OUTSIDE IN TOKYO
Guillaume Senez Interview

ギヨーム・セネズ『パパは奮闘中!』インタヴュー

2. 資本主義2.0が私たちの生活にどのような影響を与えているのか

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OIT:最初に私がそうした名前を挙げたのは、監督の映画はそれらとは違っている、状況が新しくなっているので、今の21世紀にアップデートしている映画だと思ったということです。資本主義2.0と監督も仰っていますが、そういう私たちの周りにある状況をこの映画は描いていますね。
ギヨーム・セネズ:そう、まさにそこを見せるのが興味深いと思ったのです。つまり新しい職種の新しい仕事、その現代性というものがどれだけ私たちの生活に影響を与えているか、時として悲劇的で、ドラマティックなまでに影響を与えている、そのことを描いています。

OIT:脚本は、監督の実体験に基づいて書かれたと伺っています。
ギヨーム・セネズ:それは引き金が私の実体験だったということです。実際、私は自分が覚えた不安や疑問を基にして映画を作るタイプです。映画の中では、子供まで成したパートナーがいなくなってしまう、でも私の人生においては、子供の世話は半々でみていました、一週は私、一週は彼女という感じです。ですので、この映画で描かれた状況とは違っていますけれども、もし、彼女がどこか遠くへ行ってしまったり、事故に遭ってしまったりして、100%子供の世話が自分にのしかかってきたらどうなってしまうのだろうと思ったのです。その不安が引き金になったというのが実際の経緯です。もし100%自分が面倒をみるとなったら、仕事のバランスをどうしよう、職業人生とのバランスをどうしようと、まさにそのバランスの問題がこの映画の主人公オリヴィエにとって問題になってくるわけです。自分の内部から出た要素を引き金にしつつ、フィクションですからドラマツルギーについて考えていますので、物語としては自分の実人生からはちょっと遠くなっていったという感じですね。

OIT:個人的には僕も子供が一人いて、奥さんも働いています。奥さんはいなくなっていませんけれども。
ギヨーム・セネズ:まだわかりませんよ(笑)。私の周りにも共働きのカップルがたくさんいますが、二人が働いている場合、子供に割くお金と時間をどうしようかと悩んでいる人たちは本当に一杯います。ダブルインカムのはずなのに月末になると支払いに困ってしまう、まさに生活が不安定でトランプで出来た家のように、ちょっと事故があったら吹き飛んでしまうという状況で暮らしている人は本当に身近に一杯いるんです。それがまさにフランスの黄色いベスト運動に繋がっているわけですが、それが今の社会の本当に重要な問題だと思います。失業しているわけじゃない、夫婦で働いている、それなのに月末はお金が足りなくなってしまうっていう状況があって、それに対する不満が爆発して今の黄色いベスト運動に繋がっている。

OIT:日本も全く同じ労働者の状況ですが、どういうわけか黄色いベスト運動のような、社会的な運動というものが生まれてきません。
ギヨーム・セネズ:黄色いベスト運動は、伝染してベルギーにも飛び火していますし、ヨーロッパ以外にも広がっています。確かにフランスではデモが文化のひとつであるように、デモをやる習慣があります。でもアラブの春も一つの国で始まって飛び火をしましたよね。だから日本でも黄色いベストのお店を誰かが始めたら、みんながベストを買って黄色いベスト運動になるかもしれないですよ。



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