第7回映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~
選りすぐりの最新フランス映画が上映される「映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」が、今年も東京日仏学院エスパス・イマージュで開催される。
2024〜2025年に製作され、世界的に高い評価を得た最新フランス映画7本が上映される「批評家たちが選ぶ2024/2025ベスト」、日本初となる長・短編を含むデュラス監督全作品が上映される「マルグリット・デュラス 没後30年 全作特集」、リチャード・リンクレーター『ヌーヴェルヴァーグ』(2025)先行上映、カンヌを沸かせたばかりの濱口竜介監督最新作『急に具合が悪くなる』(2026)公開記念として開催されるヴェルジニー・エフィラ特集、『美しく、黙りなさい』(1976)公開記念デルフィーヌ・セリッグ特集と、映画史を視野に据えて、最新フランス映画の動向に触れることのできる貴重なプログラム構成となっている。
何といっても、『急に具合が悪くなる』で岡本多緒とともに第79回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したばかりのヴェルジニー・エフィラの登壇がするプレイベント(『ヴィクトリア』上映後のティーチイン)があまりにもタイムリーだが、多彩な顔ぶれが登場するディスカッションやトークショーを含む、数々の冒険的な映画上映の試みが、私たちが生きる現在とどのように交錯し、この困難な時代を生き抜くエネルギーと思考の回路を拓いてくれるのか、まずは身をもって体験したいと思う。
2024〜2025年に製作され、世界的に高い評価を得た最新フランス映画7本が上映される「批評家たちが選ぶ2024/2025ベスト」、日本初となる長・短編を含むデュラス監督全作品が上映される「マルグリット・デュラス 没後30年 全作特集」、リチャード・リンクレーター『ヌーヴェルヴァーグ』(2025)先行上映、カンヌを沸かせたばかりの濱口竜介監督最新作『急に具合が悪くなる』(2026)公開記念として開催されるヴェルジニー・エフィラ特集、『美しく、黙りなさい』(1976)公開記念デルフィーヌ・セリッグ特集と、映画史を視野に据えて、最新フランス映画の動向に触れることのできる貴重なプログラム構成となっている。
何といっても、『急に具合が悪くなる』で岡本多緒とともに第79回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したばかりのヴェルジニー・エフィラの登壇がするプレイベント(『ヴィクトリア』上映後のティーチイン)があまりにもタイムリーだが、多彩な顔ぶれが登場するディスカッションやトークショーを含む、数々の冒険的な映画上映の試みが、私たちが生きる現在とどのように交錯し、この困難な時代を生き抜くエネルギーと思考の回路を拓いてくれるのか、まずは身をもって体験したいと思う。
| 上原輝樹 2026.05.27 update |
トーク・ゲスト:ヴィルジニー・エフィラ(女優)、ナダヴ・ラピド(監督)、ソフィー・ルトゥルヌール(監督)、カミーユ・ヌヴェール(監督・映画批評家)、竹内航汰(フランス文学研究・字幕翻訳)オンライン:田中竜輔(編集者)、月永理絵(ライター・編集者)
2026年6月7日(日)~7月19日(日)
会場:エスパス・イマージュ
入場料金:一律 1,200円(全席自由/入場はチケット番号順)
但し*の付いているトーク付きの回は1,500円
※チケットは Peatix(https://ifjtokyo.peatix.com/events)にてのみ発売いたします。
窓口販売はございませんのでご注意下さい。
公式サイト:https://culture.institutfrancais.jp/event/cinema202606070719
入場料金:一律 1,200円(全席自由/入場はチケット番号順)
但し*の付いているトーク付きの回は1,500円
※チケットは Peatix(https://ifjtokyo.peatix.com/events)にてのみ発売いたします。
窓口販売はございませんのでご注意下さい。
公式サイト:https://culture.institutfrancais.jp/event/cinema202606070719
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上映スケジュール
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上映プログラム
批評家たちが選ぶ2024/2025ベスト
2024年、2025年に製作され、世界的にも評価を得た優れたフランス映画から、日本でなかなか見られる機会のない作品を選りすぐり紹介します。
©D.R.
