OUTSIDE IN TOKYO
Catherine Corsini INTERVIEW

カトリーヌ・コルシニ『旅立ち(原題:Partir)』インタヴュー

3. 共感できない感じの人がたくさん出てくる映画

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OUTSIDE IN TOKYO:彼女のインプットによって途中で変化していったことはありましたか?
カトリーヌ・コルシニ:ベッドシーンが拒否されるのではないかとちょっと心配でした。ベッドシーンは生々しく大胆に立体的な愛情もあって、しかしポルノグラフィックでないものにしたかったのです。完全に裸になってもらって大胆なシーンにしたかったんですけど、彼女は受け入れてくれました。そういう美しいシーンを作りたいという勇気が彼女にもありましたし、撮影はとてもうまくいきましたので、彼女のために何かを変えたということはないです。

OUTSIDE IN TOKYO:あのシーンはとっても素晴らしいと思いました。彼女の生の感情がそこに見える。あと、おもしろいと思ったのはそれぞれのキャラクターに共感しきれない部分っていうのがずっと残って、それは個人的な見方だけなのかもしれないけれども、それがあったんですね。それについては何かありますか?
カトリーヌ・コルシニ:夫に関しては最初、奥さんに騙されていて可愛そうねって観客は観ていて、その内あんなにひどく反対しなくてもいいのにとか、いやらしいじゃないって思うようになるんだと思います。彼氏に関しては、すごく弱々しくてお金もないし戦う武器もないし、結局すごく貧しい星のもとに生まれていつも問題のある人生でっていう、でも彼女との関係においては異常に貫き通すところがあるのです。主人公に関しては、子供を捨てでもというところで、やっぱり反感を持つ人もいると思いますが、他人の幸福に関しては嫉妬する人も多いと思いますし、その嫉妬している気持ちが恨みに変わったり、責める方向に変わったりすることもあると思うのです。最初にこの映画をフランスで上映した時に、一人の人が、こういうちょっと共感できない感じの人がたくさん出てくる映画って嬉しいです、みんながいい人の映画は見飽きましたって言われて、じゃあこの映画あんまり成功しないかしらと思ってちょっと心配したのですが、意外にフランスではかなり成功したのでそれは安心したんです。

OUTSIDE IN TOKYO:そこがもしかしたら監督らしいところなのかな、意図的なのかなって思ったので聞いたんですけど。
カトリーヌ・コルシニ:まあ確かに人間というのは複雑な面があると思います。そしていい所と悪い所と、そのでこぼこがあると思うんですね。そういうのを見せたいっていうのはありました。この妻の場合、本当にきつくて冷たい女だと思われる、子供もあんまり世話をしない。そういう意味ではエゴイストですね。でも情熱というものはエゴイスティックなもので、周りに対して辛い思いをさせるものなんだという、一つの面だけではなくて人生というものは多面的で、人というのも多面的なものなんだということを見せたかったのだと思います。殺すまでに至るわけですから恐るべき人ですよね。そういうところを見せたかったんです。
女性の場合はこの映画を観て、かなり反感を持つ可能性はあると思います。自分もああいうことをやったら自由になれるんだけどっていう、そこが土台になって反感を持つということはあると思います。男性はそれほど共感できないっていうふうには観ないのかもしれないですね。女性と男性の見方は違うと思います。
夫役をしているイヴァン・アタルはフランスでは有名な俳優ですけれども、夫婦が20年も住んでいる内に段々疲れてくる、そういう状態で愛情を持ちながら一生暮らしていけるのか?そういう疲れた夫婦の関係をやりたい、この役をとてもやりたいって言ってくれたんです。

OUTSIDE IN TOKYO:最後に女性をすごくよく描いている映画、これまでの映画の中で監督が思いつくものってありますか?
カトリーヌ・コルシニ:ジョン・カサベテスの『こわれゆく女』(74)、フランソワ・トリュフォーの『隣の女』(81)、そして、エリア・カザンの奥さん(バーバラ・ローデン)の『ワンダ』(71)という映画があるんですけどあれもいいですね。

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