OUTSIDE IN TOKYO
Guillaume Brac INTERVIEW

ギヨーム・ブラック『やさしい人』インタヴュー

4. 人が見つけられないところに何かしらの美を見つけることに私は興味があります

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OIT:確かにおっしゃる通りかもしれません。ヴァンサンの風貌が特別なのかもしれないですね。
ギヨーム・ブラック:確かにそうですね、それは大きいと思います。ヴァンサン・マケーニュという俳優が興味深いのは、見かけは一見それほど際立っているわけではないんですけれども、一方で何か気になるというか、魅力的な部分も持っています。そういったこともあって観ている観客の方が彼に共感することが出来るし、同一視することが出来るのだと思います。それは恐らく彼の持っている顔が大きいのではないかと思います。体型的には際立ったものはないかもしれませんけれども、彼の顔、特にその眼差しがとても魅力的で、みんなその眼差しに惹き付けられるんだと思います。私が映画との関係で大切に思っていることは、他の人が見つけられないような所に自分の美学を見つけることです。例えば、私の映画に出演して頂いている俳優の中で『女っ気なし』のコンスタンス・ルソー(『女っ気なし』のジュリエット役)を除いて他の俳優達は恐らく私だからこそ見つけることのできた、彼らの美点があるのだと思います。そういう風に、人が見つけられないところに何かしらの美を見つけることに私は興味があります。それは例えば、美術や撮影をする場所についても同じことが言えます。みんなが美しいと思うコートダジュールやプロヴァンス地方で映画を撮りたいとは決して思わないのです。悲しみや惨めさ、一見してとても美しいとは思えないようなものの中に、少し見方を変えることによって美しいものを発見する、そういったことに私はとても興味があります。先程名前を挙げたコンスタンス・ルソーですけれども、大変美しい、誰が見ても綺麗な女優さんですけれども、彼女にも不完全さがあって、彼女は眼差しに弱冠問題があって、一つに焦点を合わせて見ることがなかなか出来ないんです。そういう意味ではある種の怪物性というか、まあ怪物という言葉は彼女を表現するには強過ぎる言葉ですけれども、あれほど美しい女優さんでも、そういうちょっと不思議な点があるんですよね。

OIT:映画のトーンとしてあの音楽を選ばれた理由は?
ギヨーム・ブラック:彼の音楽を聞いて心から感銘を受けたからです。この脚本を書き始めた当時から、ずっとこの音楽を聞きながら脚本を書いていたので、もう私の中ではこの音楽とこの映画は切り離せない存在となっていました。ただロヴール(ティモテ・レニエ)というこの歌手の楽曲を使うのは、実はとても高いんですね。ですからプロデューサーからもっと安い歌手に変えてくれないかとは言われたのですが、私の中ではオーガニックに繋がっている存在だったので、この人以外には考えられないと言って拒否しました。

OIT:最後にちょっとお聞きしたいのですが、ニューヨークのマンブルコアの人達を意識したことはありますか?
ギヨーム・ブラック:ノア・バームバックですね。グレタ・ガーウィグの映画の中では『Greenberg』(10)が一番好き映画です。『Greenberg』は確かに念頭にありましたね。


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