| 『エウレカ』(Eureka de Lisandro Alonso) フランス、ドイツ、メキシコ、アルゼンチン、ポルトガル/2024年/146分/カラー 第76回カンヌ国際映画祭カンヌ・プルミエール部門出品 監督:リサンドロ・アロンソ 出演:ヴィゴ・モーテンセン、キアラ・マストロヤンニ、ラフィ・ピッツ 西部開拓時代、現代のサウスダコダ州パインリッジ保留所、1970年代のブラジルのジャングル──三つの南北アメリカ大陸にまたがる複数の時代の先住民のコミュニティの物語。日本では『約束の地』(2014年)が公開されている現代アルゼンチン映画を代表する名匠アロンソがアメリカ西部劇を解体し、きわめて独創的な語りの可能性を探求している。 「『エウレカ』は、アメリカ先住民の歴史と現在を通して、人間による暴力や搾取、そして自然破壊をみつめ、新たな映画的地平を切り開いている」オリヴィエ・ペール(アルテ・シネマ) |
©D.R.
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『アヴァンチュール』 (L’Aventura de Sophie Letourneur) フランス/2025年/108分/カラー 第76回カンヌ国際映画祭ACID部門出品 監督:ソフィー・ルトゥルヌール 出演:フィリップ・カトリーヌ、ソフィー・ルトゥルヌール、ベレニス・ヴェルネ イタリアのサルデーニャ島での夏休み、もうすぐ11歳になるクロディーヌは、旅の途中で起きた冒険について話し始める。即興性を感じさせる自由なスタイルの一方で、会話のテンポなどきわめて精密に構成され、ドキュメンタリーとフィクションの境界を軽やかに横断するルトゥルヌールの最新作。 「この映画の力は、その混沌を、集団の法則であると同時に個々人の苦悩として感じさせる点にある。母親の中に静かに積み重なっていく疲労、父親のどこか気まぐれで愛嬌のある逃避、長女の繊細な嫉妬心、末っ子のまっすぐな感情のほとばしり——そうしたすべてが、近くにいすぎることでむしろ互いを際立たせ、関係の生々しさと愛おしさを浮かび上がらせていく」マチュー・マシュレ(『ル・モンド』) |
©D.R. |
『マーク・ブラウンとの七つの散歩』 (Sept promenades avec Mark Brown) フランス/2025年/104分/カラー マルセイユ国際映画祭出品 監督:ピエール・クレトン&ヴァンサン・バレ 出演:マーク・ブラウン 在来植物を探す植物学者マーク・ブラウンとともに、エジエから彼の暮らす土地サント=マルグリット=シュル=メールへ、セーヌ川の谷から、ノルマンディーのコー地方の海岸線に沿って七つの散策を重ねながら、植物たちが撮影されていく——やがて「花々の夜明け」に原生林を再現するという壮大で奇想天外なプロジェクトが見えてくる。 「七つの散策は、それぞれが生命のスペクトルを離れて存在する点同士の出会いとなっており、私たちの起源とは何かという問いを静かに呼び起こしていく」オリヴィア・クペール=アジャーン(『カイエ・デュ・シネマ』) |
©D.R. |
『風のままに、ローラン』 (Laurent dans le vent d’) フランス/2025年/110分/カラー 第76回カンヌ国際映画祭ACID部門出品 監督:アントン・バレクジョン&レオ・クチュール&マテオ・ウスタション 出演:バティスト・ペルザ、ベアトリス・ダル、ジャニス・ボウジャーニ 9歳のローランは人生に意味を見いだせないまま、仕事も住まいもない状態でシーズンオフの人影のないスキーリゾートにたどり着く。そこで出会うわずかな住人たちの生活に入り込み、次第にその場にとどまっていく。やがて冬とともに観光客が戻っても、彼はそこから離れられなくなってしまう。 「この作品は、自由な映画そのものの息づかいを持ち、自らのリズムで立ち止まり、彷徨いながら展開する。ときに実存的な謎として、ときに饒舌で戯れに満ちた物語として姿を変え、アラン・ギロディやエリック・ロメールを想起させる瞬間を織り込みながら進んでいく」ジェローム・ジェステ(「ラ・セプティエム・オブセッション」) |
©D.R. |
『メクトーブ, マイ・ラブ:第2章』 (Mektoub my love : canto due d’Abdellatif Kechiche) フランス/2025年/139分/カラー 第78回ロカルノ国際映画祭出品 監督:アブデラティフ・ケシッシュ 出演:シャイン・ブメディン、オフェリー・ボー、アフシア・エルジ、ジェシカ・ペニントン パリでの学業を終えたアミンは、映画の夢を胸に南仏セートへ帰郷。休暇中のアメリカ人プロデューサーが偶然彼の企画『存在の普遍的原理』に興味を持ち、著名な女優で妻のジェスを主演にと望む。だが、思い通りには進まず、運命は思わぬ展開をもたらす。 「撮影開始からおよそ10年を経て、映画作家の“呪われた三部作”の新作がついに公開される。終わらない夏を引き延ばすかのように、スキャンダルへの不穏な応答として、登場人物たちに黄昏のラストダンスが与えられる」サンドラ・オナナ(「リベラシオン」) |
