OUTSIDE IN TOKYO
THOMAS VINTERBERG INTERVIEW

トマス・ヴィンターベア『偽りなき者』オフィシャル・インタヴュー

2. 実は五種類のエンディングを撮影した。
 このバージョンは「フレンチ・エンディング」という名前をつけていた

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Q:彼の演技についてはどう思いますか?
TV: 本当にすばらしかったと思うよ。本当に一生懸命にやってくれた。まるでファイターのようだった。マッツの演技は見ていて心が張り裂けそうになるくらいだった。周りの人たちを本当に信用してくれていた。この映画の中の彼はまるで子供のように純真無垢に見えた。

Q:マッツが演じるルーカスは、追い詰められて、最後の手段として、自分の信じるものに向かっていきます。彼の立場になった場合、そのような行動も考えられると思いますが、そこから何を伝えようとしたのでしょうか?また、男同士の友情や人のつながりといったことに関してどうお考えですか?
TV:この映画では話の筋よりも「友情」のほうが、僕としてはずっと重要なテーマだった。困っている友人に手を差し伸べようとしても、悲しいかな、そこに嘘や噂が入り込んでくる。まるで邪悪なものが外からやってくる、アンデルセン童話みたいにね。人情、友情、村にあったそれらがすべて失われて消えていくという点がこの作品で一番重要なところだと僕は思う。

Q:スタッフの間で盛り上がったのですが、映画の最後の部分について、どのような考えをお持ちですか?
TV:まず映画製作者として僕は、問題を提起して観客に考える機会を与えることが好きなんだ。ここに一つの作品があるとした場合、それよりも一回り大きな作品がその周りに現れてくれることを期待しているんだ。過去の出来事が話されている時は、観客もまるで同じことを体験したような気持ちになり、未来のことについても同じように考えて、シーンの合間の部分に自分を重ねていく。最後の部分のガンショットは確かに大きなクエスチョンマークだね。ある種の「思考的な実験」とさえ言うことができる。ある言葉が一度発せられた場合には、それを完全に取り除くことはできないものだ。このエンディングについてはずいぶんと話し合ったんだ。実は五種類のエンディングを撮影したんだよ。このバージョンは「フレンチ・エンディング」という名前をつけていたんだ。実験的で、しかも様々な解釈が可能で、オープンだからね。でもこのオープンなエンディングは結果的に上手く作用していると思う。君たちがいろいろと意見を交わしてくれたと聞いて、とてもうれしく思うね。


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