OUTSIDE IN TOKYO
Press conference

ダスティン・ホフマン『カルテット!人生のオペラハウス』記者会見全文掲載


テキスト・採録・写真:親盛ちかよ
2013年4月9日 ザ・リッツカールトンにて
2013.4.19 update

75歳にして初めてメガホンを取ったダスティン・ホフマンの監督作品『カルテット!人生のオペラハウス』は、ヴェルディ「椿姫」の「乾杯の歌」が流れるなか、幕を開く。華やかな三拍子のワルツに彩られるスクリーンには、かつて栄光を極めた、年老いた音楽家達のための施設「ビーチャムハウス」に滞在する老人がひとり、またひとりと映し出されていく。

経営難に陥っているビーチャムハウスは、ホームに集まった英国の旧四大オペラ歌手による伝説のカルテット(リゴレットの四重唱)をコンサートに据えることで、起死回生をはかろうとする。この四大スターには、2度のアカデミー賞受賞に輝くマギー・スミス(78歳)、トム・コートネイ(75歳)、ポーリーン・コリンズ(72歳)、ビリー・コノリー(70歳)が実年齢そのままの設定で臨み、彼らの脇を固める、アン・ラングレー役を演じた20世紀後半を代表するオペラ歌手ギネス・ジョーンズ、ジャズピアニストのジャック・ハニーボーン、トランペットのロニー・ヒューズといった本物のミュージシャンたちが映画の味わいを深めている。

『カルテット!人生のオペラハウス』は、劇中で引用されているベティ・デイビスの「old age is not for sissies./年寄りは意気地なしには務まらない」という言葉が如実に語っているように、ダスティン・ホフマンらしいブラックユーモアが炸裂するコメディの中にも、人の成長には終わりがないことを、何歳であろうとも生きるのは「今」でしかないことを気づかせ、勇気づけてくれる映画である。終盤のコンサートでギネス・ジョーンズが歌うアリアの素晴らしさが何よりも雄弁にそれを教えてくれるし、オープニングから流れる「乾杯の歌」の歌詞にもそれは歌いあげられている。
「またと帰らぬ日のために杯をあげよ!この世の命は短くやがては消える。だから今日も楽しく!」
ここに、来日したダスティン・ホフマン監督の記者会見全文を掲載する。

1. 妻は、「やらないのであれば離婚する。」と言いました

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ダスティン・ホフマン:会場においで下さった皆様、ありがとうございます。映画を観られた方がどのくらいいらっしゃるか解りませんが、気に入っていただけていれば嬉しいです。まだ観てらっしゃらない方、どうぞお引き取り下さい (笑) 。
Q:なぜこのタイミングで映画を監督しようと思われたのでしょうか。また、それだけ監督を惹きつけたこの映画のテーマは何だったのでしょうか?
ダスティン・ホフマン:これまで何年も映画を撮ろうとしてきました。妻との結婚は36年になりました。妻は、私が台本を準備しながらも時が熟していないと思えたり、資金がつかなかったりして二の足を踏むのを傍らでずっと見ていたわけです。飛込み台の端まで行きながらも決して飛び込まない私をね。
今回は、飛び込むべきだと告げられました。「今を逃したら次はないわ。もう75歳なのよ」ってね。だから今度こそ撮ると請け合いました。台本を気に入りましたし、老いてピークを過ぎた音楽家達という内容にも馴染みがありました。妻が、「やらないのであれば離婚する。」と言うのでこう言い返しましたよ。
「よし、やるよ。ただこれで成功しなければ、こっちから離婚だ。」(笑)

『カルテット!人生のオペラハウス』
英題:QUARTET

4月19日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開

監督:ダスティン・ホフマン
脚本:ロナルド・ハーウッド
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:マギー・スミス、トム・コートネイ、ビリー・コノリー、ポーリーン・コリンズ、マイケル・ガンボン

©Headline Pictures (Quartet) Limited and the British Broadcasting Corporation 2012

2012年/イギリス/99分/カラー/シネマスコープ
配給:ギャガ

『カルテット!人生のオペラハウス』
オフィシャルサイト
http://quartet.gaga.ne.jp/
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