© Take Shelter - Arte France Cinéma |
『ガール・イン・ザ・スノウ』 (L’Engloutie de Louise Hémon) フランス/2025年/98分/カラー 第76回カンヌ国際映画祭監督週間出品 監督:ルイーズ・エモン 出演:ガラテア・ベルージ、マチュー・ルッチ、サミュエル・キルヒャー 1899年。雪に閉ざされた山奥の村に、若き教師エメーが赴任する。外の世界から切り離されたこの地で、彼女は古い慣習に揺さぶられながらも、子どもたちに新しい世界を伝えようとする。しかし同時に、彼女自身の内側で静かに目覚めていく欲望にも気づき始める――。厳しくも美しい冬山の風景の中で、女性の抑圧と解放が繊細に揺れ動くルイーズ・エモンの長編デビュー作。 「本作は、「魔女」という存在が最初からあるのではなく、そう見なされることで生まれていく過程を描く。いくつもの兆しや偶然、不安が積み重なり、やがて共同体の語りがひとつの像をかたちづくっていく」リュドヴィック・ベオ(「レザンロキュプティーブル」) |
©Les Films du Bal, Chi-Fou-Mi |
『イエス』 (Oui de Nadav Lapid) フランス、イスラエル、キプロス、ドイツ / 2025年/ 150分/ カラー 第78回カンヌ国際映画祭監督週間 監督:ナダヴ・ラピド 2023年10月7日の襲撃後、売れない音楽家Yは、生計のためにガザ殲滅を煽る愛国歌の作曲依頼を引き受ける。だがその選択は、芸術家としての良心を激しく揺さぶり、妻ジャスミンとの関係にも影を落とす。『シノニムズ』『アヘドの膝』に続き、国家の同一性をめぐる問いをさらに苛烈に突きつけるラピドは、現代が抱える倫理的葛藤を、個人の証言として鋭く描き出す。 「これほど激しい怒りに満ちた映画は、手加減しては成立しない。ラピドはあえて過剰でグロテスクな表現に踏み込み、狂騒的な宴の描写を通して、現実の核心へと迫っていく」マルコス・ウザル(『カイエ・デュ・シネマ』) |
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マルグリット・デュラス 没後30年 全作特集
マルグリット・デュラスは、1966年から1984年にかけて19本もの作品を監督し、物語、映像、声、沈黙、そして観客との関係そのものを絶えず問い直しながら、映画表現の極限へと踏み込んでいきました。今日なお多くの映画作家や芸術家に決定的な影響を与え続ける、デュラスの豊饒かつラディカルな映画世界。その全19作品を一挙上映します。
長編作品
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『ラミュジカ』 (La Musica) フランス/1967年/80分/モノクロ 出演:デルフィーヌ・セリッグ、ロベール・オッセン、ジュリー・ダッサン デュラスの初監督作で、同名戯曲をポール・セバンと共同で映画化した作品。孤独を埋める夜の対話を通して、ノルマンディーの古都エヴルーを中心に、ひとつの恋愛関係の終焉とその余波が描かれる。 「不在」や「記憶」をめぐる女性像に、デルフィーヌ・セリッグが唯一無二の存在感と声で命を吹き込み、ここからふたりの創造的な協働が始まる。「映画において通常は二次的とされる“会話”が、本作ではまさに主題となっている」 |
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『破壊しに、と彼女は言う』 (Détruire, dit-elle) フランス/1969年/90分/モノクロ 出演:カトリーヌ・セルレス、マイケル・ロンズデール、アンリ・ガルサン 療養施設で出会う4人の男女。娘との関係に問題を抱えるエリザベート、死産を経験したばかりの妻アリッサとその夫マックス、そして多くのものに恐怖を抱えるユダヤ人のシュタイン。次第に彼らは打ち解けていくが、エリザベートの夫の到来によって、その関係は揺らぎ始める。とりとめのない会話から彷徨へと至る中で、デュラスは、物語や対話の既存の方法論を断ち切る、謎めいた映画を生み出す。 「もし人間がその孤独の中で変わらないのなら、何も可能ではない。あらゆる革命は欺瞞に終わるだろう」 |
