桃まつり presents すき

日仏学院で行なわれている特集上映「フランス女性監督特集」は、ここ15年におけるフランスの女性映画作家たちの目覚ましい活躍を伝え、フレッシュな映画を渇望する観客に喜びを与えてくれた。その「フランス女性監督特集」にゲストとして登壇した大野敦子は、映画番長シリーズの瀬々敬久『ユダ』や高橋洋『ソドムの市』、青山真治監督『AA』、冨永昌敬監督『パンドラの匣』、入江悠監督『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』といった注目作品を若くして手掛けてきた敏腕プロデューサーだが、その彼女が、フランスにおける女性監督たちの活躍を横目で見ながら、「あと、5年、いや10年かな?くらいでフランスに追いつきます!」と宣言していた。そんなことも心に留めがら、今年で5回目を迎えるという「桃まつり」に、新しい才能を発掘すべく、貪欲な観客のひとりとして向き合いたい。
2012.3.14 update
2012年3月17日(土)〜30日(金)
ユーロスペースにてレイトロードショー 連日21:10〜


【壱のすき 3月17日(土)〜21日(水)】
竹本直美『帰り道』、天野千尋『フィガロの告白』、小森はるか『the place named』

【弐のすき 3月22日(木)〜25日(日)】
ステファニー・コルク『春まで十日間』、上原三由樹『口腔盗聴器』、熊谷まどか『最後のタンゴ』

【参のすき 3月26日(月)〜30日(金)】
星崎久美子『さめざめ』、佐藤麻衣子『LATE SHOW』、名倉愛『SAI-KAI』

会場:渋谷ユーロスペース
入場料金:1,200円
公式サイト:http://www.momomatsuri.com/
Twitter:@momomatsuri


上映スケジュール

ユーロスペース
3月17日(土)~21日(水)
【壱のすき(計73分)】
21:00
帰り道
(15分)

フィガロの告白
(22分)

the place named
(36分)
3月22日(木)~25日(日)
【弐のすき(計71分)】
21:00
春まで十日間
(13分)

口腔盗聴器
(27分)

最後のタンゴ
(31分)
3月26日(月)~30日(金)
【参のすき(計73分)】
21:00
さめざめ
(20分)

LATE SHOW
(26分)

SAI-KAI
(27分)
上映プログラム

壱のすき

『帰り道』
15分/16:9/5.1ch/HDV/2012
監督・脚本:竹本直美
撮影:高橋哲也 録音・整音:鈴木昭彦 助監督:加藤学 編集:塩谷友幸 ヘアメイク:橋本申二、長窪美恵(atelier ism®) 音楽:SIESTA 制作応援:粟津慶子、榮元謙之介 整音助手:西垣太郎 監督補:榎本敏郎
出演:神農幸、高木彩那、阿部優香、小林千里、西沢利明 

都会に憧れ出て行った奈美が、やむを得ない事情で田舎に戻る道中、幼い頃に川辺で会った老人のことを思い出す。奈美にとって故郷の象徴である老人の、子供の頃には分からなかった気持ちが分かり、そして、故郷で生きて行く決心をする。 

<監督コメント>
「帰りたい...」震災直後によく聞いた言葉。生まれ育った愛してやまない場所。以前、母や、祖母が「この場所(田舎)しか知らないし、此処を離れる事は出来ない」と言っていた事を思い出し、このふたつの言葉が重なり、彼らの思いを形の出来ないだろうか...と、この物語が生まれました。 

竹本直美
1970年生。山形県出身。映画美学校第二期卒業。在学中『夜の足跡』(01/万田邦敏)に製作助手として参加。2006年、万田邦敏監督とともに映画上映会「十善戒」を主催。2007年「桃まつり」で『明日のかえり路』を初監督、08年『あしたのむこうがわ』、09年『地蔵ノ辻』、10年『迷い家(マヨイガ)』を「桃まつり」で続けて発表する。
『フィガロの告白』
22分/16:9/STEREO/HDV/2012
監督・脚本:天野千尋
撮影:満若勇咲 美術:金子陽介 録音:茂木祐介 音楽:原夕輝 ヘアメイク:寺沢ルミ 助監督:平波亘 制作:松尾圭太
出演:米本来輝、岩佐和明、影山樹生弥、清水尚弥、田代りさ、橋野純平 

