OUTSIDE IN TOKYO
Denis Villeneuve INTERVIEW

ワン・ビン(王兵)『三姉妹~雲南の子』インタヴュー

2. 英英(インイン)の姿は、映画の中でとても美しい印象を私たちに与えます。
 その美しさはどこから来るのか?

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OIT:たとえばこの映画の場合、(監督の考える)スタートはその一年前ではなく、実際に撮影として訪れたときから始まるのですか?
WB:最初に出逢った時は、まだ映画として撮ろうという気はなかったんです。でも最初にあの子供たちに強い印象を受けたのは、ちょうどそのあとくらいですね。その頃、『無言歌』の編集にかかりきりになってしまい、あまり彼女たちのことを撮りたいと思うことは、その時期はなかったです。そのあと、フランスのテレビ局からちょうどドキュメンタリーを依頼されたこともあり、何を撮ろうかということで話し合っていた時にちょうどあの三姉妹に出逢ったことを思い出して、彼女たちのことを撮りたいと思うんだとプロデューサーに提案したところ同意してくれて、撮ることになったのです。

OIT:それはやはり長女の英英(インイン)への興味から始まったのですか?
WB:長女の英英(インイン)は、彼女たち(三姉妹)に母親が(田舎の生活がいやで出て行って)いないため、その家庭の中でとても重い役割を背負わされることになったわけです。まるでお母さんと同じように、2人の妹たちの面倒を見ているわけです。あの子ははにかみやで内向的な性格です。たとえば小学校のシーンでは、たくさんの子供がいる中でも特に孤独に見えます。そういう意味でもあの子が私に強烈な印象を与えたのは間違いありません。英英の姿は、映画の中でとても美しい印象を私たちに与えます。その美しさがどこから来るのか。それは彼女の外見ではありません。彼女は他の女の子たちと比べるとそれほど顔立ちがきれいという方ではありませんよね。でもその表情は神々しくもある。人間としての美しさ、その大きな魅力が、私を感動させました。

OIT:その内面の魅力についてもう少し伺えますか?
WB:やはり英英の魅力は、他の同じ年頃の女の子とは違った責任を背負わされているということで生じます。こんなに小さな子なのに成熟して見えるところも、母親としての役割を背負わされていて、母性愛のようなものがあの子に見えるわけです。そこが他の子と違って、より孤独を際立たせているのだと思います。ですから、子供としての単純さよりも、もうちょっと複雑なものが彼女に見えるわけです。私が時々目にしたのは、彼女の呆然とした、無表情とも言える表情で、心が痛くなるわけですが、それはやはり家庭の状況とか、ああした苦しい生活からきているわけですね。その点が、他の子と違った彼女のより大きな魅力というか、人間としての複雑さを持つ者の魅力だと思いました。


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