についての学びの映画を、不純で喜びあふれる方法で揺り動かし、再生させる独自の方式を完成させている」※ |
© R. Arpajou |
『フランス』 (France de Bruno Dumont) 2021年/134分/カラー/フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー 監督:ブリュノ・デュモン 出演:レア・セドゥ、バンジャマン・ビオレ、ユリアーネ・ケーラー スター・ニュースキャスター、フランスはある事件をきっかけに、世界の「不幸」により目を向けようとするのだが……。ブリュノ・デュモン最新作、第74回カンヌ国際映画祭コンペ部門出品。一人の女性の肖像であると同時に、フランスという国、メディアというシステムの肖像。 「普段はプロの俳優を使うことを警戒しているデュモンが、不実なる女、フランスを演じるのに自分が何者であるかを十分に自覚しているレア・セドゥを選んだのは偶然ではないだろう。外見と内面の葛藤、壮大なスペクタクルを、登場人物と女優が共にそれを観察している(…)そしてフェイスニュースで膨れあがった現実にいつしか亀裂が入り始める」※ |
『そんなの気にしない』 (Rien à foutre d’Emmanuel Marre et Julie Lecoustre) 2022年/115分/カラー/フランス、ベルギー 監督:エマニュエル・マール&ジュリー・ルクストル 出演:アデル・エグザルコプロス、アレクサンドル・ペリエ、マーラ・タキン 格安航空会社の客室乗務員、26歳になるカサンドラは、マッチングアプリ、ティンダーのニックネーム「カルペ・ディエム(今を楽しめ)」に忠実に、フライトからフライトへ、パーティーからパーティーへ、しがらみのない毎日を生きている。しかし会社のプレッシャーが増すにつれ、カサンドラはしだいに自分を見失っていく……。『マンディビュル』に引き続き、『アデル、ブルーな熱い色』のアデル・エグザルコプロスが素晴らしい演技を見せている。 第75回カンヌ国際映画祭批評家週間出品作品。 「ジュリー・ルクストルとエマニュエル・マールは、即興と綿密な再現を織り交ぜた演出で、ジェネレーションYの感動的な物語を描き出すことに成功している」※ |
『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』 (Bruno Reidal, confession d’un meurtrier de Vincent Le Port) 2022年/101分/カラー/フランス 監督:ヴァンサン・ル・ポール 出演:ディミトリ・ドレ、ジャン=リュック・ヴァンサン、ロマン・ヴィルデュ 1905年9月1日、フランスのカンタル地方の農民で、神学校に通う17歳の青年が12歳の子供を殺害した容疑で逮捕される。医師はその行動を理解するために、幼少期から犯行当日までの人生について青年に尋ねていく。実話を基にしたヴァンザン・ル・ポールの長編デビュー作で第75回カンヌ映画祭批評家週間にて大絶賛された。 「犯罪の恐ろしさの裏に、孤独やフラストレーション、タブー、社会環境、時代から受けた苦痛を抱えた子供の存在があり、本作はすべてを説明したり正当化しようとせず、彼の魂の揺れを見せようとしています」ヴァンサン・ル・ポール |
『愛と激しさをもって』 (Avec amour et acharnement de Claire Denis) 2022年/116分/カラー/フランス 監督:クレール・ドゥニ 出演:ジュリエット・ビノッシュ、ヴァンサン・ランドン、グレゴワール・コラン、マティ・ディオップ、ビュル・オジエ 10年近く共に暮らすサラとジャンは情熱的に愛し合っている。ある朝、サラはかつての恋人フランソワと偶然再会する。フランソワはサラを親友であるジャンに紹介し、彼女がそのジャンのために別れを告げた人物だった……。第72回ベルリン映画祭最優秀監督賞受賞。 「演出面で本当に素晴らしい映画だ。たとえば驚くべきファーストショット。スチュアート・A・ステイプルズのギター、海の残響、シンプルな会話シーンの不協和なカット、何度も唱えられる言葉、すべてがこの脅威にさらされた愛の物語に驚くべき表現力を与えるのに貢献している。そしてなにより、役者たちの力が最大限に発揮されている」※ |
『ドン・ジュアン』 (Don Juan de Serge Bozon) 2022年/100分/カラー/フランス 監督:セルジュ・ボゾン 出演:ヴィルジニー・エフィラ、タハール・ラヒム 2022年、ドン・ジュアンはもはやすべての女性を誘惑する男ではなく、自分を捨てた一人の女性に執着する男になっていた...。『ダゲレオタイプの女』のタハール・ラヒムが『めまい』のスコッティのように愛する女性のイメージに取り憑かれた男を演じるミュージカル。第75回カンヌ国際映画祭プレミア部門出品作品。 「セルジュ・ボゾンは、彼の映画のいつもの奇抜さを軽減させ、それを細かい振り付けの身ぶりの中へと封じ込める。その結果、哀調を帯びたダンスのムーブメントを全編に渡り生み出し、出演者が愛を告白し合う歌声が裏切らない心からの美しさを醸し出している」※ |
※「」内は「レザンロキュプティーブル」誌に掲載された批評文からの引用
↑ |
デルフィーヌ・セイリグ特集
アラン・レネのミューズ、60年代の演劇界の女王であり、トリュフォーやドゥミからも賛美されたデルフィーヌ・セイリグ(1932―1990)はその名声の絶頂期であった70年代にフェミニズムの闘いに身を投じ、新しい形式やヴィジョン、テーマを歓迎する女性監督たちと主に仕事していきます。当時25歳のシャンタル・アケルマンと傑作『ジャンヌ・ディエルマン』を生み出し、マルグリット・デュラスからは「フランスで、いやおそらく世界で最も偉大な女優」と評されました。自分のイメージを壊すことを恐れず、変化し続けていった自由な女性デルフィーヌ・セイリグのフィルモグラフィーを辿ります。
