OUTSIDE IN TOKYO
Francis Ford Coppola Interview

フランシス・フォード・コッポラ インタヴュー
『コッポラの胡蝶の夢』『テトロ 過去を殺した男』『Virginia/ヴァージニア』を撮り終えて

2. 小さな映画の方が、大きなアイデアに満ちている、大きな映画ほどアイデアは小さくなる

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OIT:劇作家になろうとしたあなたの見る、小さな物語に比べて大きな物語の魅力というのはどんなものですか?
FFC:まず、自分はこう思いたい。(物語というか)小さな映画の方が、大きなアイデアに満ちているということ。大きな映画ほどアイデアは小さくなる。たとえば、10億の映画だと、自分のできることに逆に大きな制限が生じる。何ができるか、何が表現できるかにも。周りは投資を懸念する人間たちに囲まれることになる。そうなると、大きく制限された体験となる。逆に小さな映画ならば、まあ、そうなると完成した後も誰も気にしてもらえないけどね(笑)。まあ、それで放っておいてくれるし、自分で学べることは確かに学んでいける。

OIT:いま我々は大きな物語をあまり語れない状況が続いていると思うんです。アメリカだと9.11以降もそうですし、大きな物語の意味についてはどう思いますか?
FFC:大きな物語というのは、大きな予算ということではないのかな。より大きな劇場でかけるとか。そうなると、実現するために人の意見をもっと聞かなければいけなくなる。

OIT:それが大きな視野という意味での物語では?
FFC:まあ、それも実現するにはもっと大きな予算が必要という意味では変わらないね。

OIT:僕は『テトロ』をはじめ、最近のより小さな映画を見た時にうれしくなりました。それを新しいコッポラという人もいます。それは、もともと始めた時の感覚に戻っていこう、戻っていきたいという意志があるのですか?
FFC:そうだね。今はまた一から始めているような気持ちでやっているよ。いま書いている脚本は『テトロ』よりもずっと大きな物語だ。実際、その資金をどうやって集めたらいいのかもよく分からない。そのようなドラマは現在、それほどポピュラーではないから。でも、また一から始めたかったのは、『ゴッドファーザー』を作った時に、自分が二度とそこに対抗できなくなることは分かっていたんだ。だから、そこに対抗しようとしないということは、また最初からやり直すことしかないと思った。つまり、それが新しい方向に進む、ということになる。

OIT:つまり、この『テトロ』から3作で、もう一度自分の築いたその大きな山、映画を乗り越えようとしているということですか?
FFC:うん、そうだね。また学生の状態に戻りたいと思ったんだ。また一からやって、学生が冒すような過ちをまた一から経験して、そこから成長して、いまようやく大きな映画を撮る準備ができてきたような気がしている。だから人生の中でキャリアを2つ持てばいいと思ったんだ。ただ若かりし頃の成功を追い求め続けるのでなくてね。

OIT:あなたは同時に、自分でビジネスを維持することで、自分の映画資金も賄うという活動の仕方も選んできたと思うのですが、そもそもワイン・ビジネスを展開し始めた時というのは、『ゴッドファーザー』の成功があったから可能だったということですか?
FFC:もちろんそうさ。それまでお金なんてなかったからね。だから『ゴッドファーザー』で入ってきたお金で、自分の住んでいたナパ・バレーの土地を買ったんだ。


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