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『黄色い太陽』(Jaune le soleil) フランス/1971年/80分/モノクロ 出演:カトリーヌ・セルレス、サミー・フレー、マイケル・ロンズデール、ディオニス・マスコロ ある夜、サバナとダヴィッドは、架空の町シュタットの労働者階級が住む郊外にあるユダヤ人アバンの家を訪れ、その夜に予定されている処刑まで彼を監視することになる。1968年以降の政治的な閉鎖空間を舞台に、自身の小説『アバン・サバナ・ダヴィッド』を脚色した本作で、デュラスは悪夢のような雰囲気の中での「言葉」の演出を通じて、資本主義とスターリン主義を分析する。表現と思想のシステムを探求した本作は、デュラスの“伝統的な映画”の流れを締めくくる作品となる。 |
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『ナタリー・グランジェ』(Nathalie Granger) フランス/1972年/83分/モノクロ 出演:ルチア・ボゼー、ジャンヌ・モロー、ジェラール・ドパルデュー イタリア人女性とその女友達が過ごす昼下がり。娘ナタリーの問題行動や、ラジオから流れる未成年殺人者のニュース、突然現れるセールスマンによって、空気は不穏に揺らぎ始める。自身のフィルモグラフィーの分岐点において、デュラスは過激な道を選び、テキストを排し、言葉にできないものに秘められた緊張感に焦点を当て、ボゼーとモローの苦悩に満ちた顔をとらえていく。 「『ナタリー・グランジェ』のなかには、深い意義申し立てがある。これは、家の外のものすべてに対する係争なのよ」 |
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『ガンジスの女』(La Femme du Gange) フランス/1972年/87 分/カラー 出演:カトリーヌ・セレルス、ニコル・イス、ジェラール・ドパルデュー デュラスは、152の固定ショットを用いて、ある男性と、今は亡き女性との情熱的な恋の物語を描き出す。監督第5作となる本作で、デュラスは「映像の映画」と「声の映画」という二重構造を通して、極限まで研ぎ澄まされたシンプルさを追求した。 「これはいわば二つの映画だ。映像として展開する映画と並行して、映像を伴わない純粋に声だけの映画が進行している。二人の女性のオフの声は、画面に現れる登場人物とはまったく結びついていない。さらに言えば、画面に映る人物たちは、対話を通してのみ物語が現れるその二人の女性の存在を、完全に知らない」 |
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『インディア・ソング』(India Song) フランス/1975年/120分/カラー 出演:デルフィーヌ・セリッグ、マイケル・ロンズデール、クロード・マン 自身のフランス統治下のインドシナでの幼少期の記憶をもとに、植民地主義への隠喩的批評を刻んだ映画作家デュラスの代表作。映像と音の結びつきはさらに解体され、記憶の断片と叶わぬ愛の亡霊が呼び集められる。忘れがたいカルロス・ダレッシオの美しくも切ない旋律が句読点のように挿入され、重要な出来事のすべては画面の外で起こり、遠くから響く登場人物たちの声によって語り直される。 「たぶん女、ただ女だけが、こんなことを企てる勇気を持つことができた。『インディア・ソング』をつくって、すべてを失う危険を冒すという」 |
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『ヴェネツィア時代の彼女の名前』(Son nom de Venise dans Calcutta désert) フランス/1976年/120分/カラー 声の出演:デルフィーヌ・セリッグ、ニコル・ヒス、シルヴィ・ニュイッテン 前作『インディア・ソング』で大使館邸として用いられたパリ郊外のロスチャイルド邸を舞台に、改修を目前に控えた廃墟の内外が緩やかな移動撮影で捉えられる。そこに『インディア・ソング』のサウンドトラックがそのまま重ねられ、映像と音のずれによって前作を「破壊」する試みとなっている。デュラス自身は本作を、自らの映画作品の中でも最も重要な試みと位置づけた。 「『ヴェネツィア時代の彼女の名前』とは、巨大な破壊の建設。建設するのは、巨大な破壊」 |
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『バクステル、ヴェラ・バクステル』(Baxter, Vera Baxter) フランス/1976年/90分/カラー 出演:デルフィーヌ・セリッグ、クローディーヌ・ガベイ、フランソワ・ペリエ あるバーで「バクステル、ヴェラ・バクステル」と呼ぶ声を耳にした謎めいた女は、その名の主に惹き寄せられるように海辺の広大な邸宅に接近していく。彼女に、ヴェラ・バクステルは、自身の人生、そして機能不全に陥った結婚に潜む衝撃的な秘密を語り始める。当時未発表だった自身の小説を脚色したデュラスは、ある女性の実存的空虚を、魅惑的かつラディカルな手法で描き出している。カルロス・ダレッシオによる中南米調の音楽が間断なく流れ続ける。 |
