
「もし人々の心の中を開いてみれば、そこには風景が見出されるでしょう。私の場合、そこには浜辺が見出されるでしょう。」 |
アニエス・ヴァルダ |
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「アニエス・ヴァルダ作品の鍵となるひとつが木であること、それが繰り返し出てくるイメージであることを述べておきたい。それから、『コートダジュールの方へ』を見たら、『ポワント・クールト』を再び見るべきだということも言っておきたい。しかしあまりにも言うべきことがあり、時間が足りないほどだ。まるで何千もの側面がある煌めくダイアモンドのようだ。フランス映画業界において、アニエス・ヴァルダの短編作品は、小さいけど本物の宝石なのだから」。 |
ジャン=リュック・ゴダール、「カイエ・デュ・シネマ」1959年 |
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2009.8.28 update |
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![]() | 9月5日(土)『歌う女・歌わない女』の上映後に行なわれた映画評論家梅本洋一氏のレクチャーを音声配信にてお届けします。左のバナーをiTunesなどのPodcastアプリケーションにドラック&ドロップしてください。 2009.10.21 update |
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01.ポートレート作家としてのアニエス・ヴァルダ ~『歌う女・歌わない女』への注釈~(15:53) 02.ヴァルダ映画の特徴「連続するフォルム」について ~『階段て素敵でしょ』、『落穂拾い』を参照しながら~(16:16) 03.Q&A 1."女性映画"とアニエス・ヴァルダ 2.映画『創造物』について(11:00) |
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※レクチャーで上映された『歌う女・歌わない女』、『階段て素敵でしょ』、『落穂拾い』の音声は割愛しています。 |
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レクチャー:梅本洋一(映画評論家) 提供:東京日仏学院 ポッドキャスト配信:OUTSIDE IN TOKYO |
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![]() © 2008 Ciné Tamaris -『アニエスの浜辺』- Arte France Cinéma | 『アニエスの浜辺』 出演:アニエス・ヴァルダ (フランス/2008年/113分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) ![]() 『アニエスの浜辺』レビュー 2009.10.7 update 55年の長きにわたり世界中の映画監督に影響を与え続けてきたアニエス・ヴァルダ。まもなく81歳になる彼女が、まるで自らの半生をたどりなおすかのように、『落穂拾い』に続いて再びカメラを持って旅に出る。彼女の人生、そこにはいつも浜辺があった。幼少時代をすごしたベルギーの浜辺、戦火を逃れて疎開したフランスの港町セート、夫であったジャック・ドゥミとともに渡ったアメリカ西海岸...。自分自身の歴史、そして家族、友人、夫、あるいは撮影中に出会った人々について思いを馳せながら続けられる旅は、個人的なものであると同時に、戦時中、ヌーヴェルヴァーグ、フラワーチルドレンの時代...、さながら現代史でもある。 「こうも言えるだろう。つまり『アニエスの浜辺』という素晴らしいフィルムは、まさにひとつの人生の経験を伝え、そのあらゆるエモーションを拾い集めながら、それらを優雅で遊び心に満ちたパズルに変換してみせるのだと。この作品は、ある人生の様々なページと、その人生の広がり、浜辺を見せてくれる。同時にそこには、ひとりの作家の作品群の、彼女の創造活動の持つ広がり、その浜辺があるのだ。『アニエスの浜辺』は、こうしてアニエス・ヴァルダという映画作家が占めている場所とその重要性を、我々に改めて気付かせてくれるだろう」。 ジャン=マルク・ラランヌ(「レ・ザンロキュプティーブル」編集長、映画批評家) 2009年10月10日から岩波ホールにてロードショー他 全国順次公開 配給:ザジフィルムズ 公式サイト:http://www.zaziefilms.com/beaches/ |
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![]() | 『ポワント・クールト』 出演:フィリップ・ノワレ、シルヴィア・モンフォール (フランス/1954年/89分/35ミリ/モノクロ/英語字幕付) ヌーヴェルヴァーグの先駆的作品。別れつつある一組のカップル。女が発見したその場所は、男が育った場所だった――セートの小さな漁村、ポワント・クールト。貝漁師たちはその権利を守るために団結し、その家族は厄介ごとや世間話におわれている。カップルは危機を迎える。夏のまぶしい光の中で、あるカップルとある集団についての2つの記録が綴られる。 |
