OUTSIDE IN TOKYO
ELISE GIRARD INTERVIEW

今や、本家”最強のふたり”と呼びたくなるカップル、ヴァレリー・ドンゼッリとジェレミー・エルカイムが共演した『私たちの宣戦布告』(11)は、ジャック・ドゥミとトリュフォーの瑞々しい感触を今に甦らせる、21世紀のヌーヴェルバーグ的傑作だったが、その二人が自らの作品に主演する前に主演したのが、本作『ベルヴィル・トーキョー』(11)だった。『私たちの宣戦布告』で既に彼らの魅力に触れているものにとっては、期待に違わぬ、彼らの瑞々しい姿をこの映画でも楽しむことができる。

とはいえ、『私たちの宣戦布告』と『ベルヴィル・トーキョー』は、全く違う個性を持った2つの映画である。それは、ヴァレリー・ドンゼッリとエリーズ・ジラールという個性の異なる映画作家の作品なのだから、当然といえば当然の話かもしれない。ヴァレリーが外に向けてエネルギーを発散するのと対照的に、エリーズは、自分の内面に向けて思索を深めて行くタイプに思える。ヴァレリーは、実際に自分の身に起きたことをベースにしながら、描写においてはリアリズムを離れ、ファンタスティックな映画を撮り上げ、エリーズは、実際には起きなかった物語を、実生活で語られたに違いない言葉の数々を台詞に織り込んで、リアリズムの映画に落とし込んでいる。

この個性の違う姉妹のような2つの作品に共通するのは、どちらも本物の感情が宿った、本物の映画であるということだ。『ベルヴィル・トーキョー』は、パリの名画座で働くマリーと映画評論家ジュリアンのカップルが、かつて共に過ごした愛しい時間を感じさせながら、別れの予感をグレーのカラーパレットに滲ませ、人生の悲喜こもごもを絶妙な距離感で描く、愛すべき街パリが生んだ”作家の映画”である。来日したエリーズ・ジラール監督は、映画を撮るという行為、そのものが与えてくれる感動について、優しさに満ちた口調で語ってくれた。

1.(撮影の現場で)私の中に何か大きなものが生まれるのを感じながら撮っていました

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):『ベルヴィル・トーキョー』は、エリーズ・ジラール監督の長編処女作ということですね。ご自身で映画を作り始める前は、ここで描かれていたように映画館の広報をされていたり、エリーズさんご自身、かなりのシネフィルであると伺っています。シネフィルであるエリーズさんが、自ら作品を作る映画作家になる、その段階で何かを越えられたのかと思うんですが、そういう感覚はありましたか?
エリーズ・ジラール(以降EG):監督になるのを誰からも止められたわけではないので、自分の中にあった壁を乗り越えたっていう感じかもしれないですね。映画は好きで、映画の業界で働きたいという思いはずっと昔からあったんですけど、私の居場所はじゃあ何処なんだということが、あまり明確ではなかったんです。女優かもしれないし、プロデューサーかもしれない。実際に、アメリカの古典映画の専門館という非常に特殊な映画館でのアタッシュ・ド・プレス(広報・PR)になって凄く居心地が良くて、私の居場所を見つけたと思っていた時期もありました。今でもここは私の居場所だなっていう実感もあるのですが、その<シネマ・アクション>という映画館は、シネフィルにとって非常に映画の殿堂的な大切な場所であるにも関わらず、もし(映画館を運営する)彼らがいなくなったら、映画館もなんの痕跡も残らず消えてしまう、ということにある日気がついたんですね。それで、映画館の創始者である、彼らに関するドキュメンタリー(『孤独な勇者たち<シネマ・アクション>の冒険/Seuls sont les indomptés - L'aventure des cinémas action』03/未)を作ろうと思ったわけです、まさにその痕跡を残すために。私の中に何か大きなものが生まれるのを感じながら撮っていました、非常に不思議な感覚です。現場に立ちながら、まさに何をしたいかということが明確に分かっている自分に気がついたんです、私にとっても想定外でした。しかも凄く評判も良かったんです、もう一本作るための勇気をこの映画の批評によって貰えたわけです。そして、二本目のドキュメンタリー(ロジェ・ディアマンテス、あるいは本物の人生/『Roger Diamantis ou La vraie vie』05/未)を撮りました。ドキュメンタリーを二本撮りながら、でも本当にやりたいのはフィクションだわっていう思いは常にありました。そういう風にして、ドキュメンタリーから入ってフィクションへと繋がっていったわけです。

『ベルヴィル・トーキョー』
原題:BELLEVILLE TOKYO

3月30日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて限定ロードショー! 後、全国順次公開

監督・脚本:エリーズ・ジラール
出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム

2011年/フランス/75分/カラー/デジタル
配給:マーメイドフィルム

フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ
オフィシャルサイト
http://mermaidfilms.co.jp/ffnw/



フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ
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