OUTSIDE IN TOKYO
Catherine Corsini INTERVIEW

カトリーヌ・コルシニ『旅立ち(原題:Partir)』インタヴュー

2. 20年前からクリスティン・スコット・トーマスを撮りたいと思っていました

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OUTSIDE IN TOKYO:守られてきた女性であったわけですよね、彼女は。そのリアリティというのはフランスではどうなんですか?
カトリーヌ・コルシニ:守られてきたというのは?

OUTSIDE IN TOKYO:夫と家庭に守られてきたような印象を受けたわけですけど。生活という意味で。
カトリーヌ・コルシニ:フランスの社会とかフランスの女性っていうのは非常に自由と思われているかもしれないけれども、実際を見てみますと女性が仕事についていても夫の方がお金を稼ぐ仕事についていて、そして夫の方が社会的地位も高くて、女性は子供のためにある程度仕事をあきらめてという、そういう状況があるんですね。夫に依存しているという女性も多くいます。もちろんみんながみんなこの映画のような状況ではないのですが、そういう人が多くいるというのも事実です。

OUTSIDE IN TOKYO:その“ボヴァリー夫人”を現代にもってくる上で、自分らしさ、先ほど仰ったリアリティも含めて自分らしさはどこで持ち込もうと思ったんですか?
カトリーヌ・コルシニ:設定自体はボヴァリズムと呼ばれる“ボヴァリー夫人”に見られるような非常に古典的なもので、ブルジョワの家庭に生きている妻がそこから逃げたいという思いですね。しかしその物語自体はかなり独自だと思います。自分なりのものが物語自身に感じられると思いますし、自然を求めてこの二人はどんどん進んでいくという所も独自だと思います。それから二つの国にまたがるように、境界であるようにフランスとスペインを行き来するわけですが、その境界を超えて、また戻って来るという設定になっています。それから国籍が、妻の方はイギリス人、彼氏の方はスペイン人ということで、そのありえない二人が出会い、その二人がフランスのブルジョワの地方の名士の生活を壊していくということですね。そして神話のようにどんどん自然の中での生活を求めていって、それは夫との生活では全く存在し得ない反対のものです。夫との生活では高価な家があり、お金があり、車があってそれがまた充足を意味しているわけなのですが、そこから離れて完全なる自由を自然の中に求めていく。貧しい家に住んでいて、夫は彼女を見てそんな貧しい家に、って言うんですけど、彼女自身はそれに幸福を見出している。そういう自由を求めているのです。

OUTSIDE IN TOKYO:主演の彼女は当て書きされたと聞いたんですけど。当て書きというか彼女を想定して書かれたということが僕の中の理解だったのですが、それはイギリス人というそもそもの設定に関連があるわけですか?
カトリーヌ・コルシニ:反対ですね。クリスティン・スコット・トーマスとは20年前から彼女を撮ってみたいという思いがあって、彼女が爆発できるような、彼女にぴったりあう靴のような話の映画を作ってみたいと思っていたのです。この映画の構想を考えた時、まさに彼女にぴったりだと思いました。最初は冷たい感じでそれがだんだん崩れていくっていうのがすごく彼女の感じと合っていて、割と初期の段階で彼女に会いにいったら、やります、と仰ってくださったので、その設定のもとにイギリス人ということでシナリオを書いたのです。家庭で子供をみるアルバイトをしながら、例えば18歳の時にフランスに来てそこで夫に偶然出逢ってという設定にして、それでこういう物語を作ろうというふうに考えました。スコット・トーマスはカメラを向けただけで色々な感動が感じられるような、感動を呼ぶような素晴らしい女優さんだと思います。簡単ではなかったのですが、私が思っているそういう少し特異な世界に彼女を引っ張り込もうと思いました。

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