OUTSIDE IN TOKYO
Guillaume Senez Interview

ギヨーム・セネズ『パパは奮闘中!』インタヴュー

4. 自分の父がそうだったように、家長的な父親というものを再現しようとしても、
 21世紀の現代社会においては上手くいかない

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OIT:映画が進んでいくにしたがって、今はもう亡くなっているオリヴィエのお父さんの不在の存在を中心としたファミリーヒストリーが浮き上がってきます。この展開は面白くて、リアリティを感じました。
ギヨーム・セネズ:そうですね、不在だけれども存在しているものを、私は見せるのが好きなのです。ある意味では、お母さん(ローラ)も途中からそうなる、彼女も途中でいなくなりますが不在で存在し続けます。オリヴィエのお父さんはもう亡くなっていますが、どういう死に方をしたのか全然分からないけれども、常にオリヴィエやベティの口の端に出てくる。まさに今撮影している、フレームの枠の外の世界が存在していることを見せるのが私は好きなのです。

OIT:オリヴィエは、仕事はよく出来るけれども、家庭での接し方がおかしいというか、もうちょっと改善できたかもしれない、そういうところに父親の影響が見てとれるようです。
ギヨーム・セネズ:そうですね、そのコントラストで見せたかったのが、工場と家との違いです。彼は工場では人とのコミュニケーションが良くとれていて、上手くいっている、しかし、家では妻子とコミュニケーションがとれない不器用なお父さんです。彼は、家ではいわゆる従来的な、自分のお父さんもそうだったように、家長的な父親というものを再現しようとしているけれども、21世紀の現代社会において、それは上手くいかない、そういうことを見せたかったのです。

OIT:ベースとなる設定は非常に厳しい現代社会のリアルな人間の姿だと思いますが、一つ一つの描写は、子供達が非常に愛らしかったり、レティシア・ドッシュの演じるローラ叔母さんが楽しい存在だったりしています、まあ単純に楽しいだけではなかったりしていますが。そして、音楽が結構明るくて、ポップな選曲がなされています。描かれる内容とのコントラストを考えて選曲をされたのでしょうか?
ギヨーム・セネズ:今回は三カ所しか音楽を使っていなくて、オープニングとエンディングとあの曲ですね。オープニングとエンディングは、現代の音楽を使っていますが、兄弟がダンスをする時に流れるあの曲(ミシェル・ベルジェ「Le Paradis Blanc(白い天国)」)は、フランス語圏ではかつて大ヒットした、少し昔のポピュラーソングです。日本ではそうではないと思いますけれども、フランス語圏ではみんなが共有している文化の一部のようなもので、誰もが聞いてある種のエモーションを掻き立てられるようなノスタルジックな曲なのです。

OIT:個人的には、エンディングの曲がとても良かったです。
ギヨーム・セネズ:あの曲は、THE BLAZEという今とても注目されているフランスの二人組ユニットの曲です。ニューヨーク・タイムスの記事でも紹介されましたが、東京にもその内、ライブで来るのではないでしょうか。



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