OUTSIDE IN TOKYO
PEDRO COSTA INTERVIEW

ペドロ・コスタ『ホース・マネー』インタヴュー

2. ヴィタリーナとは、『ホース・マネー』の後、小さな音楽劇を一緒に作ったりしていた

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OIT:“台所”といえば、監督は昨日の青山監督との対談で、ジョン・フォードは、“台所にふたりの人間がいる”映画は撮れないと語ったが、自分はそのような映画を撮ろうと思うと語りました。先日、逝去されたシャンタル・アケルマン監督は、まさに“台所にひとりの人間がいる”映画を撮ったわけですが、シャンタル・アケルマン監督とは、一緒にオムニバス映画を作ったり、個人的な交流もあったかと思います。彼女の映画から影響を受けることはありましたか?
ペドロ・コスタ:シャンタル・アケルマンの仕事には凄く敬意を抱いているよ。とても尊敬する、ひとりの友人でもある。ただ、僕の場合は、彼女に比べると、より古典期な映画に惹かれている、まさしく、ジョン・フォードであるとか、アメリカの古典映画であるとか。アケルマンの場合は、より実験的なもの、アヴァンギャルドなものに惹かれている。そこが違うと思う。

OIT:コスタ監督の映画は、作品を追う毎にサーガのように成長しつつあるように感じます。ご自身でもそのような感覚をお持ちですか?
ペドロ・コスタ:それはあるかな。ただ、もちろん、サーガのような作りということを最初から考えていたわけではないけどね。例えば、次の映画についても、たぶん、『ホース・マネー』に出て来たヴィタリーナ、そして、ヴェントゥーラも少し出て来るかもしれない、けれども、どういうことについての映画になるのかも、まだ全然わからない。いつも撮り始めてみて、初めてわかるというものだから。最初からサーガのようなものを作ろうとして作ったわけではないんだ。

OIT:『ホース・マネー』の後、ヴィタリーナとは何か共同作業を進めつつありますか?
ペドロ・コスタ:彼女とは今でもよく会っていて、『ホース・マネー』の後、小さな音楽劇を一緒に作ったりしていた。

OIT:それは撮影していないんですか?
ペドロ・コスタ:舞台だったから、劇場に備え付けの固定キャメラで撮っただけで、映像としてはあまり良いものではない。リスボンのとても大きなコンサート会場で、バロック音楽を使った音楽劇なんだ。出来れば他のところでもやりたいと思ってるよ。

OIT:ヴィタリーナは歌ったのですか?
ペドロ・コスタ:そうさ、彼女も歌ったんだ。4人の歌手が出ていて、その内、3人はモザンビークの女性、1人はカーポ・ヴェルデの男性だ。そのチームで、モンテヴェルディやシューベルト、バッハといった作曲家たちの音楽を使った、シンプルな”語り”の物語だ。3人の女性が、荷物を持って、船に乗って、移民となり、受け入れ国に到着する。そこでは亡霊たちが待っている、というのが第一部。そして、第二部では、その女性たちは掃除夫の格好をしている。彼女たちは、そういう生活に囚われてしまった、ということを歌っている。そういう劇なんだ。


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