©1960 STUDIOCANAL - Argos Films - Cineriz |
『去年マリエンバートで』 (L’Année dernière à Marienbad d’Alain Resnais) 1961年/94分/モノクロ/フランス、イタリア 監督:アラン・レネ 出演:ジョルジョ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ バロック調の宮殿のようなホテル、男はひとりの女に、去年マリエンバートで出会い、愛し合ったと語りかける。1959年ニューヨークで舞台に立っていたセイリグに魅了されたレネは当初、ジャン・レイ原作の『怪盗クモ団』を映画化し、セイリグに犯罪組織<クモ団>の首領の役を検討。予算の問題などから企画が変更し、アラン・ロブ=グリエによる脚本、ココ・シャネルの衣装で映画史に残る本作、忘れがたいヒロインが誕生。第22回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞し大成功を収めた本作によってセイリグは国際的な名声を得た。 |
『ミュリエル』 (Muriel ou le temps d’un retour d’Alain Resnais) 1963年/118分/カラー/フランス 監督:アラン・レネ 出演:ジャン=バティスト・チェーレ、ジャン=ピエール・ケリアン、ニタ・クライン 1962年9月 アルジェリア戦争から帰還した義理の息子と暮らす古美術商のエレーヌのもとに、かつての恋人アルフォンスが姪と称する若い女と訪ねてくる。再びレネと組んだ本作で、セリングは一転、初老の女性に挑んだ。 「『ミュリエル』には10、20の主題がある。レネや(原作者の)ジャン・ケイヨールさえ考えもしなかったテーマさえ存在している。それが偉大な映画の力である」アンリ・ラングロワ |
『ロバと王女』(La Peau d’âne de Jacques Demy) 1970年/89分/カラー/フランス 監督:ジャック・ドゥミ 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャック・ペラン、ジャン・マレー 地方に住む若者リュックは、父のような職人になりたく美術工芸大学の試験を受けるためにパリを訪れ、偶然出会ったジャミラという女性と恋に落ちる。父の住む故郷に戻ったリュックはかつての恋人ジュヌヴィエーヴに再会し、ふたりはよりを戻すのだが、その頃ジャミラも彼との再会を願い胸を焦がしていた。 リラの妖精の計らいで、王女はロバの皮を纏い、父である王のもとから逃げ出し森に身を隠す。シャルル・ペローの童話『ロバの皮』を映画化したミュージカル。かつてからドゥミが出演を切望していたセイリグは、紫のドレスに身を包み、茶目っ気と気品、知性を兼ね備えた妖精を魅惑的に演じ、甘いしゃがれた歌声も披露してくれる。 |
『赤い唇』(Les Lèvres rouge) 1971年/100分/カラー/ベルギー、フランス、ドイツ 監督:ハリー・クメール 出演:ダニエル・ウィメ、ジョン・カーレン、アンドレア・ラウ 怪奇幻想映画の巨匠として知られるハリー・クメールが独特のエロティシズムと耽美的な映像で描いた吸血鬼映画。ベルギーの港町オステンド。ホテルに宿泊した新婚夫婦は、謎めいた優雅な伯爵夫人との出会いをきっかけに、禁断の世界へと引き込まれていく。セイリグはエレガントでミステリアスな伯爵夫人を演じている。 |
『インディア・ソング』(India Song de Marguerite Duras) 1974年/120分/カラー/フランス 監督:マルグリット・デュラス 出演:ミシェル・ロンダール、マチュー・カリエール、クロード・マン 1930年代のインド・カルカッタ。フランス大使夫人アンヌ=マリー・ストレッテルへの不可能な愛で狂気に陥る副領事の物語。全編においてオフの声を活用し、映像と音響の関係の新たな境地を開いたデュラスの映画における代表作。セイリグの女優としての才能を高く評価し、映画、舞台で共に仕事をし続けたデュラスは、「彼女の自由を妨げるものは、他者に加えられた不正だけだ」と述べ、その人間性にも敬意を払っていた。 |
『《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって』(Autour de « Jeanne Dielman » de Sami Frey) 1975年/78分/モノクロ/フランス *ビデオ映像 監督:サミー・フレー 出演:シャンタル・アケルマン 『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』の撮影中に、セイリグの恋人であったサミ・フレーが撮影し、シャンタル・アケルマンが編集したドキュメンタリー。セイリグとのアケルマンがどのように「ジャンヌ・ディエルマン」を創っていったか、演出上の細かいやり取りや、撮影中のインタビューや若いスタッフたちとの会話からセイリグの女性としての生き方や仕事に臨む姿勢が伝わってくる貴重な作品。 |
『デルフィーヌとキャロル』(Delphine et Carole de) 2019 年/68分/モノクロ/フランス、スイス 監督:カリスト・マクナルティー 出演:キャロル・ロッソプロス、 マルグリット・デュラス、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、シャンタル・アケルマン セイリグと、フランスで2台目(1台目を手に入れたのはジャン=リュック・ゴダール)のビデオカメラを手に入れ、やがてフランスにおけるビデオアートのパイオニア的存在となったキャロル・ロッソプロスの出会いを描く。二人は協同し、1970年代のフェミニズム運動の只中にビデオカメラを手に飛び込んでいく。その活動は世界の支配的な常識を揺るがす、非妥協的、不遜で過激なユーモアに溢れるものだった。 |
↑ |