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『木立の中の日々』(Des journées entières dans les arbres) フランス/1976年/95分/カラー 出演::マドレーヌ・ルノー、ジャン=ビエール・オーモン、ビュル・オジェ 植民地で暮らす裕福な老女が、パリに住む息子を訪ねる。過去へのノスタルジーを帯びた物語は、簡潔な演出とどこか滑稽な調子が交差し、その奥にひそむ優しさを浮かび上がらせる。演劇、映画において20世紀フランスを代表する偉大な女優であり、デュラスにとって「自らの分身」とも言える重要な芸術的パートナーの一人だったマドレーヌ・ルノーが、息子を溺愛する母親を圧倒的な存在感で演じ、複雑で忘れがたい人物像をつくり上げている。 |
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『トラック』(Le Camion) フランス/1977年/78分/カラー 出演:マルグリット・デュラス、ジェラール・ドパルデュー 田舎の家のリビングルームに座り、デュラスは脚本を読みながらジェラール・ドパルデューに物語を語る。トラックが映る数カットと、道中で捉えられた一瞬の情景だけが、共犯関係と知性にあふれた、遊び心あふれる二人のやり取りを彩っている。 「『トラック』は映画についての映画。(…)この時制、条件法過去──「そうだったとしよう」──という遊戯的時制を使いながら、ここでしたかったのは、観客からある種の表象を奪い取ることだと思う」 「『トラック』は映画についての映画。(…)この時制、条件法過去──「そうだったとしよう」──という遊戯的時制を使いながら、ここでしたかったのは、観客からある種の表象を奪い取ることだと思う」 |
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『船舶ナイト号』(Le Navire Night) フランス/1978年/95分/カラー 出演:ドミニク・サンダ、ビュル・オジェ、マチュー・カリエール パリの夜、電話局で働く青年J・Mは、深夜の当直中に偶然かけた電話で女性Fと出会い、顔を知らぬまま数年にわたり電話だけで関係を続けていく。実話に着想を得た本作は、都市の夜景、そして電話という視覚と聴覚の分断を通して、デュラス的な語りを浮かび上がらせる。画面には俳優の素顔や無人のパリが映し出され、物語はデュラス自身の声によって進行する。「見えるもの」を排したことで、むしろ不在の愛の強度を際立たせた挑戦的な作品。 |
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『マルグリット・デュラスのアガタ』(Agatha et les lectures illimitées) フランス/1981年/90分/カラー 出演:ビュル・オジェ ヤン・アンドレア 海辺にあるホテルの無人のロビーで、母の死後八ヶ月ぶりに出会う兄妹。兄を愛していながら妹のアガタは旅立ちを告げる。声はマルグリット・デュラス自身と、彼女の最後の恋人、ヤン・アンドレアによる。アンドレアとビュル・オジは、広い空間をすれ違いながらも決して触れ合うことなく漂い続ける。ときに鏡には、撮影機材を操作するカメラマンの姿さえ映り込み、映画が「作られている現場」そのものが露出する。 「これは私が幸福について書いた最初の映画」 |
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『子どもたち』(Les Enfants) フランス/1984年/90分/カラー 出演:アクセル・ボグースラフスキー、タチアナ・ムウキン、ダニエル・ジェラン、アンドレ・デュソリエ デュラスの最後の監督作であり、世界の敗北と「幼年期」をひとつの解答として描く哲学的寓話で、自作の童話『ああ、エルネスト』(1971)をユーモアと哀感をもって映画化している。そこでは、欠陥のある教育システムへの抵抗が讃えられる。主演のアクセル・ボグースラフスキーは、分類不能な道化として見事な存在感を放っている。 「これは、知について語る作品ながら、限りなく絶望的なコメディ映画」 |
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短編・中編作品