夏休み。いつもの秘密基地に集まる、ヨネ、カゲやん、ナオヤ、岩さんの中学生男子4人組。女子の話で盛り上がり、妄想を膨らませ、ついに好きな女子への告白を決行する。果たして彼らの恋の行方は...?!苦くて甘い果実のような、青春の1ページをお楽しみください。 

<監督コメント>
誰もが経験する、おばかで身勝手で、けれど愛おしい中学生時代。私自身、穴があれば入りたくなる様な思い出ばかり...そんな甘酸っぱい日々の「すき」を、キラキラ活き活きと再現したい!という一心で作りました。これを見て、中学の頃の淡い恋と、爽やかな悪意に満ちた友情を、懐かしんでください。 

天野千尋
1982年生まれ。約5年の会社勤務を経て、映画制作を開始。ENBUゼミナール卒業制作『さよならマフラー』(09)がCO2などの映画祭で上映され、『賽ヲナゲロ』(09)はPFF入選、『チョッキン堪忍袋』(11)はPFF、TAMA NEW WAVEなど複数の映画祭に入選した他、田辺・弁慶映画祭にて特別審査員賞。ハンブルグ日本映画祭にて上映される。
『the place named』
36分/16:9/STEREO/HDV/2012
監督・脚本・撮影・編集:小森はるか
録音:鈴尾啓太、菅野慧 整音:西原尚 舞台演出・脚本:原麻理子 舞台戯曲:『わが町』ソーントン・ワイルダー作、額田やえ子訳
出演:原麻理子、遠藤麻衣、栗原たづ、西山朱子、花戸祐介、深堀見帆、宮永聡 

戯曲『わが町』(作:ソーントン・ワイルダー)をもとに、田舎町に生きる少女の一日の生活と、『わが町』第3幕の舞台稽古をしている劇団員たちが交互に描かれる。死者たちが生きている世界について話す戯曲の言葉は田舎町の日常に重なると共に、演じている役者自身にも投影される。役者とのプロセスの中で出来上がった作品である。 

<監督コメント>
私が制作する上で重視していることは、撮影現場をつくりあげていくまでの演者とのプロセスです。シナリオから演者に与えられた役、シーンをイメージ通りに再現する作業ではなく、そこに書かれている単語一つひとつをその場所から演者と共に探して行くようなことから始まります。そのプロセスの中で、カメラに映る人、風景、言葉のそのままの姿をよく見ようとすることを大事にしています。カメラの向こう側には決して近づくことはできないけれど、一定の距離からその姿たちの内側、内面へと眼差しを向けることができればと思っています。今回、新たな試みとして、ずっと作品に出演してもらっている原麻理子さんが舞台稽古のシーンの演出をし、稽古が進行していく中で撮影を行いました。

小森はるか
1989年静岡県出身。映画美学校12期フィクション初等科修了。東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院在籍。映画、映像作品を制作。主な作品に、映画美学校修了制作『oldmaid』(09)。『彼女と彼女たちの部屋』(09)がイメージ・フォーラムフェスティバル2010にて上映。現在は東北で、震災の記録活動を行っている。

弐のすき

『春まで十日間』
13分/16:9/STEREO/Full HD/2012
監督・脚本:ステファニー・コルク
撮影:Hayo van Gemert 照明:Sanne van Rossum 録音・サウンドデザイン:Stefan Meutstege 1st AD:Marjan Lammers Executive Producer:Niels Bourgonje 編集:Leonie Hoever Production on set:Raymon Hilkman、Luuk Hoekx、Susanne Copini コンポーザー:Chris Christodoulou
出演:山田美咲 

3.11の大震災の時、アムステルダム在住の若い日本人女性が日本にいるお母さんに電話をかけようとする。 

<監督コメント>
この作品を創るきっかけになったのは、現在オランダ在住で仙台出身の親友が去年の3月11日のあと、全く家族と連絡が取れず情報が得られないままの一週間を過ごしたことでした。 遠く離れた外国の地ではいつもと変わらない毎日を過ごしながら、未来も不確かのまま待つことしかできない主人公の人生のエピソードを描きたいと思いました。 

