OUTSIDE IN TOKYO
RADU MIHAILEANU INTERVIEW

ラデュ・ミへイレアニュ『オーケストラ!』インタヴュー

2. 良い嘘は使いようで、力と勇気、希望を与えてくれます

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──出演者についてはいかがですか?
ラデュ・ミへイレアニュ:メラニー・ロランは、これまでの作品を観て、凄く興味のある女優さんでした。もともと知り合いのプロデューサーが彼女を知っているということで話がつながったのです。グシュコフはもともと知らなかったので、未知数だったが、ロシアのホテルの外に立つ娼婦たちに彼について尋ねたら、大人気!これは間違いないと確信しましたね。ロシアでは、2メートルに1人づつサインを求められる大スターなんですよ。

──団員は、永いブランクがあるはずだったのに演奏直前まで自由でしたね。これはロシア人の国民性でしょうか?
ラデュ・ミへイレアニュ:理由は2つあります。1つは、ロシア人だから。ちなみに彼らはパリへは金儲けを第一目的で行ってるのは本当なんです。実際、ロシア人オーケストラの人々は、各国で平気でキャビアとか売り歩いているらしいですよ。もう1つは、30年くらいのブランクをものともしない才能の持ち主たち、ということですね。

──不遇の人生を送った人が最後に光を得る。これは全ての人に力をくれるメッセージですね?
ラデュ・ミへイレアニュ:人間が今置かれている危機は、「自信喪失」なんです。今人々がおかれているところは、環境・金銭・政治 その他全体的に自己実現が難しい。でも、この映画をみることで、夢をかなえるためのアクションは今でも無駄じゃない。ということを感じ、自己愛を感じ、人間であることの尊厳、誇りを再確認し、ポジティブな気持ちになってもらえたら嬉しいです。

──鑑賞後気持ちが明るくなること間違い無いと思います。
ラデュ・ミへイレアニュ:ある50代の女性から感想をいただきました。「私は、美しくなく、自分に自信もない。音楽も理解が出来ないと思い込んでいたが、映画を観たら自分独自の美しさを肯定でるようになり、音楽を聴きたいと思えるようになりました」

──作品をみてポジティブな嘘というのは悪くないな、と思いました。
ラデュ・ミへイレアニュ:そうですね。良い嘘は使いようで、力と勇気、希望を与えてくれます。今回は「ニセのボリショイ」という大きな嘘に小さなたくさんの嘘をまぶしました。

──日本は何度目ですか?
ラデュ・ミへイレアニュ:4回目になります。いつか日本を舞台にした作品を撮りたいという思いもありますが、次回作は、アラビア圏の女性を主人公にした話を撮ろうと思っています。

──この作品のヒットは今後の監督の作品に影響はありますか?
ラデュ・ミへイレアニュ:次回作の資金集めが少し楽になりました。でも、「人間を描く旅」をテーマにし続ける方向性は変わりませんよ。

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