OUTSIDE IN TOKYO
ELISE GIRARD INTERVIEW

エリーズ・ジラール『静かなふたり』インタヴュー

3. フランスでは原子力政策というものが、とても重要なことであるということを
 気に留める人が凄く少ない、という現状に私自身酷く失望しています

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OIT:デュラスへの言及の他に、ヴァージニア・ウルフの「自分ひとりの部屋」への参照がありました。「自分ひとりの部屋」という作品は、女性が小説家になるには、500ポンドのお金を稼ぐこととひとりの部屋が必要だという、そういう内容のエッセイだと思いますけれども、エリーズさんは、そういう風に、映画のストーリーを言葉で説明するのではなくて、小説や映画への参照によって語っていますね。
エリーズ・ジラール:そうですね、それが映画というものだと思っています。映画は提示する、一つのフレームの中に情報を入れ込み、観客がそれを解釈する、読み取る、それは観客への投げかけであって、全てを具体的に口に出して言うべきものではないのです、そういう意味で映画というのは、提示する、示唆する演出の最たるものであるという風に思いますね。

OIT:そうした彼女の日常生活の風景の中には、反原発運動やジョルジュが「赤い旅団」に関係した政治思想犯であることなど、政治的な事柄も描写されています。その描き方はとてもダイレクトなもので、例えば、ミア・ハンセン=ラブの『未来よ こんにちは』(16)と比較すると、ロリータさんのお母さま、イザベル・ユペールさんが主演されている作品ですが、『未来よ こんにちは』では爆弾テロを起こしたユマボマーの著書が本棚に置いてあるといった形で、未来のテロリズムの可能性が暗示されているわけですけれども、あまりダイレクトに描写されているわけではありません。『静かなふたり』の方がそういった面ではダイレクトですね、その点については、ご自分の関心事が入り込んだということでしょうか?
エリーズ・ジラール:もちろんそういうことですね。核には凄く関心を持っています。フランスでは原子力政策というものが、とても重要なことであるということを気に留める人が凄く少ないという現状に私自身酷く失望しているんです。私は自分の映画の中で、社会的、政治的活動というものは、この年月を通して随分変わってきているんだということを示したかったのです。例えば、「赤い旅団」は武装活動集団でした、それに反して私が今回の作品で見せた反核の人達はエコロジストであり、平和主義者なのです。そういう風に同じ活動家といっても、少しずつ社会が変化しているのだということ、今はSNSやインターネットを通してもっとみんなが自分の意見を表明するようになっていることも大きな変化ですよね。

OIT:そうした状況は日本でも同じです、特に日本では本当に酷い原子力発電所の事故があったにも関わらず、政府は脱原発に舵を切ることが未だに出来ていません。ところでこの映画には、カモメによる“神風アタック”というものも登場します。
エリーズ・ジラール:私自身は、少しユーモアを交えて、反核についても表現をしたいんです。最近の実際の反核の人達というのも、直接的に反抗するというよりも、クリエイティブな形で表現をしています。アート・ハプニングみたいな感じです。

OIT:ただプロテストするのではなくて、抵抗の文化、そういうものとして描いていくことが必要だということですね、面白いですね。
エリーズ・ジラール:私の映画の中のデモを見て、笑ってくれる人がいっぱいいます(笑)。実は今、京都に滞在しているんですけど、京都で4人だけでデモをしてる人達がいたんです。それは反核デモではないんですけど、4人でデモをするって可笑しいって思っちゃったんです(笑)。

OIT:何のデモだったんですか?
エリーズ・ジラール:何のデモかもわからなかったのですが、私が歩いていたら、スピーカーで叫びながら、小さい路地から人が出て来てきたので、その後この路地からいっぱい出てくるんだろうって思っていたら、全部で4人だった(笑)。


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