OUTSIDE IN TOKYO
ANDREAS DRESEN INTERVIEW

アンドレアス・ドレーゼン『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』インタヴュー

2. なぜ詩人であり、アーティストであるグンダーマンが、
 シュタージに協力して仲間を裏切る事になったのか?

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OIT:プレスシートに掲載されているインタヴューで、監督は、その事によって東ドイツで多くの人々が精神的に破綻を来し、アウトサイダーになったり迫害されたりしたと仰っています。監督の過去の作品はまだ見ることが出来ていないのですが、今までの作品ではそうした悲劇を描いてきたのでしょうか?
アンドレアス・ドレーゼン:今までいくつか試みてきたものの、自分が東ドイツで育ったからといって、東ドイツについて描いた映画を作っても観客はあまり興味を示してくれないんじゃないか、理解してくれないんじゃないかっていう考えの方が強くて、どちらかというと避けてきたんです。全面的に東ドイツを扱った映画っていうのはダメだろうと思っていたところがあったのですが、最後の試みとして『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』を作りました。そうしたら幸運な事に、東ドイツで生きていた伝説のアーティストの存在を通じて、皆さんの理解を得る事が出来た。しかも東ドイツの雰囲気が表れている、映画とか登場人物を通して昔の東ドイツを疑似体験できるという事を理解していただいて、本当に幸運だったと思っています。

OIT:この映画を作るまでに凄く時間が掛かったという事がよくわかりました。グンダーマン自身は詩人として人々に真実を語る一方で、シュタージに協力する事によって周囲の人々を裏切る事になった、グンダーマン自身はどういう風に精神的に自分の中で整合性をとっていたと監督は考えますか?
アンドレアス・ドレーゼン:仰っているご質問がまさに自分達がこの映画を通して描こうとした質問なんです。なぜグンダーマンが詩人であり、アーティストでありながらシュタージに協力して仲間を裏切る事になったのかという疑問は、まさにこの映画が立てた問い掛けそのものです。ですから、本当に大きな問題で、映画を通して結局答えは出してないんです。答えは出ないというか、まさにそれがグンダーマンの人生だったと思っています。彼は短い人生の中で大きな間違いを犯した。彼は自分でもそれに気がついたんですね。歌を歌うため、仲間を救うため、労働環境を良くするためにと思って、彼はシュタージに協力しましたが、しばらく経って、これは間違いだったと気がついた。彼は10年近くシュタージに協力していますけれども、間違いに気づいた時に協力することをやめた。彼に悪意は無かった、いい世界を作ろう、いい社会を作ろうと思って努力した結果のシュタージへの協力だったのです。間違いに気づいた段階で、彼はすぐシュタージに対する協力を止めて、アーティストとして歌を作って生活をします。けれども、奇妙な事に後で90年代になってわかったのですが、自分の周りの人達が実はグンダーマンを監視していた。スパイ行為をグンダーマンに対して行っていたという事を知って、グンダーマンの中に、何とも言いようのない悲しみが生じた。自分の過去に対して折り合いのつけようのない、間違いを犯したのは事実だから、それに対しては何の弁解もしまいと思っていたけれども、東西ドイツが統一した後、友達が逆に自分を裏切っていたっていう事を知って愕然としてしまうのです。



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