OUTSIDE IN TOKYO
Frédéric Jardin & Nicolas Saada INTERVIEW

フレデリック・ジャルダン&ニコラ・サーダ『スリープレス・ナイト』インタヴュー

3. トム・スターンは、小さなバジェットの無名監督の作品に、何の躊躇もなく協力してくれた
 (フレデリック・ジャルダン)

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OIT:ノワールというジャンルを選んだのはなぜですか?
FD:最初に話ししたように、2人ともすごくジャンル映画が好きだというのがあったし、あとプロデューサーのマルコ(Marco Cherqui)がジャック・オディアールの『預言者』(09)の共同プロデューサーでもあるのですが、彼がジャンル映画を得意とする人で、一緒にやろうと言ってきたのです。そこで3人の共通の好みが合ったということですね。
NS:自分も脚本だけ書いたというのではなくて、撮影も編集も出来るだけフレデリックと一緒にいようと思って、実際にそうしました。ふつうフランスの場合、脚本家は脚本だけ書いて、撮影は別途にやって出来上がった作品をちょっと見るみたいな、そんな関わり方なのですが、フレデリック自身が、撮影がどういう風に行われているか随時色々な報告をしてくれるし、自分としてもどんな風に作品になっていくのか気になったので、出来るだけ撮影の現場でフレデリックと一緒にいるようにしました。
FD:実際、編集中もニコラに来てほしかったし、出来上がったラッシュを見ながら彼がどういう風に感じるか聞きたかった、だからシナリオ作家が作品全般のプロセスで関わるということも重要だと思います。
OIT:撮影監督のトム・スターンとの仕事はどうでしたか?
D:すごくよかったです。ビジュアル的にどういう風に撮るかということに関して、彼が今までやってきた仕事と自分がこの作品でやりたいこととがすごく合致していた。ストーリーは夜の暗い中で展開する。ほとんど光のない状態で撮らなければいけないということに対しても、トムは全く不安を示さなかったんですね。トムはこれまでもそういう作品を撮ってきたから。だから今回この作品を撮るにあたってトムと一緒に仕事をしたいと思ったのです。撮影中には光の話というか、照明の話はほとんどしなかったんですよ。彼ときちっと話したのは登場人物達の話と、あとはシナリオの話。そしてドラマツルギー。この3つの点においては彼とよく話をしました。フランス人の監督というのは、そういう部分よりもどういう風に光を当てるかというところに興味が行きがちなんですけど、トムはそういうタイプの撮影監督ではなかった、そこがすごく違いましたね。シナリオもものすごく読み込んでいて、自分たちと同じくらいシナリオに関してよく分かっていた。彼にとって重要なのは室内の、暗い場所をどう撮るかということより、そこで演じる登場人物達の顔をどう映すかというところにあったのです。

トムは60代の人間なんです。自分はもっとそれよりも若いんですけど、彼との間にはある種の繋がりみたいなものを持っていると感じました。彼が今までの経験の中で培ってきた映画に対する距離感みたいなものが、自分が求めているものとすごく近いものがあったと思います。今回の作品は、いうなれば小さなバジェットの無名監督なり役者なりが作っている作品ですよね。そういう作品作りに関しても何の躊躇もなく協力してくれるような、そういう人なんです。彼がいつも仕事をしているような、ハリウッドの大きな輝かしい作品というわけでもない、一つの作品に対しても十分に興味を抱いて、作品作りに協力出来る人。カメラをいつも肩にかけて、ドキュメンタリー映画を撮るようなスタンスで作品作りに参加出来る人。そういう作品も十分に興味を持って撮れる人です。

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