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『セザレ』 (Césarée) フランス/1978年/11分/カラー アミー・フラネルの音楽に導かれながら、デュラスはテュイルリー庭園の風景に、滅び去った古代都市セザレの残響を重ね合わせていく。廃墟の記憶とマイヨールの彫像たちのあいだを彷徨いながら、彼女が見つめるのは、引き裂かれ、踏みにじられた愛――その面影は、王妃ベレニスの姿を借りて静かに浮かび上がる。『船舶ナイト号』で撮影されたが使用されなかった映像が用いられている。 |
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『陰画の手』 (Les Mains négatives) フランス/1978年/18分/カラー 『セザレ』と同じ経緯で制作された短編作品。夜明けから早朝にかけてのパリの街が車窓越しに捉えられ、そこにデュラス自身のモノローグが重ねられる。彼女は、大西洋に面したスペインのアルタミラ洞窟に残された手形を、人間が手で書いた最初の愛と欲望の叫びと解釈し、その声に成り代わるように語る。こうして夜のパリは、洞窟という原初的な空間の比喩へと変貌していく。 |
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『オーレリア・シュタイネル(メルボルン)』(Aurélia Steiner (Melbourne)) フランス/1979年/35分/カラー 午後から夕暮れへと移り変わるセーヌ河を、ゆっくりと進む船上から捉えた映像に、デュラスのモノローグが重ねられる。18歳というデュラスにとって特別な年齢のオーレリアは、収容所で死んだユダヤ人への愛の言葉を書き送る。彼女はその死者の孫あるいは子の世代にあたり、オーレリアは特定の個人にとどまらず、世界中に遍在するのである。 「これは限界的映画で、私にはこれを超えることができない」 |
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『オーレリア・シュタイネル(ヴァンクーヴァー)』(Aurélia Steiner (Vancouver)) フランス/1979年/48分/モノクロ デュラスは、自身の小説に繰り返し登場する人物の一人、オーレリア・シュタイネルを再び取り上げ、今回は彼女が両親に宛てて書いた手紙を映像化する。ノルマンディーの海辺、室内、無人の貨物駅など、やはり『船舶ナイト号』で未使用のショットを用いながら、デュラスはひとりの謎めいた人物の背後へと身を引き、その人物が徐々に自らの物語と過去を明らかにしていく過程を描き出す。 |
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『大西洋の男』(L’Homme atlantique) フランス/1981年/42分/カラー 出演:ヤン・アンドレア、マルグリット・デュラス(声) 執拗な言葉がイメージをのみ込みながら、デュラスは『アガタ』のラッシュ素材と朗読の断片を用いて、愛する男に去られた女性の悲しみと痛みを語る。そこには、愛の喪失をめぐる抑制された喪の表現が立ち現れ、ヤン・アンドレアの面影が影のように付きまとう。 |
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『ローマの対話』(Dialogue de Rome) フランス/1982年/62分/カラー 『セザレ』に続き、デュラスは再びベレニスへのオマージュを捧げる。今度はローマ軍人とサマリアの女王とのあいだに成立しない愛の物語を通してである。彼女はアッピア街道やナヴォーナ広場といった都市の象徴的な場所を、入り組んだ中心街の風景として撮影し、ヤン・アンドレアとの対話を重ねながら構築していく。 |
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デュラスについてのドキュメンタリー
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『マルグリット・デュラス、あるがままの彼女』 (Marguerite, telle qu’en elle-même de Dominique Auvray) フランス/2002年/61分/カラー、モノクロ 監督:ドミニック・オーヴレイ 出演:マルグリット・デュラス、ジャン=リュック・ゴダール、ジャンヌ・バリバール(歌・朗読) 「よく笑い、誠実で、挑発的で、注意深く、きっぱりしていて、しかしなによりも若々しく、自由な彼女に近づくために」、デュラスの盟友であり、『トラック』など長年その作品の編集を手がけてきたオーヴレイによるドキュメンタリー。幼少期の写真やインタヴュー映像を通して、作家・映画監督としてだけではない、デュラスというひとりの女性の、多面的で豊かな素顔が浮かび上がってくる。 |
