OUTSIDE IN TOKYO
JEAN-PIERRE & LUC DARDENNE INTERVIEW

少年は父親に連れられ、楽しい休日を過ごしていた。ひとしきり遊んだ後、父が用事を済ませるまで街外れの一軒家で待つように言われる。だがいつまで経っても父は姿を見せない。それでも施設に預けられたことを信じられない彼が自宅に行くと、そこはもぬけの殻。愛用の自転車も、父が車と共に売り払っており、近所の子供が乗り回していた。そこで偶然巻き込まれた、近所で美容院を経営する若い女性が自転車を取り戻し、施設に届ける。父を捜すまでの後見人になってほしいと女性に頼む少年との不思議な関係が始まる。

『少年と自転車』はダルデンヌ兄弟として知られるベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの兄弟監督による長編7作目。『ロゼッタ』(1999)『ある子供』(2005)でカンヌ国際映画祭のパルムドールを2度制し、『息子のまなざし』(2002)では同映画祭の主演男優賞、『ロルナの祈り』(2008)では脚本賞を受賞している。ドキュメンタリー的なリアリティーの中で子供の姿を追う手法で支持されてきた彼らだが、新作はこれまでと少し違う様相を呈する。それは、比較的、窮地に追いこまれた子供たちを描くなかで、彼らの厳しい現実を直視してきたものの、今作では一歩前向きな印象で物語が進められていく。カンヌで今度は審査員特別グランプリを獲得した作品でのそんな“変化”について聞く機会を得た。悲観的な時代の空気に呼応するものなのかどうか、未来への希望を託す意図があるのかどうかなど、そのポジティブさの意図が気になった。だが意外というべきか、2人の監督はかわるがわる、明るく笑いながら答え始めた。

1. 太陽光があること。太陽の存在がこの映画には絶対に必要でした

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Q:(以前)この映画『少年と自転車(Le gamin au vélo)』(2011)は2003年に日本で聞いた話がモチーフになっているとおっしゃっていましたね。そのエピソードから始めるにあたり、この映画を作るため、また脚本を書くために色々と準備をされたと思いますが、リサーチも含めて、どのような準備をされたのでしょうか。
ダルデンヌ兄弟(以降D):(答えは)ノーです。日本で聞いたその少年の話はもうご存知かと思いますので繰り返しませんが、その後、脚本を書くまでは特に調査もしませんでした。一つだけ脚本を書く前に新たに知ったことがあります。それはベルギーでもヨーロッパでも孤児院の在り方が随分変わってきていたということです。昔は孤児院というと60人ほどの児童を収容していましたが、今では最高でも15人、16人を収容する施設となっています。子供3人につき1名必ず保育士や先生がいなければいけないということになっていて、むしろ施設というよりは家族という雰囲気を出すような、そうした小規模の孤児院が作られるようになっているという、そうした文化があるということも知りました。その他にも、特に調査したことはありませんでした。つまり各自がそれぞれ子供だった時代があり、また自分も人の親です。そういうわけで想像することが出来る。なので、調査はしていないのです。

Q:監督の作品で描かれている現実感のある人生の辛さ、波のような描写がとても好きだったので、今回の作品は少し驚きました。それでもとても好きです。今回(主人公の少年)シリルが自転車に乗るシーンとか、外の屋外のシーンはかなりの“引き”で、景色が変わっていく部分が印象的だったんですが、屋外の撮影で今回気を付けられたこと、特に意識されたことがあれば教えて下さい。
D:一番気にかけていたこと、それは太陽光があることでした。太陽の存在がこの映画には絶対に必要でした。ですから夏に撮影をすることを決めたのです。でもベルギーですから、夏だからといって必ずしも晴れの日が続くとは限りません。ですから太陽を待たなければいけない、というかなり難しい点がありました。この映画全体に太陽の光があたることを私達は望んでいました。この男の子のストーリーに太陽の暖かな光が投げかけられるようにと考えたのです。その暖かな光はまた、(少年を支える)サマンサがシーンに入ってくる時に持ち込む光でもあります。

『少年と自転車』
原題:Le Gamin au velo

3月31日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ

© Christine Plenus

2011年/ベルギー・フランス・イタリア合作/87分/カラー
配給:ビターズ・エンド

『少年と自転車』
オフィシャルサイト
http://www.bitters.co.jp/jitensha/


『少年と自転車』レビュー

カンヌ国際映画祭2011:
セレクティッド・レビュー
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