OUTSIDE IN TOKYO
DAMIEN MANIVEL INTERVIEW

ダミアン・マニヴェル『若き詩人』インタヴュー

5. 数学のように、必ず、ひとつの解決策があると信じています

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OIT:他の作品の時も、そんな風にすべてが上手く一気に集約して、始まったりするわけですか?
ダミアン・マニヴェル:ええ、そうです。基本的に、僕はそうした感情を体験するために、驚かされるために、映画を撮っていると言っても良いくらいです。もちろん、いつもそのような僥倖に恵まれるというわけではありません。だから、僕は常に、そうした“余白(スペース)”を生み出すための方法を模索しているんです。例えば、次の作品は、今年(2015年)の夏に撮影を終えていて、タイトルも決めていたのですが、あまり気に入っていなかったんです。それで、タイトルを何とかしたいと考えていたところ、すべてが公園で解決しました。僕は、その時、たまたま公園にいたのですが、まさに“All the things happen in the Park”というタイトルがいいじゃないか!と思いついたんです。そういうことが結構起きます。

OIT:ダミアンさんは、ダンサーとしてキャリアをスタートして、『若き詩人』では、“詩人”についての映画を作られたわけですが、詩を作るという行為や様々な創造的な行為は、映画を作る行為と似ていると感じますか?あるいは、映画作りはまた別のクリエイションだとお考えでしょうか?
ダミアン・マニヴェル:創作のプロセスはすべて同じだと思いますね。もちろん、それは“アート”に限定されるものでもなく、すべての創造的行為のプロセスは同じものだと思います。それは、人生の一部なのです。それは、“アーティスト”に限定されるものでもなく、誰でも同じことです。人と人との関係は、とてもクレイジーなものにも成り得るし、とても創造的なものにも成り得るのです。わたしたちは誰もがみな、想像力を持ち、創造することが出来ます。僕がむしろ興味を持っているのは、どのようにそれを行うか、ということです。なぜ、僕は映画を作るのか、それは映画を好きだから作るわけですが、そもそも映画作りというのは、クレイジーなことです。アイディアを練って、撮影をして、編集をする、そこにはあまりにも豊かな経験があります。

OIT:編集のプロセスはお好きですか?
ダミアン・マニヴェル:大好きです。映画作りのすべてのプロセスが好きです。とはいえ、最後のミキシングのプロセスが一番好きですね、それでついに解放されるわけですから(笑)!映画作りのプロセスは、長く、登り下りも激しく、困難な道のりです。でも、そこで発見できるものが多いんです。映画を作ることは、僕にどのように映画を作れば良いかということを教えてくれるわけですが、同時に、どのように生きれば良いか、ということを教えてくれる。僕は、映画は生き物だと思っているんですね。そこには、映画の作り手と“映画”との対話があって、僕は僕の人生の中で、その対話を必要としているんです。

OIT:映画の中で、レミは墓に向かって語りかけています。つまり、死者との対話がなされています。
ダミアン・マニヴェル:レミは、誰かとの繋がりを求めているのです。それも、現実の誰かではなくて、スピリチュアルな存在、かつて生きていたけれども、今は死んでいる誰かとの繋がりです。それは、例えば、彼の父親だということも出来るかもしれません。でももっと、現実を超越した誰か、巨匠のような存在が必要だったのでしょう。自分に引きつけて言えば、それは偉大な映画監督たちとの対話ということになります。生きているか、死んでいるか、直接話しかけることが出来るか否かは、もはや大きな問題でありません。そうした対話によって、助けられているという感覚を持っているのです。

OIT:頭の中で対話をしているということですか?
ダミアン・マニヴェル:そうではなくて、むしろ、彼らが残した言葉などから、インスピレーションを受けるということです。例えば、この映画の中で、レミは詩を読んでいますが、そうした詩を読む行為自体が、彼を前進させるエネルギーになっています。それは必要なことで、まったくの孤独では前進することも出来ません。友人が必要ですし、パートナーも必要でしょう。そして、その道筋を学ぶために、既にそうした行為を成し遂げている先人の存在が必要なのです。

OIT:次の作品は撮り終えているというお話でしたが、今はどのような段階ですか?
ダミアン・マニヴェル:今、編集をしているのですが、映画の形を模索しているところです。簡単ではないです。でも、解決策を見つけます。数学のように、必ず、ひとつの解決策があると信じています。時間はかかるかもしれませんが、その解決策を見つけなければなりません。正しい、相応しい解決策があるはずなんです。映画のイメージを知り、それについてよく考えなければなりません。時間がかかります。でも何とか、その形を見出そうとしています。

OIT:次の作品も、とても楽しみにしています。
ダミアン・マニヴェル:アリガトウゴザイマス!



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