OUTSIDE IN TOKYO
GUILLERMO ARRIAGA INTERVIEW

『あの日、欲望の大地で』
ギジェルモ・アリアガ オフィシャル・インタヴュー

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と組んだ『アモーレス・ペレス』(00)、『21グラム』(03)、『バベル』(06)、トミー・リー・ジョーンズ初監督作品『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(05)で脚本家としての名を上げたメキシコの鬼才、ギジェルモ・アリアガの長編監督第一作『あの日、欲望の大地で』が公開される。公開に先立って来日したアリアガ監督は、その風貌からして新人監督らしからぬ余裕を漂わせ、既に一級の脚本家、小説家としてのキャリアを持ち、現代を代表する最高のストーリーテラーのひとりとしての自信は充分窺わせながらも、一流のキャスト、スタッフと共に初監督作品を撮り上げる事が出来た喜びを素直に滲ませ、作品と映画作りについて力強く語った。

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アリアガ監督は、脚本家、小説家(「Guillotine Squad」(91)、「A Sweet Smell of Death」(94)、「The Night Buffalo」(99))としてキャリアをスタートさせた。そのおかげで、映画監督として優れている、自信を持っていると言える点があるのだろうか?
アリアガ:小説、文学から始まったという点で、自分は常にストーリーテラー、物語を語る人間だと思っています。 多くの監督は映像的な事、技術的な事を考えすぎて、カメラの前に立っているのが人間だという事を忘れがちです。自分は、あまりにも映像美により過ぎる事は避けようと決めていました。常に人間を大事にして撮る事が出来る監督という点で、他の監督より優れていると思います。
又、作家である事で、現場でも常に一言で皆の理解、想像力を喚起する事が出来ました。
今まで見て来た他の監督の中には、俳優とコミュニケーションが取れない監督もいましたが、自分にはそれが出来ます。伝えたい事も皆が分かるように、コミュニケーションが取れる点が他の監督より優れているのではないでしょうか。

「物語は、語られる価値を持つまで成熟させなければならない」と語るアリアガ監督が、本作の脚本を書き始めたのは2005年のことだが、この物語自体は、それまで15年以上もの時間をかけて練り上げられたものだったという。この物語のコアには何があるのだろうか?
アリアガ:まず初めに、物語の根底を流れるテーマとして、一番重要なのは愛だと思っています。又、愛が与えてくれる希望です。この作品は、アメリカ人が良くいう、フィール・グッド・ムービーだと思っています。気分のよくなる映画ですね。他のロマンチック・コメディの映画と違う点は、主人公達が皆暗いトンネルの中にいます。そして、そこから希望の光を見出していく様を描いています。

本作では3世代に渡る女性の“愛と欲望”を描き、『バベル』では、アメリカ/メキシコの国境の地、モロッコ、そして日本という3つの土地を描き、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』でも3という数字が象徴的に使われている。3人の物語、3世代の話など、3という数字に特別なこだわりがあるのだろうか?
アリアガ:常に3という数ではありません。『バベル』は4つの舞台が登場します。今回も4人の女性が登場します。ですから、私は成長をしているのです(笑)。又、3という数字についての意見はある点は正しく、私がずっと学んできたマルクス主義の弁証法が元々の起源になっています。弁証法は3段階になっています。だから3という数字が元になっているのです。

監督の物語は、常に人や場所を分断して描いている印象だが。
アリアガ:今は一人の物語を書いています。他にも11人とか、もっと増えている話もあります。それぞれの物語が違った形で語られるべきだと思っています。一人でも三人でも、あるいは11人でも物語の一つ一つは違った形で語られながら、大きな物語を語ることになるのです。
11人の話といっても一つ一つの元になるのは、一つのシーンです。それは燃えている家だったり、12年前に書いていた物語です。いつかは映画になるかも知れません。

『あの日、欲望の大地で』
原題:The Burning Plain

9月26日(土)、Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ他、全国順次ロードショー

監督/脚本:ギジェルモ・アリアガ
製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド
製作総指揮:シャーリーズ・セロン、アリサ・テイガー、レイ・アンジェリク、トッド・ワグナー、マーク・キューバン、マーク・ブタン
撮影監督:ロバート・エルスウィット、ジョン・トール
編集:クレイグ・ウッド
プロダクションデザイン:ダン・リー
音楽:ハンス・ジマー、オマー・ロドリゲス・ロペスÅ
衣装:シンディ・エヴァンス
キャスティング:デブラ・ゼイン
出演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ジョン・コーベット、ヨアキム・デ・アルメイダ、ダニー・ピノ、ホセ・マリア・ヤスピク、J・D・パルド、ブレット・カレン、テッサ・イア

2008年/アメリカ/106分/カラー/シネマスコープ/SRD・DTS・SDDS
配給:東北新社

写真:© 2008 2929 Productions LLC, All rights reserved.

『あの日、欲望の大地で』
オフィシャルサイト
http://yokubou-daichi.jp/

『あの日、欲望の大地で』レビュー

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