OUTSIDE IN TOKYO
Catherine Corsini INTERVIEW
カトリーヌ・コルシニ『旅立ち(原題:Partir)』インタヴュー

『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、昨年から今年にかけて公開された『ずっとあなたを愛してる』での好演も印象深いイギリスの名女優クリスティン・スコット・トーマスが、盲目の一途な恋に生きる女性の主人公を演じ、自らの欲望に目覚めた女性の情熱をスクリーンに鮮烈に印象付けた。

監督は、女性同士の複雑に錯綜する愛情を描いたエマニュエル・ベアール主演作品『彼女たちの時間』(01)のカトリーヌ・コルシニ。クレール・デゥニ監督との名コンビでも知られるアニエス・ゴダールが撮影監督をつとめ、南仏の美しく情熱的な風物、そして、その南の光とは好対照を成す主人公の人妻が暮らす冷えきった邸宅の陰翳を捉え、美しいコントラストを映画にもたらした。

生涯“愛”を描いた映画作家フランソワ・トリュフォー作品からの楽曲が何曲も効果的に使われた本作『旅立ち(原題:Partir)』に漲るのは、恐ろしいほどに盲目的に周囲の目も憚らず、好きになった男との恋愛に溺れていく人妻の情熱。どこまでもフランス映画らしい、この“愛”の映画の根底には、“自由”を求めてやまない、あまりにも現代的、かつ、普遍的な人間の“生”への熱く暗い憧憬がマグマのように沸き立っているかのようだ。

本国フランスで大ヒットとなった本作に自信をのぞかせながらも、私たちの率直な質問にも誠実に応えてくれたカトリーヌ・コルシニ監督のインタヴューをお届けする。
(上原輝樹)

1.現代の“ボヴァリー夫人”

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OUTSIDE IN TOKYO:朝は強いですか?
カトリーヌ・コルシニ:ノー。パリだと9時くらいですね、起きるのは。

OUTSIDE IN TOKYO:早いじゃないですか。
カトリーヌ・コルシニ:7時に起きる人もいるでしょう。でも、1時とか2時まで起きていることが多いですね。夜の間に起きています。

OUTSIDE IN TOKYO:脚本を書いたりするのも夜ですか?
カトリーヌ・コルシニ:インスピレーションがわいてくると、そのまま寝てしまうまでずっと書いています。時々、アイデアがずっとぐるぐる同じところを回り続けている時もあります。

OUTSIDE IN TOKYO:この映画の場合、構想はどうでしたか?設定はシンプルですよね。
カトリーヌ・コルシニ:私はまず非常に古典的な愛の物語を描きたかったのです。まるで規定で決められていて、それを規定通り演技しなければいけないような、練習曲をやらなければいけないような感じの愛の物語を描いてみたいと思ったのです。例えば私の年齢で映画を作るというと、その愛の物語だと不倫であるとか遂げられない愛とか不可能な愛とかっていうことが考えられるわけですが、じゃあ現代の女性にとって出来ないことって何だろう、不可能なことは何だろうと考えたんですね。現代の”ボヴァリー夫人”とはどのようなものだろうかと。それで設定をプロヴァンスのような田舎にして、そしてある年齢、これ以上恋愛ができないと言われている女性の年齢の設定にして、普通は、夫はいい人ということが多いわけですが、そうじゃない、非常に嫉妬深い夫、彼女を手放したくない夫という設定にしました。

『旅立ち』
原題:Partir

フランス映画祭2010上映作品

監督:カトリーヌ・コルシニ
製作:ファビエンヌ・ヴォニエ
撮影:アニエス・ゴダール
出演:クリスティン・スコット・トーマス、セルジ・ロペス、イヴァン・アタル

2009年/フランス/35mm/カラー/ドルビーSR・SRD/85分
日本配給未定作品



フランス映画祭2010

『黒いスーツを着た男』インタヴュー
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