OUTSIDE IN TOKYO
SATOKO YOKOHAMA INTERVIEW

横浜 聡子:オン『ウルトラミラクルラブストーリー』

3. 映画は何でもありだと思っているので、これからもそうしていきたい

1  |  2  |  3



自分の映画に感覚的という表現は合いますか?
いや、感覚的と言われていること自体がよく分からないんですよ。分からないというのは、どこが分からないんだろうとか(笑)。津軽弁が分かりにくいとか、確かにそういう要素で分かりにくいことはいっぱいあるだろうけど、何が分からないのか、(私には)分からないって感じですね(笑)。

自分の信じる感覚があって、もう一方に理屈があるとすれば、どちらに従いますか?僕が感覚的と呼んだ方にも自分なりの論理があるわけですよね。
うーん、もちろん感覚ですかね。

言葉に対する思いをいかがでしょう?津軽弁は置いておいても、言葉をどう捉えてますか?
音としての楽しさや、言葉遊びみたいなものは、映画を作る時において結構楽しみたいと思ってます。ひとつの言葉でもいろんな考え方ができるように。台詞ひとつとっても、こういうことを言っているんだけど、他の意味にも捉えられるとか、そういう多面的な見方、ただの状況説明ではなく、考え方ができる言葉をできるだけ取り入れようとしています。

音感(おとかん)ですか?
そこは無意識でやっているから、最初から考えていないかもしれないです。

無意識と意識的な部分のバランスはどう考えてますか?
すごく曖昧なんですけど、無意識と言っても意識的かもしれないし、とりあえず、理屈じゃないというか、道筋があってこうなっているという。たぶん自分の中のルール、自分なりの論理、道筋はあると思うんですけど、その道筋を言葉にして、人に説明したり、文章にするために具体的に文字に表したことがないので聞かれても答えられないんですよね。確かにあるんだろうけど、ふさわしい言葉がなかなか伝えられないというか。だから感覚的だと思われるのかもしれないけど、自分にとってはぜんぶ意識的なのかもしれないです。

映画の引き出しは大事にされていますか?それとも意識していないですか?
映画は見ますけど、シネフィルではないですし、見ても、自分の映画に活かされないというか、活かすことができないんですよね。学習能力があまりないというか(笑)。でももっと歴史を知らなければという気持ちはありますね。

逆に見ることによって足かせになることもありますか?自由が失われたり。
そこまで頭がよくないんです(笑)。足かせになるということは、自分なりに噛み砕いて、理解してという、そういう力は必要だと思うんですけど、そこがないからあまり足かせにはならないんじゃないかな(笑)と思います。

オリジナリティーがあるから、感覚的だと捉えざるを得ない自分がいるのかもしれないのですが、そういう先入観に引っ張られないのは、逆にうれしい面でもあるんです。監督が今後、映画を撮る上で大事にしたいことは何ですか?先ほどは感覚、おとぎ話、ファンタジーという言葉が出ましたが。
一番大事にしたいのは、あまり現実とか非現実とかの境目をつけずに、自分の空想したところもすべて現実であるという考え方ですね。この映画も自分の空想ごとが多いので。死んだ人が出てきたり(笑)。目に見えることだけを映画にするのではなく、頭の中で起きていることも現実にしてしまうというか、そこの境目みたいなのは、たぶんこれからもずっとつけずにいきたいと思います。映画は何でもありだと思っているので、そうしていきたいと思いますね。

タイトルを思いついたのは?
タイトルはプロデューサーが考えてくれたんですけど、撮影が終わった後です。映画はラブストーリーから始まり、陽人が町子に恋するところからいろんな奇跡が発生しているので、こういうタイトルになったんです。

作っている段階の、(自分なりの)タイトルはなかったんですか?
最初は「しびれ給う、原人」というタイトルだったんです(笑)。

それもいいですね!
ええ、お気に入りなんですけど、あまり評判がよくなくて(笑)。

それは言葉が強すぎるからですか?
ええ、まあ、そうですね。観客が限定されるんじゃないかという考えもあったり、原人という言葉がひっかかるとか、そういうことがあったかもしれないです。

松山さんを見ていると、原人っぽい雰囲気もありますもんね(笑)。
そうですね、後から思うと、原人だなと思うんですけど(笑)。

今はこの映画についてたくさん語らなければいけない状況ですけど、今のプライベートな頭はどこにあるんですか?
次の(映画の)前に、他にちょっと撮影をやっていて、映画ではないんですけど、映画の宣伝というか。これからようやく一般の方へのお披露目なので、そういう緊張もありますし、どう受け入れられるのかという、そのふたつですね。まだ次のことは考えていないんです。

人の反応は意識しますか?
します!ブログをちょこちょこ見てますよ(笑)。

『ウルトラミラクルラブストーリー』の公開にあわせて、横浜監督の初劇場公開作『ジャーマン+雨』('07年)のDVDが5月22日に発売。以下はDVDのリリース情報です。

映画は横浜監督がインディーズで制作し、第3回CO2シネアスト大阪市長賞を受賞。映画関係者の間で評判となりインディーズ映画としては異例の劇場公開が実現。
 主人公は不細工で、わがままで、強引で、天涯孤独な16歳の少女。歌手志望の彼女は、近所の子どもたちを相手に、一人ひとりのトラウマを聞き出しては、たて笛で曲にする……。そんな、一見悲惨な状況ですが、そんなことはお構いなし、ただひたすら顔を上げ、前を見て突き進む主人公の存在感に圧倒され、やがて爽快感を味わう不思議な映画です。
主演は山下敦弘監督の『道』(『子宮で映画を撮る女』)や本田隆一監督作品『彼女が歌う理由』(佐藤佐吉プロデュースオムニバス『そんな無茶な!』収録)で主演を務めた個性派俳優・野嵜好美。また、変態気味の汲み取り屋役で登場する漫画家・ひさうちみちお(特別出演)など、監督の個性が表れた配役も注目です。
6月以降、映画ファンの関心を集めること必至の横浜聡子監督。その原点であり、監督の持つエッセンスが凝縮された映画『ジャーマン+雨』のDVDには、本編に加え、監督インタビューや『ウルトラミラクルラブストーリー』の予告編など特典映像も満載。横浜聡子監督作品の世界観を伝える内容となっています。
【DVD情報】
『ジャーマン+雨』
税込¥3,990(税抜¥3,800)
VPBT-13065/本編71分+特典映像約60分/カラー/ステレオ/ドルビーデジタル/片面2層/4:3

【特典】
<特典映像>
メイキング、インタビュー、舞台挨拶、林よし子 ファーストライブツアー、予告編、横浜監督次回作『ウルトラミラクルラブストーリー』予告編を収録
<封入特典>
16Pブックレット(写真家・梅佳代によるフォトページあり)を同梱予定

監督・脚本:横浜聡子
出演:野嵜好美、藤岡涼音、ペーター・ハイマン、ひさうちみちお(特別出演)、他
助成:シネアスト・オーガニゼーション、大阪エキシビジョン実行委員会
製作:アド・コネクト・ゾーン、横浜プロ
配給・宣伝:リトルモア
発売元・販売元:バップ

1  |  2  |  3