OUTSIDE IN TOKYO
ICIAR BOLLAIN INTERVIEW

イシアル・ポジャイン『オリーブの樹は呼んでいる』インタヴュー

5. 次の作品もポール・ラヴァーティと一緒に作る予定です

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OIT:撮影の現場には、ポールさんもいらっしゃったんですか?
イシアル・ポジャイン:あまり都合がつかなかったのですが、1週間だけ現場に居ました。私の決定を完全に信頼してくれていましたので、現場ではいつもニコニコして、そこに座っているだけという感じでしたが、ご存知のように映画というのは生き物ですから、何か上手くいっていないシーンがあっても、彼はそこで口出しをするのではなくて、ちょっと待ってみようというスタンスで現場に居てくれたのです。

OIT:編集の作業はいかがでしたか?監督は、編集のプロセスを、どのようなものとして位置づけていますか?
イシアル・ポジャイン:編集は大好きな作業です。そこで映画が変わってきますし、そこで最終的な決断を下していくわけですから。現場で即興で撮影をしたシーンがあったとしても、そのことが編集作業を難しくするということがあるわけではありませんが、編集の段階で変えて行くことが出来るわけですね。通常、私の場合は、3ヶ月は編集の作業に時間を費やすことにしていて、私にとっては凄く楽しい作業です。編集者の隣に座って、具体的に指示を出していくというやり方で進めて行きます。最初に撮ったショットというのは、基本的に一番長い状態であるわけですが、それを少しずつ切って行く、あるシーンに関しては保留にして後で考えることにするわけですが、いずれ、最終的に決断を下さなければなりません。

OIT:“音”についてはいかがでしょう?現場で録音をする以外にも、別に音を録ったりすることもあるのでしょうか?
イシアル・ポジャイン:音は直接録音していますが、養鶏場の音など、先程ご指摘頂いた静と動のコントラストは、音によって演出されている部分が多いと思います。樹を切った時に少女が泣くシーンがありましたよね、あそこで音楽を使うのが嫌だったんです。そこで、キャタピラーのメタル・サウンドなどの破壊音を入れることで、あの“モンスター”が叫んでいるような効果を出したいと思ったんです。音楽を使って、あまりわざとらしい感じにしたくなかったものですから、そうしたサウンドで樹の嘆きを表現してみたのです。

OIT:最後に“音楽”について聞かせてください。監督は、映画における音楽の使い方について、ご自分なりのルールのようなものはお持ちですか?
イシアル・ポジャイン:通常、最初の段階で音楽のことを考えることはないですね。撮影を終えてから考えることにしています。この映画では、パスカル・ゲーニュ(ヴィクトル・エリセの『マルメロの陽光』(92)の音楽も手掛けている)というミュージシャンに音楽を依頼しました。彼はとても優秀なミュージシャンで、一緒に仕事をしたのは今回が初めてだったのですが、色々と提案をしてくれて、良い共同作業が出来たと思っています。この映画の精神をよく理解してくれる人を選びましたので、後は、その人を尊重してアドバイスもよく聞くだけでした。ちょっとお伽噺のような側面がこの映画にはあると思いますので、音楽にもそうした要素を少し取り入れてもらいました。

OIT:デモ隊のサウンドデモもとても良かったのですが、彼ら/彼女らは、現地調達したのですか?
イシアル・ポジャイン:ドラムを叩いていた人たちはキャスティングしました。あのサウンドは、ヨーロッパでデモというと、あのブラジルのリズムでやるのが一般的で、それは事前に分かっていることでしたから、あのサウンドを叩き出す人たちをあらかじめキャスティングしていました。デモ隊の中には、エキストラの人々もいたし、本当の活動家もいて、やはり、実際の人々を使って、どうやればリアルに見えるのかということに腐心しましたから、上手くいって良かったです。

OIT:また、監督とポールさんのコンビで作る映画を見たいですね。
イシアル・ポジャイン:実は、次の作品もポールと一緒に作る予定で既に決まっているんですよ(笑)

OIT:それは素晴らしいですね。作品の出来上がりを心待ちにしています。
イシアル・ポジャイン:どうもありがとう。



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