OUTSIDE IN TOKYO
ANDREAS DRESEN INTERVIEW

アンドレアス・ドレーゼン『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』インタヴュー

3. 露天掘で働いている鉱山労働者達がグンダーマンを知っていて、
 その映画を作るんだったら協力すると言って、ロケ場所を一週間撮影に貸してくれたのです

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OIT:シュタージに報告をしていたというのは、具体的に何を報告していたのでしょうか?
アンドレアス・ドレーゼン:(残されている記録を)私も全部読みましたが、実は大した事は書かれていないんです。短い言葉でお伝えするのは難しいのですが、かなり分厚い、大量の情報が残されています。映画の中にも出ていますけども、量が凄い。大したことは書かれていないのですが、日常茶飯事が報告されているので、読んだ人が自分の事が書かれているっていうことで不愉快になるのはわかります。ですけれども、逮捕者が出るような情報をシュタージに対して報告をしていたという形跡はありませんでした。それでも、グンダーマンにとってもそうですけど、友達にとっても、報告されたこと自体、そして、こんな細かいところまで報告するのかという思いですね、グンダーマンの方としては道徳的、倫理的な罪を感じていたと思いますし、情報を提供された被害者にとっては、何でこんなところまで報告するのか、みみっちい...という感情があったでしょう。グンダーマンは凄く真面目な人なので細かいところまで報告したようです。だからあれ程大量の文書になったのでしょう。情報提供をされた人にとってみれば不愉快に違いありませんが、政治的には大した報告はしておらず、実際に逮捕者が出るような報告ではありませんでした。

OIT:この映画にはいくつか素晴らしいシーンがありました。グンダーマンが働いている、巨大なパワーショベルがある壮大なスケールの採掘現場がありましたが、あのロケーションは一体どのように見つけられて撮影されたのでしょうか?
アンドレアス・ドレーゼン:自分でも奇跡だと思っています。というのは偶然グンダーマンが働いていた露天掘のすぐ近くの露天掘で現在実際に働いている鉱山労働者達がグンダーマンを知っていて、その映画を作るんだったら協力すると言って、ロケ場所を一週間撮影に貸してくれたのです。30万平方メートルの露天掘でそこに従事している70人の労働者全員が協力してくれて、グンダーマンを演じるアレクサンダー・シェーアが4,000トンのパワーショベルを自分で運転出来るように手伝ってくれたのです。ですから、あのシーンは“本物”で、こんな撮影が実現したのは奇跡としか言いようがありません。

OIT:この映画はグンダーマンの詩人・歌手としての活動を描いているだけじゃなくて、コニーとの家庭生活、結婚された奧さんとの愛を描いています。例えば、アメリカの映画作家ジョン・カサヴェテスの『ラヴ・ストリームス』という映画は、愛とは流れるものだ、愛とはストリームそのものだというような映画でしたが、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』ではコニーとグンダーマンの愛はストリームというよりは分断されて語られていきます。
アンドレアス・ドレーゼン:グンダーマンとコニーの関係はとても複雑なものでした。映画では何年とは言っていませんが、実際コニーは既に結婚していましたから、7年間掛けてグンダーマンはコニーを勝ち取ったわけです。二人が一緒に住むようになってからも、長い間グンダーマンの中には友人の奥さんを奪い取ったっていう気持ちがあって、グンダーマン自身にとっては必ずしも明るい話ではなかったようです。グンダーマンは1998年に43歳で亡くなりましたから、もう20年以上経っていますが、コニーにとっては、最初に結婚していたバンド仲間の人とは別で、コニーに会うと、まだ気持ちの中にグンダーマンを抱える想いがあることがわかります。コニーは、20年以上、他の誰とも再婚していません。グンダーマンが亡くなった後もグンダーマンを胸に抱いて生きている、コニーにとっても大きな愛だったということですね。



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