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![]() | 『オペラ・ムッフ』 出演:ドロシー・ブラン、ジョゼ・ヴァルラ、ジーン・タッソ (フランス/1958年/17分/35mm/モノクロ/英語字幕付) 『オペラ・ムッフ』は、「ラ・ムッフ」とよばれるパリのムフタール街についてのドキュメンタリーであり、子供を身篭った一人の女性の覚書である。これはまた主観的なドキュメンタリーとよべるだろう。 |
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![]() | 『コートダジュールの方へ』 出演:ロジェ・コジオ(ナレーター) (フランス/1958年/24分/35ミリ/カラー/英語字幕付) リヴィエラ、その異国情緒的雰囲気や観光地的、カーニヴァルやエデンの園的色彩が際立つ、フランスの地中海沿岸のコートダジュールについての美しいエッセイ。一日の終わりに、海岸のカラフルなパラソルがジョルジュ・ドゥルリューの美しいシャンソンとともに閉じられる。 |
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![]() | 『5時から7時までのクレオ』 出演:コリンヌ・マルシャン、アントワーヌ・ブルセイェ、ドミニク・デレ、ミシェル・ルグラン (フランス=イタリア/1961年/90分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付) 病気の不安におびえるシャンソン歌手クレオの5時から7時までを、リアルタイムで、ヌーヴェルヴァーグ特有の瑞々しい手法で描いたヴァルダ初期の傑作。カメラは初夏を迎えたパリの街をタクシーや車やバスにのって移動し、カフェやバス、公園の中の人々、木漏れ日をとらえながらも、沈黙しているクレオの不安を見事に表現している。若き ゴダールやアンナ・カリーナが映画中映画のサイレント喜劇に出演している。 |
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![]() | 『幸福~しあわせ~』 出演:ジャン=クロード・ドルオー、クレール・ドルオー、マリー=フランス・ボワイエ (フランス/1964年/80分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) 仲むつまじいフランソワとテレーズには二人の子供があり、日曜日ごとに森にピクニックに出かける幸せそのものの家族。だが、ある日フランソワは他の女性と関係を結んでしまう。ひまわりの黄色など、原色の鮮やかな色彩、そしてモーツアルトの調べの中で、家族の幸福の均衡が徐々に崩れていく。 |
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![]() | 『創造物』 出演:ミシェル・ピコリ、カトリーヌ・ドヌーヴ、リュシアン・ボダール (フランス/1965年/105分/35ミリ/モノクロ・カラー/英語字幕付) 一組のカップルの人生と、小説の誕生の物語、ふたつの物語が語られる。「私がこの作品で興味を持ったのは、愛し合い、孤独を捨てるふたりの人物としてではなく、孤独であるという問題を抱えているふたりのカップルを見せることでした。ふたりはしかし、愛の中から、そしてふたりでいることの孤独から活力を見出すのです」。(アニエス・ヴァルダ) |
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![]() | 『女性たちの返事』 (フランス/1975年/8分/35ミリ/カラー/英語字幕付) 女性であること、それは女性の身体に生まれることだ。 「女性たちの身体、つまり私達の身体について、女性の条件について話す際、あまり語られることがありません。オブジェとしての女性の身体、あるいはタブーとしてある女性の身体、子供がいる身体、あるいはない身体、セックスの問題、などなど。私達の身体をどう生きるべきなのか? 性をどう生きるべきなのか?」(アニエス・ヴァルダ) |
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![]() | 『ダゲール街の人々』 出演:アニエス・ヴァルダ(ナレーション) (フランス/1975年/80分/35ミリ/英語字幕対) 「『ダゲール街の人々』は、パリの14区の趣のある界隈、ダゲール街についての映画ではなく、ダゲール街のほんの一部分、70番地から90番地までの限られたある場所で商店を営む人々についてのささやかな記録、声なき多数派の人々への注意深い眼差しです。この映画はまたある界隈のアルバムのような作品で、ダゲール街に住む典型的な人々についてのポートレートです」。(アニエス・ヴァルダ) |
