OUTSIDE IN TOKYO
GUILLAUME BRAC INTERVIEW

ギヨーム・ブラック『宝島』インタヴュー

3. オリジナル・スコアを作曲してくれたチョン・ヨンジンは、
 ホン・サンス監督の映画でずっと音楽を作ってきた人です

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OIT:映画のエンディングで、“この作品を弟に捧げる”という言葉が入っていて、じんと胸に沁みたのですが、その直後に「キングストン・タウン」という曲が流れますね。この曲をなぜ使ったのかということと、オリジナルのスコアがとてもユーモアと暖かみがあって良かったのですが、これを作った人について教えてください。
ギヨーム・ブラック:まず「キングストン・タウン」という曲を使った理由ですけれども、私の青春時代の歌であるということ、そして、曲の中身は、今は去ってしまった、生まれ育った土地を思い出すという歌なんです。「キングストン・タウン」では、子ども時代、青春時代に自分が住んでいた縄張りを思い出すっていうことも歌われているし、色々な国の色々な階層の人たちがこの歌を聴いていて、そうした皆が一様に感動出来る歌であるということ、そのように心を動かされることで、肌の色や社会的階層は違うけれども、一緒に共同体意識を持つことが出来る、あるいは、そうした共同体を作るようなことが出来るという意味で、この映画に一つの機能を与えることになるだろうと思って、この曲を使ったのです。

オリジナル・スコアを作曲してくれたチョン・ヨンジンは、ホン・サンス監督の映画でずっと音楽を作ってきた人です。私にとってホン・サンス監督の映画というのはとても重要です。チョン・ヨンジンさんという方はミニマリストで、音数を最低限に削ぎ落とした非常にシンプルな音楽を作る人なのですが、同時に、子どもっぽい音楽の節を上手く繋げて曲を作る人で、そういうところがとても好きなんです。それと、音楽は重要ではあるけれども沢山は使わないということを決めてしましたから、決められた場所にピタッと来る音楽を作ってもらう必要がありましたし、国境を超えて、フランス人ではない人に音楽をお願いしたいとも思っていましたので、韓国のチョン・ヨンジンさんに頼んだというわけです。全ての若者たちに、国を超えて感じてもらえるような音楽にしたいと思っていたんです。ヨンジンさんは、まだ編集を終える前の段階の字幕も付いていない状態で、画面上の会話がどうなっているのかもわからないという状態のものを見て、音楽を作ってくれたのですが、自分の若い時のことを思い出しながら見て、とても感動したと言ってくれました。文化も違えば、地球の反対側にいる人が、そういう風に何らかのものをこの映画に齎らしてくれるなんて、本当に素晴らしいことです。

OIT:仰る通りですね。どういうわけか監督の最新作が日本ではまだ公開されていなくて見ることが出来ていないのですが、これからのご活躍をとても楽しみにしております。
ギヨーム・ブラック:実は、最新作『À l’abordage(原題)』(2020)は日本公開が決まっています。是非、公開を楽しみにしていてください。



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