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『デュラスと映画』 (Duras et le cinéma de Dominique Auvray) フランス/2014年/60分/カラー、モノクロ 監督:ドミニック・オーヴレイ 出演:マルグリット・デュラス、メルヴィル・プポー、ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、ジャンヌ・バリバール(声) ジャン=ピエール・メルヴィルとの貴重な対談映像や撮影現場の記録、関係者たちの証言を通して、観客として、映画監督として、そして作家として――デュラスが映画と結んだ、濃密で挑発に満ちた関係を鮮やかによみがえらせていく。メルヴィル・プポー、ナウエル・ペレーズ・ビスカヤートがデュラスの協力者たちの言葉を、ジャンヌ・バリバールがデュラスの言葉を代弁している。 |
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デュラス/レネ
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『ヒロシマモナムール』(Hiroshima Mon amour) フランス、日本/1959年/91分/モノクロ 監督:アラン・レネ 脚本:マルグリット・デュラス 出演:エマニュエル・リヴァ、岡田英二 原爆投下後の広島。フランス人女性と日本人男性は、束の間の、決して結ばれることのない愛を生きる。個人の記憶と歴史の傷、ふたつのトラウマが交差するなかで立ち上がる、愛と破壊の鮮烈な詩篇。アラン・レネとマルグリット・デュラスというふたりの才能が出会い、「映画の限界そのものを押し広げる」(J-L・ゴダール)傑作が誕生した。 |
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『ヌーヴェルヴァーグ』先行上映+トークショー
ヌーヴェルヴァーグという神話の背後にあった若き映画作家たちの遊び心、偶然性、そして切迫した創造のエネルギーを甦らせた、名匠リチャード・リンクレーターならではのオマージュ作品『ヌーヴェルヴァーグ』を、トークショー付きで先行上映します。
© 2025 ARP - Detour Development LLC |
『ヌーヴェルヴァーグ』 (Nouvelle Vague) フランス/2025年/106分/モノクロ 監督:リチャード・リンクレーター 出演:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オープリー・デュラン 1959年の夏。ひとりの若者が、念願だった初長編映画『勝手にしやがれ』の撮影に挑む。その名はジャン=リュック・ゴダール。映画への夢と情熱を共有した撮影現場は熱気に満ち、やがて伝説となるラストシーンへ突き進んでいく。神話化された傑作誕生の瞬間を軽やかに描き出し、映画をつくる歓びそのものを鮮やかに蘇らせた一本。 7月10日(金)全国公開 配給:AMGエンタテインメント 公式サイト |
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『急に具合が悪くなる』公開記念 ヴェルジニー・エフィラ特集
偶然出会った2人の女性の交流と世界に対峙する姿を描き出す濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる』の公開を記念し、同作に主演し、数々の作品で現代を生きる女性像を等身大の輝きでしなやかに体現している今、もっとも注目すべき女優のひとりヴィルジニー・エフィラの出演作を特集。5/26(火)には本映画祭プレイベントとして、ヴィルジニー・エフィラをお迎えしたトークショーを開催します。
『急に具合が悪くなる』6月19日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給:ビターズエンド
公式サイト
『急に具合が悪くなる』6月19日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給:ビターズエンド
公式サイト
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『カプリス』 (Caprice d'Emmanuel Mouret) フランス/2015年/100分/カラー 監督:エマニュエル・ムレ 出演:エマニュエル・ムレ、ヴィルジニー・エフィラ、アナイス・ドゥムースティエ 教師のクレマンは、ひょんなことから大ファンだった有名女優アリシアと付き合うことに。順調に見えた関係は、自由奔放な女性カプリスの登場によって揺らいでいく。ロメール映画を想起させるムレのラブコメディで、エフィラはアリシア役を優雅かつ繊細に演じ、人気を博した。 |
