OUTSIDE IN TOKYO
Abdellatif Kechiche INTERVIEW

2013年のカンヌ国際映画祭で満場一致のパルムドール賞に輝き、フィリップ・ガレルに「フランス映画を救った」とも言わしめたという、傑作『アデル、ブルーは熱い色』がいよいよ劇場公開される。

ジャック・ドワイヨンの驚くべき新作『ラブバトル』(12)で久しぶりに日本の観客を喜ばせてくれるであろうサラ・フォレスティエが、2004年に主演を務めたアブデラティフ・ケシシュ監督の長編第2作『身をかわして』(04)には、彼女の顔をクローズアップで捉える、はっとするほど美しいショットがしばしば紛れ込んでいるが、ケシシュ監督の集大成と言うべき『アデル、ブルーは熱い色』は、そうした美しいショットの連べ打ちで見るものを圧倒する。大家族の中で最も父想いの娘が父親を救うためにとった行動に涙が止まらない『クスクス粒の秘密』(07)の主人公(アビブ・ブファール)もまた“アデル”(アラビア語で”正義”の意)と呼ぶに相応しかったが、『アデル、ブルーは熱い色』は、『ラブバトル』に匹敵する、抜き差しならない愛欲を描いた映画ながら、燃え上がる炎が消え去ったところで、人々が続けて行くことになる“生活”を描いているところに、ケシシュ監督の映画作家としてのスケールの大きさを感じさせる。実際、やはり衝撃的に素晴らしいと形容すべきアデルとエマの”性描写”を描くスクリーン上の時間よりも、アデルの”職業”である”教師”としての、子どもたちと共にある時間により多くのスクリーン上の時間が費やされていることは忘れてはならないだろう。挑戦的でアグレッシブ、革新的で偉大なアーティストの側面を誠実なモラリストが支えていることの素晴らしさを、『アデル、ブルーは熱い色』は体験させてくれる。

ここに、2013年の第26回東京国際映画祭の特別招待作品として上映された際に六本木ヒルズで行われたアブデラティフ・ケシシュ監督の舞台挨拶と、その翌日、アンスティチュ・フランセで行ったケシシュ監督の単独インタヴューを掲載する。

1. 二人が一瞬視線を交差させる、その運命的な出会いがアデルの人生を根本的に覆してしまう

1  |  2  |  3  |  4  |  5



MC:(2013年の)カンヌ国際映画祭で満場一致でパルムドールを獲得した美しい愛を描く衝撃の感動作が、遂に日本で初めてのお披露目になります。スティーブン・スピルバーグ審査員長は、アブデラティフ・ケシシュ監督に加えて、レア・セドゥとアデル・エグザルコプロス、主演女優お二人にもパルムドールを贈った、(コンペティション部門では史上初の)快挙です。それではお迎えしましょう、アブデラティフ・ケシシュ監督です。
アブデラティフ・ケシシュ:日本の皆さん、こんにちは。ケシシュです。

MC:先程、日本にいらしたばかりですよね?
アブデラティフ・ケシシュ:今回が初めての来日なんです、ですから東京も初めてで、とても嬉しいです。

MC:背が高くて、スマートで、知性の塊みたいな感じがするのですが、もしかしたら以前俳優さんをやってたんじゃないですか?って、先ほど伺ったんです。
アブデラティフ・ケシシュ:そうですね、でもそれは監督になる前のほんの束の間のことでしたので。

MC:作品のポスターに載っていますお二人の主演女優、パルムドールにも輝きました二人の女優さんを、どんな風に選ばれたんでしょうか?
アブデラティフ・ケシシュ:私自身、映画の仕事をしていて、女優さんや男優さんと仕事をするのがとても好きなんです。どういう風に二人を選んだかと言いますと、まずレア・セドゥさんについては、私がイメージしていたヒロインの一人にとても近いものがあるなと思ったんです。それはつまり、知的な階級で、ブルジョワで、文化教養が高いということ、そして彼女の存在から醸し出されるもの、彼女の血筋、これまで生きてきた人生、そういうものが私が描こうとしていたヒロインの一人ととてもマッチしているというのがキャスティングの理由でした。そしてアデルの方は、彼女には生きる貪欲さがあって、それがとても官能的なんですね、まるで人生をリンゴを齧るように齧りたい!というようなところ、それから彼女の持っている勇気、光輝くまばゆさ、現れた途端にスクリーンを占領してカメラを惹き付ける、だからこそ彼女しかないと思ったんです。

MC:この作品は、原作がコミックということですが、何故このコミックを映画化しようと思われたんでしょうか?
アブデラティフ・ケシシュ:実は、このコミックとは偶然出会ったんです、ちょっと本屋さんに寄ってみたところ、イラストとして、グラフィックとして素敵だなと目について手に取ったわけです。そして中身を見てみると、二人の女性の出会い、それがアデルとエマなわけですけども、その出会い方がとても美しいと思ったんですね。その出会いは、どういう風な出会い方だったかというと、二人が信号を待っているわけです、両脇で、そして信号が変わって横断歩道を渡る時に二人が一瞬視線を交差させる、その運命的な出会いがアデルの人生を根本的に覆してしまう、そういう運命的な出会いをまず最初に映画にしたいと思ったのです。

『アデル、ブルーは熱い色』
原題:LA VIE D'ADELE BLUE IS THE WARMEST COLOR

4月5日(土)より 新宿バルト9、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
共同脚本:ガリア・ラクロワ
原作:ジュリー・マロ
撮影:ソフィアン・エル=ファニ
出演:アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ、サリム・ケシゥシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラユルト、アルマ・ホドロフスキー、バンジャマン・シクスー

© 2013 - WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES - RTBF(Television belge)- VERTIGO FILMS

フランス/2013年/179分/カラー/ヴィスタ
配給:コムストック・グループ

『アデル、ブルーは熱い色』
オフィシャルサイト
http://adele-blue.com


地中海映画祭2013
1  |  2  |  3  |  4  |  5