OUTSIDE IN TOKYO
DAMIEN MANIVEL INTERVIEW

ジャン・ヴィゴ賞を受賞した『犬を連れた女』(10)は、フォトジェニックな家、太った女と黒い犬、そして若い男(レミ・タファネル)、たったこれだけの要素で、ただならぬサスペンスフルな気配を漂わせる。家の一室には、若い男と女がいて、男は、自分の人生についてウィスキーを飲みながら語っているのだが、一瞬、挿入されたひとつのカットが、映画にエロティックな雰囲気を招き寄せる。このスリリングな瞬間を生起させる演出力に唸らされる。

一方、ロカルノ国際映画祭で特別大賞を受賞、極めて小規模な(監督を含め撮影スタッフ4名)インディペンデント映画であるのも関わらず、フランス国内でロードショー公開されるほど人気を得た『若き詩人』(14)は、『犬を連れた女』とは対照的に、地中海沿岸の美しい陽光と、ポール・ヴァレリー美術館と”海辺の墓”を擁する風光明媚なロケーション、その地で”詩人”を目指すべく、日夜、街と人々、自然、そして偉大なる先人からのインスピレーションを頼りに試作に勤しむ若い男(レミ・タファネル)の愛おしい日常と不器用な恋愛を、時折のユーモアを滲ませながら描く、瑞々しい青春映画である。

この2つの初々しい作品とともに、7度目の来日を果たし、1ヶ月半日本に滞在して、日本の映画作家たちとも交流を深めたというダミアン・マニヴェル監督は、映画の瑞々しい印象そのままの自然体が人好きな印象を与える、”若き映画人”だ。そして、このダミアン・マニヴェルの美しい作品を日本に紹介してくれたのが、映画批評家大寺眞輔氏が主宰する、DIY精神で映画の配給、映画人と映画ファンの交流、情報発信を行う活動主体「INDIE TOKYO」である。こうした、小さな、美しい作品を、反知性主義が蔓延する今現在の日本のスクリーンで見れるということ自体が、ちょっとした奇跡であると言って良い。そうした事態に抗って、小さな芽を蒔く「INDIE TOKYO」の活動を祝福しつつ、国境を超えて、現代映画の柔らかく、新しい可能性を探求する”若き映画人”、ダミアン・マニヴェル監督のインタヴューをお届けする。

1. 日本で映画を撮るために、日本語を学び、人々との繋がりをつくり、
 何度もこの国を訪れています

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):ダミアンさんは、今回、1ヶ月半ほど日本に滞在されたということですが、映画作りという観点から、どのような感触を得ましたか?
ダミアン・マニヴェル:母国フランスではない外国で、同じ年頃の映画を作っている人たちと、同じ情熱をシェアすることが出来て、とても楽しかったです。世界の映画祭に行くと同じようなことを感じるのですが、とても有意義な経験をしました。映画というものは、ひとつの国の中で撮らなければならないというものではなく、他の国の人たちと共有することが出来るものですから、違う国の人たちと共に、新しいものを取り入れていきたいと思っています。とりわけ僕の場合は、日本とは特別な関係にあると思っています。色々な人たちとの出会いがあり、友人もいます。幸い、『若き詩人』の評判も上々とのことですので、とても良い状況が生まれつつあると感じています。

OIT:日本で映画を撮るというアイディアはいつから持っていたのですか?
ダミアン・マニヴェル:今回の滞在で、日本に来るのは7度目になるのですが、初めて日本に来たときは、予想していたのとは全然違っていて、とてもショックを受けたことを覚えています。その時から日本で映画を撮りたいということは考えていましたが、映画を撮るためには、その国のことをよく知らなければなりません。それ以来、僕は日本語を習い始めて、人々との繋がりをつくり、日本のことを勉強して、何度もこの国を訪れるようになったんです。

OIT:日本の何が興味深いと思ったのでしょう?ひとつだけでも挙げて頂けますか?
ダミアン・マニヴェル:そうですね、それを説明するのは難しいのですが、ひとつだけ挙げるとすると、“建築”でしょうか。建築とストリートの関係、建築と自然の関係、そうしたものについて撮りたいと思っているんです。

『若き詩人』
原題:Un Jeune Poète

1月16日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

監督:ダミアン・マニヴェル
助監督:イザベル・パリアイ
音響:ジェローム・プティ
製作助手:アマンディーヌ・ラディーグ
出演:レミ・タファネル、エンゾ・ヴァッサーロ、レオノール・フェルナンデス、クリストフ・カバレロ、アニバル・フェルナンデス、モハメド・ベラオー

© MLD Films © IndieTokyo

2015年/フランス/71分/HD/カラー
配給:IndieTokyo

『若き詩人』
オフィシャルサイト
http://indietokyo.com/?page_id=2572
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