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KOMORI HARUKA & SEO NATSUMI INTERVIEW

小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』インタヴュー

4. 共感した部分は凄く自信を持って語れる、そこが大事だねって(瀬尾)

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OIT:『二重のまち』には春夏秋冬、4つの物語があって、プロジェクトの中では、それぞれの物語が4人の旅人に割り振られています。その割り振りは、どのように行われたのでしょうか?
瀬尾夏美:プロジェクトを始める時に、スカイプでオーディションをして、50数名の中からこの4名選ぶというプロセスがありました。元々、春夏秋冬を4人それぞれに割り振ろうっていう構想があった上でのオーディションだったので、その時点で話しながら、この人だったら任せたいねみたいな感じで決めていきましたね。
OIT:この映画の中では、旅人たちの名前が示されていません。それは敢えてですか?
小森はるか:敢えてですね。“語り直し”の黒背景場面の撮影は、最初は、自分の名前と出身地とどういう立ち位置の人かという、自己紹介から始まってるんですけど、そのシーンを入れるかどうかは編集初期の段階で検討しました。この映画の中の主人公達は、実際に○○さんという個人として、ワークショップで知ることになった人達でもあるんですけど、彼らは“出演者”として来てくれた部分も同時にあるので、“旅人”という役を担っているパフォーマーとしてその人達を映していくことの方がこの作品にとっては重要だと思ったんですよね。その人個人の話に傾いてしまうということは避けたかったし、4人は、“旅人”という役をむしろ引き受けてくれた人達でもあったと思うので、映画の中で、彼らの名前は必要な情報ではないという風に考えました。
OIT:映画の流れとしては、旅人の一人目がバスで移動して、かつて来たことのある場所をもう一回訪れるという語りがナレーションで流れますが、そこも“二重”というキーワードがあるように、旅人が映っているだけの時間ではない語りが重なる中で、映画が始まっていきます。その旅人は、最初に女子高生二人組の話を聞いて、自分は外から来た人間だけど感覚としては同じようなものだよという風に言ってもらって、ちょっとホッとしたということを言いますね。それぞれの旅人が地元の人たちと接していく中で、接点というか共通項を見つけていくわけですが、オーディションなどの段階でそういう風に繋がっていくことを想定していたのでしょうか?
瀬尾夏美:そもそもは、『二重のまち』の春夏秋冬のモデルになった人達が実際に高田にいて、そのモデルに会いに行くか、あるいはそのモデルになった人と似た境遇、共感できそうな、近しいポジションにいる人達とキャストが出会っていくというような構造にはなっています。ですから、旅人と会う側が共感できるかどうかはそんなに詰めてはないんですけど、旅人を受け入れてくれる人達には事前に会いに行って話を聞いたり、旅人の方のキャラを説明して、こういう子が来るんですよ、山形から、とか、彼も地震があった時は中3で、みたいな話をしてるんです。あるお宅は、このご夫婦ならホームステイを受け入れてくれそうだなと思っていたら、(旅人の子は)うちの息子と同い年だという話になって、その子が中心になって案内するようにしましょう、という流れになり、共通項がどんどん見つかっていくということもありました。そういう感じで偶然もありましたけど、やっぱり話を聞く、語るっていう現場は、全然境遇が違ったり、背景が違う人達同士でも、何かしらの共感みたいなものがないと会話にならないので、そこは多分、聞き手も語り手も意図的に引き出し合おうとする、良い感じの空気感を作ってくれていたと思いますね。あと“語り直し”をみんながしている場面は、私が台本的な物を書いてるんです。箇条書きの台本みたいな物があってそれを元にみんながカメラの前に立ったり、旅人仲間の前で喋ったりするわけですけど、その時にやっぱり、私も同じって言われてホッとしたみたいなことが彼らから報告される時に、ああここ大事だなとなるんですね。他県から来た私と一緒って言ってくれましたとか、一緒にプレステやったのが良かったとか、やっぱり彼らの語りが生き生きとしてくるので、それが多分映画を観る人にとっても大事な感覚だから、大切にしたいなと思いました。むしろ、体験を語り伝えるみたいなことで言うと、“正確さ”が一回聞いてきただけだと欠ける部分もあるし、追いきれない部分もあるけど、そうやって共感した部分は凄く自信を持って語れる、そこが大事だねって話はしましたね。

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