OUTSIDE IN TOKYO
Edmund Yeo INTERVIEW

エドモンド・ヨウ『破裂するドリアンの河の記憶』インタヴュー

4. 多民族国家であるマレーシアという国のアイデンティティが、
 作品のスタイルに影響を与えている

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OIT:多民族国家であるマレーシアという国のアイデンティティが、様々なサブテーマが並立している本作のスタイルに影響を与えていると思われますか?
エドモンド・ヨウ:そう思います、マレーシアという国は、複数の民族と文化から成り立っている国です。私たちは皆、それぞれに異なる生活様式を持っているのです。ですから、私の場合は、マレーシア系中国人ですので、映画の登場人物たちは皆、北京語で話していますけれども、私たちの映画における時間の流れや視覚的な表現方法、そして、そこに息づいている感情といったものは、台湾映画や香港映画、中国映画で見られるものとは相当異なっているのではないかと思います。

私たちは、それぞれのマレーシア人としてのアイデンティティを探し求めている途上にあります。マレーシアで作られている多くの映画が、それぞれの進むべき方向を探し求めている登場人物たちを扱っているのです。
OIT:マレーシア映画で、見るべき重要な映画作家、映画作品があれば教えてください。
エドモンド・ヨウ:かつて、P.ラムリーという伝説的な人物(注:マレーシア音楽の父とも云わている)がいました。彼の60年代の映画はとても良かったですね。

しかし今では、重要と思える映画作家はほんの一握りしかいません。私のパートナーで、『破裂するドリアンの河の記憶』のプロデューサーでもあるウー・ミン・ジンがそのひとりです。彼の作品『タイガー・ファクトリー』(10)は、2010年のカンヌ国際映画祭で上映され、東京国際映画祭では「アジアの風」部門の「アジア映画賞スペシャル・メンション」を獲得しています。彼はまた、『水辺の物語』(09)という作品も作っていて、私は、両方の作品のプロデュースと編集を担いました。

ジェイムス・リー監督は沢山の作品を作っていて、“マレーシア・インディペンデント映画のゴッドファーザー”と呼ばれています。彼は、実際、私の家のすぐ近くに住んでいて、劇中のリム先生が持っていた拳銃は、彼から借りたものなんです。

ジェイムス・リー監督は多くの長編、短編映画を撮っていますが、最近の作品はYOUTUBEにもアップされています。
http://www.youtube.com/user/doghouse73pictures

長編映画は以下に:
http://www.youtube.com/playlist?list=PL_I_xW06YeiSwTpiKDnn--n7KoO977r44
『美しい洗濯機/ THE BEAUTIFUL WASHING MACHINE』(08)は、彼の名を国際的に知らしめた作品です。(注:2008年の東京国際映画祭で上映)
OIT:あなたが影響を受けた映画作家、映画作品を幾つか教えて下さい。
エドモンド・ヨウ:私は、アンドレイ・タルコフスキーとエドワード・ヤン、そして、是枝裕和の作品に大変影響を受けています。また、私が映画作家になるべく学んでいた頃、ウォン・カーウァイと岩井俊二の映像表現について常に研究していましたから、彼らの作品からも大変影響を受けているのだと思います。

そして、『破裂するドリアンの河の記憶』を撮影する数週間前に、撮影の準備とリサーチを兼ねて、ホウ・シャオシェン監督の『童年往事 時の流れ』(85),『恋恋風塵』(87),『悲情城市』(89),『戯夢人生』(93),『好男好女』(95)といった作品群を初めて見ることが出来ました。私は、それぞれの作品について異なる感情を抱いていますが、『破裂するドリアンの河の記憶』を撮影し始める時、彼の映画が私の心の中にあったことは確かだと思います。

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