OUTSIDE IN TOKYO
Hilla Medalia INTERVIEW

『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』を見ると、知らない内にいかに多くのキャノンフィルムズ作品を見ていたのかということに驚かされる。しかも、個人的には映画館で映画を見始めた最初期のことで、それらの作品群の中には自分と映画との関わりを決定的に深めてくれた作品が幾つも含まれている。それらの作品名を恥ずかし気もなく列挙すると、ジョン・カサヴェテス『ラブ・ストリームス』(84)、アンドレイ・コンチャロフスキー『マリアの恋人』(84)、ロバート・アルトマン『フール・フォア・ラブ』(85)、バーベット・シュローダー『バーフライ』(87)、ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールのリア王』(87)、ドゥシャン・マカヴェイエフ『マニフェスト』(88)といった、いわゆるアートフィルム系の映画群ということになるのだが、まさにこれらの作品群がキャノンフィルムズの経営を傾けさせていたということを本作を見て知るにつけ、メナヘム・ゴーランという希代の映画人のサクセスストーリーと表裏一体の関係にある、人の人生のホロ苦さにある種の感慨を覚えざるをえない。もちろん私にとっては、これらの作品群との出会いは人生の豊かさに気付かせてくれる“恩寵”以外の何物でもなく、そんな恩義を感じながら、この素晴らしい“成功”と“失敗”の物語を私たちに届けてくれたヒラ・メダリア監督にお話を伺った。

1. メナヘムとヨーラムは常に言い争っていて、答えも考え方も全く正反対なんです。
 その対立を見て、これは作品になると思ったのです。

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』を見て、自分でも知らない内に数多くのキャノンフィルムズ作品を見ていたことに驚かされました。
ヒラ・メダリア:世界各地を旅して回っていると、ホテルに滞在するたびにテレビで彼らの映画を再放送しているんです。それほどキャノンフィルムズの映画は世界中で影響を与え続けているということだと思います。

OIT:この映画を作ることになった経緯を簡単にお話頂けますか?
ヒラ・メダリア:まず背景をお話しますと、イスラエルではメナヘム・ゴーランとヨーラム・グローバスの2人はとても有名で、イスラエルの古典的な商業映画のほとんどは彼らの手によって作られたといっても過言ではありません。イスラエルでは彼らの映画のことを“ブレッカス・フィルム”と呼んでいます。“ブレッカス”というのは軽食用のパイのようなお菓子のことなんですが、それだけ軽くて、一般的だということを意味しています。それである日、ヨーラムの息子さんに会った時に、僕の父親とメナヘムについての映画を作るべきだと言われたんです。ドキュメンタリーの監督をしていると、そういうことをよく言われるのですが、彼らには会ってみたいと思っていましたから、会わせてもらえるようセッティングを依頼しました。私自身、キャノンフィルムズについてはそれほど詳しく知っていたわけではないのですが、彼らに会って2人のやりとりに強い関心を持ちました。ヨーラムがあることを言うと、メナヘムは逆のことを言う。常に言い争っていて答えも考え方も全く正反対なんです。その対立を見て、これは作品になると思ったのです。

OIT:制作にはどれくらいの期間をかけましたか?
ヒラ・メダリア:3年ちょっとです。

OIT:最後に2人が一緒になるシーンがありますが、それまでは2人を別々に撮っていますね。
ヒラ・メダリア:最初に彼らに会った時に、彼らを別々に撮るべきだと思ったんです。最後に彼を引き合わせようと決めたのは、撮影を始めてから1日、2日経ってからでした。メナヘムはとてもオープンな性格で、インタヴューにも沢山応じていたのでアーカイブ映像も豊富にありました。逆にヨーラムの方はインタヴュー映像など全くない、しかもヨーラムは6ヶ月間説得してもなかなかインタヴューに応じてくれなかった。やっと約束を取り付けたと思えば、当日にドタキャンされるような状態でした。最初にメナへムを撮ったのは、ヨーラムがドタキャンしたから一人で撮ったのですが、その時からやはり別々に撮ろうと思いました。2人の考え方の違いを平行して見せていって、最後に会わせるという手法を思いついたんです。

OIT:その方法は、撮り始めてから思いついたということですか?
ヒラ・メダリア:1日目を撮った後に考えたことです。初日にメナハムが来て、ヨーラムは来なかった。映画の最後で、ヨナヘムが歩いてきてヨーラムに挨拶をするシーンがありますよね?あれは実は、撮影の初日に撮ったものなんです。ヨーラムはその時ドタキャンしたんですが、彼のスタジオで撮影していたので、彼はたまたま立ち寄ってきてメナヘムに挨拶だけして帰って行った。あのシーンはそういうシーンだったんです。そこから別々に撮ろうと決めて、同じ日に撮影があっても別々の場所で撮影して、初日に撮った映像を入れて、映画館のシーンへと繋げたのです。実は一回だけ二人を一緒にインタヴューしたことがあるのですが、その一部だけ別々のシーンに使いましたが、二人が一緒に映っている場面は使いませんでした。

『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』
英題:THE GO-GO BOYS: THE INSIDE STORY OF CANNON FILMS

11月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

監督:ヒラ・メダリア
撮影:オデッド・キルマ
出演:メナヘム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス、シルヴェスター・スタローン、ジャン・クロード・ヴァンダム、ジョン・ヴォイト、チャールズ・ブロンソン、チャック・ノリス、イーライ・ロス

2014年/イスラエル/89分/カラー/デジタル
配給:東京テアトル、日活

『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』
オフィシャルサイト
http://www.cannonfilms2015.com/
thegogoboys.html


メナヘム・ゴーラン映画祭
11/14(土)〜27(金)
シネマート新宿、シネ・ヌーヴォにて
http://www.cannonfilms2015.com/
golanfes.html
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