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![]() | 『イランでの愛の悦び』 出演:ヴァレリ・メレッス、アリ・ラフィ、テレーズ・リオタール (フランス/1976年/6分/35ミリ/カラー/英語字幕付) モスクを見上げながらどのように愛を語ることができるのか、あるいは枕もとで建築についていかに語ることができるのか。この短編は、『歌う女、歌わない女』の主人公のポムとアリ・ダリウス(彼は、イスファハンの王のモスクのように完璧な場所にいる恋人たちの夢想でもあるかもしれない)の恋のときめき、不安についての映画である。 |
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![]() | 『歌う女・歌わない女』 出演:テレーズ・リオタール、ヴァレリ・メレッス (フランス=ベルギー/1976年/107分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) 「女に生まれるのではない、女になるのだ」シモーヌ・ド・ボーヴォワール 1962年パリ、歌手を目指している明るく、人気者の17歳の高校生、ポリーヌ(通称ポム)と、カメラマンの男性の内縁の妻で、22歳の若さで2人の子供がいるシュザンヌ。対照的だが相似関係にあるふたりは心を通わせながらも別々の道へ進む。10数年後、彼女たちは女性解放運動のイベントで再会する。立場も生き方も違うふたりの女性の15年に渡る友情が、喜劇的な要素やメロドラマ的要素を織り交ぜながら描かれていくアニエス・ヴァルダの代表作の一本。 |
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![]() | 『ドキュメントする人』 出演:サビーヌ・マム、リサ・ブロック、マチュー・ドゥミ (フランス/1981年/63分/ベータカム/カラー/フランス語・日本語同時通訳付) ロサンジェルスで、フランス人女性のエミリーは、愛する男と別れ、八歳になる息子マルタンと自分のために住む場所を探し、道端に捨てられていた廃物から拾った家具とともに住み始める。彼女の混乱した心が彼女自身からよりも、彼女が眺める人々によって表されていく。「孤独や不安、影のある場所としてのロサンジェルスは、この街の陽の当たる部分よりも、私にインスピレーションを与える」。(アニエス・ヴァルダ) |
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![]() | 『アニエス v.によるジェーン b.』 出演:ジェーン・バーキン、フィリップ・レオタール、ジャン=ピエール・レオー (フランス/1987年/97分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) 「私は匿名の有名人になりたい」(ジェーン・バーキン) ジェーン・バーキンを発見する一本のフィルム。ジェーンは、いろいろなスタイル、季節の中で、多様化し、別人にすらなる......。アニエスとジェーンは共に楽しみ、映画スターにオマージュをささげながら、ジェーンのフィクションめいたポートレートとして、あるいは告白めいたフィクションとして、自由な対話を通して本作を撮りあげた。 |
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![]() | 『冬の旅』 出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシェ・メリル、ステファーヌ・フレス、ヨランド・モロー (フランス/1985年/105分/35ミリ/カラー/英語字幕付) 冬の田舎道に行き倒れて死んだ少女モナ。誰も知ることのない彼女の身に何が起こったのか? 彼女と知り合った何人かの証言からモナの孤独な旅の物語が、少しずつ明らかになってゆく......。数枚のテキストのみで、アニエス・ヴァルダとサンドリーヌ・ボネールが即興で作り上げていったロード・ムーヴィーの傑作。 |
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![]() | 『カンフーマスター!』 出演:ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミ (フランス/1987年/80分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) マリ・ジェーンは、リュシーとルーという二人の子供と三人で暮らしている。ジェーンはリュシーの誕生会のパーティで、娘の同級生ジュリアンに出会い、一目惚れしてしまう。ジュリアンが好きなTVゲーム「カンフーマスター」を通じてふたりはだんだんと親交を深めていく。本作の原案はジェーン・バーキン自身により、彼女自身の家を舞台に、実の娘たちも出演している。 |
