OUTSIDE IN TOKYO
Michelangelo Frammartino INTERVIEW

イタリアの牧歌的な風景の中、静かな時間が流れる。これまでもずっとずっと流れてきたように。小さな町で、おじいさんは山羊の群れを山へ連れ出す。ある日、はぐれた仔山羊が一本の木で一晩を明かす。そしてその木は地元の祭のために倒される。そして木はおじいさんによって焼かれ、炭となる。そしておじいさんは生命を静かに終え、新しく仔山羊が生まれる。

そんな生命の循環は、不思議な長回しで撮影され、伝統的なカラブリアの村の人々や動物や自然物が同じ目線で映し出される。台詞はない。そのためか、自然の音が際立って聞こえる。カメラは演出などないかのように、淡々と動く“もの”たちをおさめる。エコロジーを推奨するような映画でもなければ、警鐘を鳴らすわけでもない。

そんな映画を撮ったのがイタリアのミケランジェロ・フランマルティーノ。カラブリアに生きるふつうの人々を使い、不思議な映画を撮り上げた。2003年の『IL DONO』で成功をおさめた後、本作ではカンヌをはじめ、特に前評判もないまま、徐々に波紋を広げていった。何も起きないからこそ観客は見つめることに徹する。そして見つめるからこそ、ある生命のサイクルが浮かびあがる。そんな、ある意味、時代のスピードと逆行するような『四つのいのち』について聞いてみた。

1. かつてピタゴラスがいたといわれる土地、カラブリアの4つの王国

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):このような形で映画を撮ろうと思った最初の衝動を教えていただけますか。
ミケランジェロ・フランマルティーノ(以降MF):この映画の構想は(イタリアの)カラブリア(州)を旅行している時に生まれました。友人のカメラマンが、カラブリアにはこんな場所があるなどと、色々と見せてくれたのです。友人は炭焼き小屋や、そんな炭焼きの風景をとても愛しており、そこから映画のアイデアが生まれました。映画を撮る上ではやはりいくつもの場所が必要でした。それをどんな風に発展させていけるかを、その場所を訪ねている間に思いついたのです。自分にとって大きな驚きとなったのは4つの場所です。基本的に、ぱっと見て全く関連もないように思える4つの場所を、どう繋げたらいいかが次第に分かってきました、つまり、変わった4つの繋がり/絆を見つけることができたのです。最初は牧夫、それから木があり、炭焼きがあり、ヤギや動物たちがいました。それはある種、魂の旅と言えると思います、そんな見方から、それを繋げることができると気づいた時には驚きましたね。

OIT:その4つの進行/繋がり/移行についてもっと詳しく教えてもらえますか。
MF:カラブリアという土地にはアニミズムが宿っています。そこにはあまり注意を払っていませんでした。そこにあまり重要さは感じていなかったんですね。例えば、民間信仰などはバカげたことと思っていました。ただ、僕はこれを4つの王国と呼んでいるのですが、その4つのものを繋げることを、自分でもあまり求めていたわけでもないのに、それらを繋ぐものが浮かびあがってきた時、それが非常におもしろいものであると感じられたんですね。それで結局ハマってしまい、その4つのものを繋げるものは、民間の伝統、つまり、ふつうの人が伝統的にやっていることがあり、その4つのものが出て来た時に、無関心でいられなくなったわけです。それと同時に、ピタゴラスがカラブリアにいたと言われています。ピタゴラスは輪廻を説いていたわけですが、彼がカラブリアにいたとか、アニミズムといったものに、簡単に触れることはできないはずのものに、触れざるを得ない状況になり、自分がハマってしまったわけです。もうひとつは、アニミズムや輪廻転生など、向こう側に何かがあるという考え方です。そこにエネルギーなどいろんなものがあったりするわけですが、映画もそうですね。自分が映画を見る時に感じることは、そのイメージの向こうに別の何かがあるというものです。そこにも繋がり、すごく惹かれたわけです。

『四つのいのち』
原題:LE QUATTRO VOLTE

4月30日(土)より、シアターイメージフォーラムにてロードショー
他全国順次公開

監督・脚本:ミケランジェロ・フランマルティーノ
出演:ジュゼッペ・フーダ、ブルーノ・ティンパノ、ナザレノ・ティンパノ

2010年/イタリア、ドイツ、スイス/88分/ステレオ/ヴィスタ/カラー
配給:ザジフィルムズ

© Vivo film,Essential Filmproduktion,Invisibile Film,ventura film.

『四つのいのち』
オフィシャルサイト
http://www.zaziefilms.com/
4inochi/
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