ステファニー・コルク
1986年オランダ出身。高校二年生の時に日本にホームステイしてから日本に強い興味をもち、物理生物・天文学専攻で一年間京都大学に留学。オランダの大学院を卒業してから映画を撮り始める決意をして半年たった今。 初監督の短編映画『OUT』はオランダ映画祭にて上映。ロッテルダム映画祭やカメラジャパン映画祭などで通訳も行っている。
『口腔盗聴器』
27分/16:9/5.1ch/HDV/2012
監督・脚本:上原三由樹
撮影:田辺清人 照明:山口峰寛 録音:中川究矢 助監督・編集:遠藤大介 制作:阿部沙蘭、赤羽健太郎、上原希望 録音助手:國谷陽介 照明助手:蟻正恭子、加藤大輝 音響:光地拓郎 音楽:秋元昌文
出演:中台あきお、西尾瑠夏、横山真弓、矢野深雪、藤沼豊 

先代から続く、歯科医院を経営する男。歯科医院の入るビルのオーナーが亡くなり、新しいオーナーとしてその娘である女が嫁ぎ先から帰ってくる。男はかつてその女に幼い恋心を抱いていた。時が過ぎ、初恋の面影の中で輝いていた少女の姿はすっかり消え、目の前に存在する月並みの女。離婚をし、戻ってきたという女には、一人の娘がいた。少女は男にとっての青春の生き写しそのもの。男は、遂げることのできなかった想いが湧く反面、受け入れてもらえるはずのない失望感から、男にしかできない少女との距離の縮め方を思いつき、実行していく。 

<監督コメント>
心に押し込めていた衝動が現実の行動に移るとき、女性の年齢や存在に関する価値について考えたとき、他人には理解されない部分に共感してくれる人が現れたとき。頭と体がグラグラ揺れるような感覚になります。そんな感覚を客観視する映画を観たい気持ちから、制作が始まりました。 

上原三由樹
静岡県伊東市出身。伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞短編大賞受賞『ひょうたんから粉』(2008)。同作品にて、清水映画祭(2010)監督賞受賞。福井映画祭(2010)、中之島映画祭(2011)にて入賞。『企画オムニバス映画 ISM』参加『初キス』(2010)。同作品にて第1回映画太郎に参加。2012年は桃まつり参加に加え、脚本参加作品が4作公開予定となっている。
『最後のタンゴ』
31分/16:9/STEREO/HDV/2012
監督・脚本・編集:熊谷まどか
撮影:境千慧子 録音:川原康臣 助監督:金沢勇大 制作:剣持清美 脚本・編集協力:田中智章
出演:幸田尚子、松岡依都美、郷志郎、杉浦千鶴子 

結婚前提で同棲していた年下の彼氏・シュンジが突然部屋を出て行き音信不通に。レイコは納得がいかない。腹が立つ。『もう帰る場所なんてないから!!』とばかりにシュンジの荷物をさっさと処分し引っ越しの準備を進めているのだが・・・。 

<監督コメント>
例えば「嬉しい」なら笑顔が、「悲しい」なら涙が、共感を誘うきっかけになり得ますが、では「好き」というキモチが胸に広がるあの瞬間はどうすれば伝えられるだろう?と考えました。 「匂いの記憶」が、カチコチに固まった心を突き崩し、その下から素直な「好き」という感情があふれ出てきた体験って多くの方がお持ちではないでしょうか?

熊谷まどか
04年NCWにて自主制作映画を作り始める
おもな作品歴
05年『ロールキャベツの作り方』
06年『はっこう』(PFF2006グランプリ)
09年『嘘つき女の明けない夜明け』(文化庁委託事業ndjcにて制作)
10年『古都奇譚・秋』など
現在はPV・メイキング・TVなども手がける。

参のすき

『さめざめ』
20分/16:9/STEREO/HD/2012
監督・脚本・編集:星崎久美子
撮影:船本賢悟 照明:篠田力 録音:辻祥子 助監督:谷中啓太 ヘアメイク:村田エリ 整音:古谷正志 音楽:三枝伸太郎
出演:東加奈子、岡部尚 

夏子と卓が二人で暮らし始めて4年。アパートの2回目の更新がやって来た。夏子は「更新はしない」と言い、一人で不動産屋に通い新居を探しているが、卓にはその理由がわからない。更新の期限が近づくにつれますます機嫌悪くなる夏子は卓に向けてあるメッセージを発するが・・・。 

