OUTSIDE IN TOKYO
FUJI TATSUYA & MINORIKAWA OSAMU INTERVIEW

藤竜也&御法川修『人生、いろどり』インタヴュー

3. 『友よ、静かに瞑れ』も、『愛の亡霊』も、
 竜也さんが担ってるのはどこか伝説の男(御法川修)

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OIT:多分、リアルにやるっていうことで小さくなっちゃってる映画がむしろ最近の日本映画では多いと思うんですよね。
藤竜也:ああ、それはわかる。
OIT:その虚構性を追求するっていうところが多分映画の面白さだと思うんですが、そういうところを、やっぱり藤さんのような役者さんがいらっしゃるとやってくれてしまうという。
御法川修:そうですね、絶えず僕らは(考えてるんですが)、今、“映画”といっても、本当に何を映画というのか分からないです。さっき言われたみたいにフィルムでももう撮ってないし、かつてよりも簡単に撮ったものが劇場でもかかりやすくなったりしてますよね。一週間とか二週間だけ上映されて“映画”って言われてるものもいっぱいあって、どれが映画なのか。僕は僕の記憶の中に自分が刺激を受けてきた映画の理想があったりするけど。
OIT:ちなみにそれはどういう映画ですか?
御法川修:僕がそれを言うとあれなんですけど、、、さっき帰ってきたばかりの湯布院映画祭でも、やっぱりみんな50代、60代の映画ファン達が揃ってるから、最初の感想は『愛の亡霊』の吉行和子と藤竜也を見れて云々っていう感想が圧倒的で、僕の中にもそれはあったのと、リアルタイムで言うと自分もお世話になった崔洋一監督の『友よ、静かに瞑れ』(85/藤竜也主演)っていう映画があるんですよね、隠れた名作なんですけど。あの映画もそうですし『愛の亡霊』もそうですけど、竜也さんが担ってるのはどこか伝説の男なんですよね。なんか本当に一見素性が分からない、だけどその土地にすっくと立っている男っていう。
OIT:ちょっとイーストウッド的な。
御法川修:そうなんですよ、だから僕の中で竜也さんがこの仕事を引き受けてくださった時に、『愛の亡霊』もそうだし、『友よ、静かに瞑れ』も僕の中でそうなんですけど、徳島県の実話を元にした映画というよりは、大人のフェアリーテイル、場所がどこであっても置き換えがきくような大人の寓話というか、そういう風に見えたらいいなと思ったんです。それは竜也さんがいてくれれば、そういう映画になるなっていう風に僕は思いましたけどね。
OIT:藤竜也さんがいらっしゃらない場面ですけど、夜の山中の3人の場面は、西部劇のキャンプファイヤーのようでしたけれども。
藤竜也:監督の持ってるものじゃないですか。やっぱりいい意味で若い。僕らよりももっともっと新しい時間を、映画的な感としても、スタディっていう意味での知識にしろ、御法川さんの頭から生まれてくる感性じゃないかな。映画は観客が育ててくれるものだけど、そういった意味では、どこかに彼の魂みたいなものがあるんじゃない、それが今言ったウェスタンみたいなもの。そういものかもしれないね。だから僕もバンダナかなんか巻かされてさ、僕はその意味わからなかったんだけど(笑)。分かんないって言ったって僕は分かんないのは嫌じゃないんですよ、僕が思ってる通りの衣装なんか全然面白くないんで。誰かが考えてくれた、こんなの選んだのかと。それと僕の作ったものが色々合わさって、僕に与えられたキャラクターが立ってくるわけでさ。僕の頭の中だけで考えてたんじゃとてもじゃないけどつまらなくなっちゃいますよね。バンダナっていうのはちょっとえーっと思ったけども(笑)、なるほど、面白れーなーとは思った。
OIT:藤さんは出来上がった映画をご覧になって、最初にどういう感想をお持ちになりましたか?
藤竜也:いや、僕ね、いいと思ったんですよ。五反田(の試写室)で見たんだよね、僕の2つ先の席に監督がいて。で、僕はいいなーって思って、監督に後で、いいじゃないですかって言ってやろうと思ってた。そうしたら、幕が閉まっったら、監督が僕の方くるっと振り返って、ニカって笑ったのね、いいでしょうっていう(笑)。だから僕はね、急に面白くなくなっちゃって(笑)。
御法川修:でも僕は本当に藤さんにどう見てもらえるのかっていうのが気になってたんです。さっき言って頂いたみたいにやっぱりこれはひとつの女性映画、女達の物語なわけです、でもそこは竜也さんが一番分かってくださってて。ここに色々なメタファーがあるんですよね、女達は元気で、男達は、実際の世の中でも元気がない。時代についていけない男達がどういう風に女性達と寄り添えるか、その辺の距離のこととか、そこから今の日本のことも社会のことも重ねられるような男と女の関係があると思うんですよ。また、だからこそ藤さんが、別の物語の時間をこの映画の中に掘り下げてくれてるんですけど。常に藤さんが担ってくれた輝雄っていうのはいるんですけど、最後まで(彼女たちの)邪魔をするだけなんで(笑)。

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