『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳別れの手紙』

江口研一
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左翼系の書店ばかりか、アメリカの大学内の書店の限られた品揃えの中でも、ほぼ必ずと言っていいほど見かけるのが、マルクスの『資本論』と、赤い表紙の革命本のような気がする。Tシャツでもよく見る。立派な髭を蓄えた顔は、自信に満ち溢れ、多くの若者にとって、セックスと音楽と酒とドラッグと...に次ぐ、マストな通過点とも言える。だが革命の代名詞とも言えるチェ・ゲバラの本を実際に読むどころか、その人となりを知る人は、実はそんなに多くない気がする。要するに、チェ・ゲバラは若者がクールなレジスタンスを演出できる最高のツールとして君臨し続ける。

そんなチェ・エルネスト・ゲバラを理解する突貫コースの如く製作されたのが、豪華2本立ての『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』。監督はスティーブン・ソダーバーグ、主演でチェに扮するのがベニチオ・デル・トロとくれば、見ないわけにはいかない一大ハリウッド・エピックだ。1本目の舞台はカストロと共闘したキューバ革命成功に向けての戦いであり、2本目は革命成功後に、大臣という名誉と責任を得てなお、ボリビアの民衆のための革命を牽引すべく戦闘に身を投じ、生命を落とすまでが描かれる。もちろん、南米中をバイクで旅することで見聞を広めた若い頃は、ウォルター・サレスの『モーターサイクル・ダイアリーズ』に描かれているし、キューバ革命成功後は演説風景などから記憶にある。だが文章以外で実際に戦闘に身を投じた時代を知ることはむずかしかった。

この映画はアート映画ではなく、ソダーバーグが演出するハリウッド系の大作だ。必要以上に彼を大きく見せることもなければ、彼のあらを掘り起こそうとするものでもない、等身大の革命家の、ある意味、想像力で行間を埋める誠実な記録だろう。チェ語録と言われるほど頻繁に引用されて一人歩きする言葉も、彼が銃弾の飛び交う中を生き残ったからこそ、生まれ、残ったものだ。それをベニチオ・デル・トロが、俳優生命を賭けて演じている。

その分、チェ・ゲバラについて多少なりとも知っている人にとって新しい驚きはないかもしれない。だが英雄をより近くに感じ、誇りを持って彼の呼吸を見つめることに感動すら覚える。そして革命とは何か、について改めて思いを巡らすこともできる。半端ではない大義と自己犠牲によって成り立つ革命へのモチベーションがどれだけのものかが汲み取れるかもしれない。勝利すればカストロはキューバの政治の舵取りがあり、彼の大義はそこにあった。そしてそこには様々な問題があるにせよ、彼は彼なりに生命が尽きるまでそれを果たそうとしたように思える。だが外国人でもあるチェは、キューバはカストロに任せ、自分とはまた関係のない、虐げられた人々のいる国に潜入し、市民主導の革命を誘発するという、まったく異なる大義に動かされていたことが分かる。

この2本の豪華映画を機に、革命そのものについて考えてみるのもいいだろう。運動の持続について。自己犠牲について。フィデル・カストロから、共に革命のために闘った弟のラウルが国家評議会議長引き継いだキューバについて。現在も経済封鎖を続けるアメリカについて。日本の政治的日常について。そして何よりも、自分の人生について。


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『チェ 28歳の革命』
2009年1月10日(土)より日劇PLEXほか全国ロードショー

『チェ 39歳別れの手紙』
2009年1月31日(土)より日劇PLEXほか全国ロードショー

監督:スティーブン・ソダーバーグ
製作:ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ
製作総指揮:アルバロ・アウグスティン、アルバロ・ロンゴリア、ベレン・アティエンサ、フレデリック・W・ブロスト、グレゴリー・ジェイコブス
脚本:ピーター・バックマン
撮影:ピーター・アンドリュース(スティーブン・ソダバーグ)
美術:アンチョン・ゴメス
衣装:サビーヌ・デグレ
コンサルタント:ジョン・リー・アンダーソン
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:ベニチオ・デル・トロ、カルロス・バルデム、デミアン・ビチル、アキム・デ・アルメイダ、エルビラ・ミンゲス、フランカ・ポテンテ、ジュリア・オーモンド、カタリーナ・サンディノ・モレロ、ロドリゴ・サントロ、ルー・ダイヤモンド・フィリップス、マット・デイモン(友情出演)他

2008年/スペイン、フランス、アメリカ/『チェ 28歳の革命』132分、『チェ 39歳別れの手紙』133分/1:1.85
製作:Laura Bickford Productions, Morena Films, Telecinco, Wild Bunch
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、日活

『チェ 28歳の革命』
『チェ 39歳別れの手紙』
オフィシャルサイト
http://che.gyao.jp/
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