<監督コメント>
「すき」に限らず、自分の気持ちをきちんと人に伝えることができたら、それはとても素晴らしいことです。だけど、なかなかそうもいかない。そんな人たちの映画を作りたい、といつも思っています。

星崎久美子
1981年、神奈川県生まれ。 青山学院大学卒業後、TVCM制作会社へ勤務。 会社勤めのかたわら映像制作を開始。 『おぼろげに』(05)が東京ビデオフェスティバル2006にて優秀賞受賞。 『茜さす部屋』(08)が第9回TAMA NEW WAVEにてクリーク・アンド・リバー社賞を受賞し、その後、渋谷UPLINKにて劇場公開。その他の作品に、『踊りませんか次の駅まで』(05)、『うつせみ』(06)、『夜のタイ語教室 いくまで、我慢して』(09、脚本のみ)など。
『LATE SHOW』
26分/16:9/STEREO/HD/2012
監督・脚本・編集:佐藤麻衣子
撮影・照明:岡山佳弘 撮影助手:地村俊也 助監督:佐々木勝己 録音:楠田俊浩、高田浩紀、舛田龍也 美術:塩川節子 美術助手:山田亜矢子 音楽:榎坂和也、RAG SIX for Hi-A+ PRODUCTION 整音:中島雄介(JIAMS)、森田康介
出演:吉田みるく、うつだあずみ、市川太郎

叔父の所有していた雑居ビルの屋上で、叔父への憧憬にひたって過ごすまもる。まもるの古い友人・ひろしは、頑なで大きな身体のまもるに昔から追従している。叔父の3回忌の日、叔父の集めたアメリカ映画がかかる屋上。地元のバイカーとたむろする少女が現れると、まもるは少女に興味を示し始める...。

<監督コメント>
ひとたび「◯◯をすき」と言葉にしたときの、嘘っぽい、空虚な、言ったとたん「本当にすきなのか?」と考えてしまうような、「すき」の持つあの軽薄な印象は一体なんなのでしょうか。その軽薄な感じこそが、「すき」ということの実体ではないでしょうか。

佐藤麻衣子
1978年大阪府出身。京都外国語大学外国語学部英米語学科卒業。在学中より映像制作を試みる。卒業後、映画史と映画制作を学ぶため、大阪の上映室にて映写・翻訳などの運営、短編制作を続け現在に至る。最近作『ポンの氾濫』 (09) が調布映画祭にて入選。『かぞくのひけつ』 (07/小林聖太郎)、『ペデストリアンデッキの対話(仮称)』 (公開待機中/唐津正樹) などにスタッフとして参加。
『SAI-KAI』
27分/16:9/STEREO/HDV/2012
監督・脚本:名倉愛
撮影:四宮秀俊 照明:玉川直人 録音:川口陽一 美術:伊藤淳 助監督:石毛麻梨子 制作:加藤綾佳 編集:大畑創
出演:松浦祐也、礒部泰宏、前彩子、桐谷裕介、星宗哲、松添琢也、古谷克実 ほか

へたれヤクザの伸雄(ノブ)はある日幼なじみの西村(りょうちゃん)と再会する。ノブの恋人で、同じく幼なじみの夏美を交え再会を祝う三人だったが、彼らには歓迎せざる運命が待ち受けていた。 

<監督コメント>
あらゆることに気力を失ったときにある本を読んでげらげら笑った。自分の爆笑に驚くほどげらげら笑い、気づいたら元気になっていた。笑うだけで!?こいつはいいや。自分も何か作るなら人を楽しませたい。そして自分も楽しもう。Vシネやろうぜなんて言葉に乗っかって、その気になって、落ち込んで。たどり着けたか、エンターテインメント。

名倉愛
1976年、静岡県出身。映画美学校フィクションコース9期修了。自主映画を中心に、制作部として活動。本作が初監督となる。 参加作品:『こんなに暗い夜』(09小出豊)、『失はれる物語』(09金子雅和)、『海への扉』(10大橋礼子)、『アナボウ』(10常本琢招)、『絵のない夢』(11長谷部大輔)、『へんげ』(11大畑創)など


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