©D.R. |
『ヴィクトリア』 (Victoria de Justine Triet) フランス/2016年/97分/カラー 監督:ジュスティーヌ・トリエ 出演:ヴィルジニー・エフィラ、ヴァンサン・ラコスト、メルヴィル・プポー 30代半ばの敏腕刑事弁護士ヴィクトリアは、恋愛面では虚無感を抱え、出会いはもっぱらTinder頼み。離婚後、二人の娘と暮らす日々も決して平穏ではない。そんな中、親友ヴァンサンが結婚式で恋人刺傷の容疑をかけられ、彼女が弁護を引き受けることに。ヴィルジニー・エフィラは職業的な強さと内面的な脆さのあいだを自在に行き来しながら生きる現代女性を鮮やかに演じている。 |
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『パリの記憶』 (Revoir Paris d’Alice Winocour) フランス/2022年/105分/カラー 監督:アリス・ヴィノクール 出演:ヴィルジニー・エフィラ、ブノワ・マジメル、グレゴワール・コラン、マヤ・サンサ 2015年のパリ同時多発テロを想起させる事件を背景に、現代フランス映画を代表する重要な映画作家のひとりヴィノクールが心の傷と再生を静かに描く。ヴィルジニー・エフィラ、は、トラウマ後の揺れる感情と再生への希求を繊細に体現し、セザール賞最優秀女優賞を受賞した。 |
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『美しく、黙りなさい』公開記念 デルフィーヌ・セリッグ特集
伝説的女優デルフィーヌ・セリッグの唯一の監督長編作品『美しく、黙りなさい』が50年を記念して全国で劇場公開されます。映画とジェンダーについて23人の女優たちが勇気をもって語ったこの歴史的重要作の公開を記念して、セリッグの代表作やドキュメンタリーを特集します。
『美しく、黙りなさい』7月24日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:ムヴィオラ
公式サイト
『美しく、黙りなさい』7月24日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:ムヴィオラ
公式サイト
© Chantal Akerman Foundation |
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』 (Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles de Chantal Akerman) ベルギー/1975年/200分/カラー 監督:シャンタル・アケルマン 出演:デルフィーヌ・セリッグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ 息子とブリュッセルのアパルトマンで暮らす主婦ジャンヌの日常。その執拗なまでの家事の反復は、観る者に時間の経過そのものを体感させ、やがて反日常の訪れを予感させる不穏な空間を立ち上げる。アケルマンの代表作にして、映画史においてもエポックメイキングな作品。 |
©D.R. |
『《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって』 (Autour de Jeanne Dielman de Samy Frey) フランス/1978年/78分/モノクロ 監督:サミー・フレイ 出演:シャンタル・アケルマン、デルフィーヌ・セリッグ 『ジャンヌ・ディエルマン』の撮影を、セイリグの恋人サミー・フレイが撮影し、アケルマンが編集した貴重なドキュメンタリー。セリッグとアケルマンがどのように「ジャンヌ・ディエルマン」という人物像を築き上げていったのか、演出をめぐる細やかなやり取りを通して浮かび上がる。 |
©D.R. |
『デルフィーヌとキャロル』 (Delphine et Carole, insoumuses de Callisto Mc Nulty) フランス=スイス/2019年/68分/カラー、モノクロ 監督:カリスト・マクナルティ 出演:キャロル・ロッソプロス、マルグリット・デュラス、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、シャンタル・アケルマン セリッグと、ビデオアートのパイオニア的存在となったキャロル・ロッソプロスの出会いを描く。二人は協同し、1970年代のフェミニズム運動の只中にビデオカメラを手に飛び込んでいく。その活動は世界の支配的な常識を揺るがす、非妥協的、不遜で過激なユーモアに溢れるものだった。 |
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