OUTSIDE IN TOKYO
SETA NATSUKI INTERVIEW

瀬田なつき『PARKS パークス』インタヴュー

4. 最後にパサッと本を閉じるところは、
 シナリオには未来の図書館とか書いてあったんです

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OIT:単なる思いつきなので、きっと違うのだとは思いますが、スピルバーグの『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)はご覧になりましたか?
瀬田なつき:観ました。

OIT:それと似てるなと思う場面があって、まあそれはないですよね?
瀬田なつき:そうですね(笑)、多分観た時はおっ!て思ってたと思うんですけど、去年、『ブリッジ・オブ・スパイ』に結構感動というか、うわーってなっていたので。

OIT:トム・ハンクスがドイツから帰ってきて、電車に乗ってブルックリン・ブリッジを渡った辺りで、子ども達が壁を超えて行くところを電車から見ているシーンがあって。
瀬田なつき:ああ、ありましたね、それは思いつかなかったです。でもあそこも凄いさらっと撮ってるけど、凄いことやってるなっていう。

OIT:凄いじーんとくるシーンだし、それがハルが電車から見てるところと似てるなと思ったんです(笑)。『PARKS パークス』的にも“橋を渡る”っていう重要テーマもありますから、ひょっとしてと思ったんです。
瀬田なつき:“橋を渡る”は確かにそうですね。

OIT:あと瀬田さん的だなと思ったのが缶を蹴るシーンです。今までの作品でも女の子が缶を蹴るシーンが結構ありましたが、それってたまたまなんですか?
瀬田なつき:たまたまではあるのですが、公園でなんか動きを作ろうと思うと結構何にもなくて、何かないかな?みたいな時に、演出部の人は私の思考を分かってるから「缶ありますよ」と言ってきて(笑)。缶を蹴ると音が鳴るんですよね、落ち葉とか集めたりとかもしたんですけど、缶がやっぱりいいかってなりました。

OIT:落ち葉だと音の感触が違うと。
瀬田なつき:サバッみたいな感じになります。

OIT:なるほど(笑)。最初にプロローグってありますね、これも瀬田さんお得意の自転車のシーンで始まるのですが、プロローグの終りの方で、キャメラが純を上の方から捉えていて、やがて池、そして、街並、空、そして、タイトルが出てくる。凄く良かったと思うんですけど、あのシークエンスはどのように考えついたのですか?
瀬田なつき:公園全体を立体的に眺められる場所を探していて、公園脇のマンションの屋上を見つけました。そこから、公園や池が全部見えたので、純が、井の頭公園駅の方から漕いでくる自転車を追って、キャメラをパンしてくと、公園全体が見えてくるように撮ることにしました。池に空が反射しているのも、不思議でいいねってなって。マンションの下には、「お茶の水」という井戸があって、それが、池に流れて、街につながっているみたいにも見えないかなというアイディアもカメラマンと話していたのですが。


OIT:そのプロローグですけれども、純は最初は白いカーディガンを着ていて、途中でチェック柄の長いシャツに変わる、あれは最初の白いカーディガンの方が現在で、そこから3年前にいく、映画の構造的にはそういうことですよね。この語りの構造が面白いし、ストーリーが結構いくつも入れ込まれています。
瀬田なつき:そうですね、重なっているというか、レイヤーに分かれて。

OIT:一見ふわふわした感じがありますけど、映画の構成は凄く緻密という(笑)。
瀬田なつき:段々居るところが分からなくなっていくような。

OIT:瀬田さんらしい入れ子構造というか、ストーリーとしては純のライフ・ストーリーとハルの物語がある。
瀬田なつき:ハルが書いてたかもしれないストーリー。

OIT:ハルの存在が非常に不思議な映画的存在というか、あんまりそれを全部喋っちゃっていいのかな?という気もしますけれども。
瀬田なつき:あまりにも観る人が色んな捉え方をして、それはそれで面白いなって思ってます。

OIT:個人的には、ハルは、ミューズみたいな存在かなと。
瀬田なつき:そうですね、公園の妖精じゃないですけど、そういう感じにも見えるかもしれません。

OIT:みたいなものとして、ふわっとやってきたような印象を受けたんです。
瀬田なつき:そういう、もしかしたらいたかもしれないけど本当は存在もしなかった人、創作の中だけにいた人かもしれないように最終的に見えると面白いかなと思いました。分からないかもしれないですけど、最後にパサッと本を閉じるところは、シナリオには未来の図書館とか書いてあったんです。小説が、未来の図書館にも置かれていて、それを読んだかもしれない、そういうことに見えるかなと。


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