OUTSIDE IN TOKYO
ELISE GIRARD INTERVIEW

エリーズ・ジラール『静かなふたり』インタヴュー

4. 沈黙のシーンで、スローモーションに頼ってしまった、
 という点では100%満足しているわけではありません

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OIT:それは日本でも珍しいケースですね、多分(笑)。でもこの映画は、そうした政治的な視点も描かれてはいるものの、ラブストーリーが一番中心にあって、しかもプラトニックなラブストーリーなのですね。ビストロで食事をしてるシーンで、沈黙の切り返しショットがありましたけれども、音が何もなくて台詞もない、非常に美しいショットでしたが、あのショットはどのように発想されたのでしょうか?
エリーズ・ジラール:脚本には、ただ時が経過していると書いていたんです。時が止まったかのようにと。レナートからは、時が止まるって、どうやって表現するんだ、どうやって撮れっていうんだって言われて(笑)。それで切り返しをやった訳です、それから編集でスローモーションというか、何かにほんわりと包まれたような、クッションにしたような感じに処理をしました。

OIT:ソフトライトみたいな光で。
エリーズ・ジラール:そう。マヴィがジョルジュに「何で子どもはいないの?」って聞いて、最後に「本当に恋をしたことないのね」って言う。ジョルジュの視線を見ると、それはビンゴだった(笑)。だからスローモーションでビンゴな感じのジョルジュの視線を撮った。そして時が宙吊りになる。そうしたギミックを使うのはあまり好きなことではないのですが、スタイルの一つのレッスンみたいな感じとして受け止めています。私自身、あまりスローモーションを使うということには惹かれていないのですが、ここでは使っている。このシーンが醸し出す効果に満足してはいるのですが。スローモーションによって、漸く自分がやりたかった“時が止まっている”ような感じを表現することには成功はしましたが、それに頼ってしまったという意味で、100%満足しているわけではないんです。

OIT:編集はご自分でされたのですか?
エリーズ・ジラール:編集の人には付いてもらいましたけど、私も彼の横に張り付いていました。編集の技術的なことはお任せしましたけれども、編集の人は男性なのですが、かわいそうに、私がいつも側に付いたんです(笑)。明日の朝は来ないでねって毎日言われましたけれども(笑)。

OIT:横に付いていて、始終言われるのが大変だから?
エリーズ・ジラール:はい、嫌なやつだと思いますよ、どこにでも介入していきますから(笑)。でも、音編集だけは立ち会わないんです、私は人よりも凄く音が聞こえるタイプなので、私にとっては結構きついんです。私は映画製作のあらゆる段階に意見、見解を持っています。撮影もそうだし、衣装もそうだし、美術セットもそうだし、全てに一言を言いたいタイプです。全て細かくチェックします。

OIT:衣装に関しては、ロリータさんも協力してくれたそうですね。美術のインテリアに関してもそうだったのですか?
エリーズ・ジラール:もちろん、美術は担当がいましたけれども、当然のことながら、そこにも私は介入しました。壁の色をどうするか、私の部屋にあった絵葉書を貼ってもらったり、置いてある本はもちろんそうですし、布団カバーにしても同様です。私自身は画家になりたかったので、色に対しては結構厳しい目を持っています。


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