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![]() | 『ジャック・ドゥミの少年期』 出演:ジャック・ドゥミ、フィリップ・マロン、ローラン・モニエ (フランス/1991年/120分/35ミリ/カラー&モノクロ/日本語字幕付) ディズニーの「白雪姫」が大好きだった少年がいかに映画監督になる夢を膨らませていくかを、ドゥミへの哀悼をこめて描いた作品。所々にジャック・ドゥミが残した映画のワンシーンや、死を目前にした彼の姿が挿入されている。白血病で病み衰えたドゥミの顔や手や頭髪をとらえるヴァルダのカメラは、夫を愛撫しているようでもあり、また生と死そのものへの敬虔な眼差しで貫かれているようでもある。 |
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![]() | 『百一夜』 出演:ミシェル・ピコリ、マルチェロ・マストロヤンニ、マチュー・ドゥミ (フランス=イギリス/1994年/135分/35ミリ/カラー/英語字幕付) 「記念行事に死を!忘却万歳!」ブニュエル 映画百年の歴史がそのまま人格と化したムッシュー・シネマはもうじき百歳になろうとしている。映画生誕百年を記念して世界中のオールキャストが次々と登場し、さらにリュミエール兄弟の「列車の到着」に始まり、無声映画、トーキー古典時代を経て現在に至る、映画百年の歴史を彩る様々な映画の抜粋映像が挿入される。 |
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![]() | 『落穂拾い』 出演:アニエス・ヴァルダ (フランス/2000年/82分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) パリの市場でものを拾う人たちを見たアニエス・ヴァルダ監督が、ミレーの名画「落穂拾い」を連想して制作したドキュメンタリー。カメラを持った監督がフランス各地の表情を収めながら、自身の人生を見つめ直す。「物の痕跡、そのイメージを残すこと。老いていく、腐っていくものたちの。腐ったポテトを眺めていると、突如、心に触れる瞬間があります」。(アニエス・ヴァルダ) |
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![]() | 『シェルブールの雨傘』 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌォーヴォ、アンヌ・ヴェルノン、マルク・ミシェル (フランス/1963年/91分/デジタル上映/カラー/日本語字幕付) フランス北西部の港町シェルブール。つつましくも美しい恋を育む自動車修理工の若者ギイと傘屋の少女ジュヌヴィエーヴ。そんな彼らにもアルジェリア戦争が影を落とす。ギイに徴集礼状が届き、出兵前夜に結 ばれた二人。ギイの不在がしだいに耐え難いものになっていくジュヌヴィエーヴは、ある日、自分が妊娠していることに気づく。2年の歳月が過ぎ、負傷してシェルブールに戻ったギイを待っていたのは、ジュヌヴィエーヴの結婚の事実だった...。雨にぬれる歩道を背景に七色に輝く雨傘を真上から捉えた鮮やかなオープニングとともに始まるジャック・ドゥミの傑作。 |
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![]() | 『ロシュフォールの恋人たち』 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー、ダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリ (フランス/1966年/127分/デジタル上映/カラー/日本語字幕付) 軍港の町ロシュフォールに祭りの季節が巡ってくる。町の外から芸人たちがやってきてショウの準備を始めている。美しい双子の姉妹ソランジュとデル フィーヌも、新しい恋の予感を感じ思わず歌い出す。作曲家の卵の姉とダンサー志望の妹は、パリに出て実力を試したいと考えていた。駐屯している水兵 マクサンスは理想の女性との出会いを夢見て、得意の絵で未だ会わぬ彼女を描き出すが、その絵はデルフィーヌに瓜二つだった。町中が沸き立つ週 末の3日間。人々の出会いが交錯しては新たな恋が生まれ、かつての恋が再燃する。 |
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![]() | 『ロバと王女』 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・マレー、デルフィーヌ・セイリグ (フランス/1970年/89分/35ミリ/カラー/日本語字幕付) 父である王から求婚され、ロバの皮に身を隠した王女。ひっそりと家畜の世話をして過ごす彼女に、その正体を知らないまま王子は恋をしてしまう。コクトーの『美女と野獣』へオマージュを捧げた作品。「野獣」のコスチュームを纏う「美女」ドヌーヴが、過酷な状況の中、可憐さと勇気を失わない王女を生き生きと演じている。かつてからドゥミが出演を切望していたデルフィーヌ・セーリングは、茶目っ気と気品、知性を兼ね備えた妖精を魅惑的に演じている。 |
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