『理想の彼氏』

上原輝樹
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ニューヨークを舞台にした、"女性上位"の現代に相応しいディテールが盛り込まれたロマンティックコメディ。意外にもロマンティックコメディは初主演というキャサリン・ゼタ=ジョーンズが、夫に裏切られ、16歳年下の"草食系男子"ジャスティン・バーサに惹かれて行く2児の母親役に挑戦している。2人の子役が、子供ならではのクールな凶暴さと下品さを発揮して一座を盛り上げ、ジャスティン・バーサの父親役を演じる、"サイモン&ガーファンクル"のアート・ガーファンクルが"何もしない"演技で乾いた笑いのカウンターパンチを繰り出しコメディを支えている。

脚本/監督のバート・フレインドリッチは、女優ジュリアン・ムーアの二人目の旦那として知られているが、劇中、ジャスティン・バーサがゼタ=ジョーンズのストレス発散のサンドバックにされてしまったように、9歳年下のフレインドリッチ監督がジュリアン・ムーアに実生活でパンチやキックの嵐を浴びているのかどうかはいざ知らず、本作の脚本には監督の現実の生活が大いに反映されているという。

しかし、その脚本には当初書かれていなかった、映画終盤の香港、ムンバイ、ケニア、パリ、イスタンブールを周遊するロケーション撮影が、一見普通のロマンティックコメディに見える本作に"新奇"なスパイスを加え、映画を輝かせている。この終盤の旅でジャスティン・バーサが経験する新しい事態は、フランスの小説家/映画作家フィリップ・クローデル(※)のエピソードをも想起させる今日的なテーマを扱い、"草食系男子"ならではの意外なしぶとさを描く事に成功している。"善良さ"への意思に満ちたエンディングには、アメリカ映画のひとつの伝統、明るい余韻が宿っている。


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Comment(1)

Posted by らごん | 2010.12.21

ああ。この映画はいいですね。
たったいま観終わって、「バート・フレインドリッチ」で検索して、ここに舞い込みました。

ちょっと不思議な映画だなあ。
「草食系のしぶとさ」かあ。なるほどねえ。

最後のハッピー・エピソードは、けっこうクルシイような気もするけれど、なにより全編にただよう「素直さ」みたいなものがスーッと入ってくる感じ?がイイ。

『理想の彼氏』
原題:THE REBOUND

11月27日(金)丸の内ピカデリー他全国ロードショー

監督・脚本:バート・フレインドリッチ
製作:マーク・ギル、ロバート・カッツ、ティム・ペレル
製作総指揮:ニール・サッカー
共同製作:ローリ・キース・ダグラス
撮影:ジョナサン・フリーマン
編集:クリストファー・テレフセン、ACE
美術:フォード・ウィーラー
衣装:メリッサ・トス
音楽監修:ジム・ブラック
出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ジャスティン・バーサ、ケリー・グールド、アンドリュー・チェリー、ロブ・カーコビッチ、サム・ロバーズ、ケイト・ジェニングス・グラント、リン・ウィットフィールド、アート・ガーファンクル

2009年/アメリカ/カラー/シネマスコープ・サイズ/SRD/DTS/95分
配給:ワーナー・ブラザーズ映画

(C) Rebound Distribution, LLC

『理想の彼氏』
オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/
therebound/



























(※)フィリップ・クローデル
小説「灰色の魂」「子どもたちのいない世界」「リンさんの小さな子」で知られるフランスのベストセラー作家。初監督作品『ずっとあなたを愛してる』が12月に公開される。
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